既存データと事業所独自の文化を掛け合わせ、現場に即した施策を
多くの事業所が健康経営を進めようという思いはありながらも、具体的な対象者選定や手法が分からないため手つかずになっていることが多く感じられる状況である。
そのため、レセプトデータや健診結果データを分析したレポートによる実態共有だけではなく、事業所の独特の文化などを加味した提案を行うことで、事業所をサポートし、成功事例を他事業所に展開したいとの思いがあった。
「ある事業所では、社員全員が健診を受診しているにも関わらず、健保組合がデータとして受領できている分は60%程度でした。その事業所にはデータの提供に関する説明とお願いにより連携が取れるようになり、95%まで伸ばすことができました。また、保健指導も全く手つかずでしたが、事業所担当者の方が積極的に働きかけを行ってくれたことで初回面談の参加率が約80%と健保も驚くような結果となりました。
ただ、その後のフォロー体制が整わず、結果的に終了者率が23%に落ち込んでしまい、モチベーションを継続させることの難しさを実感しました。」(浅井氏)
「この経験より、保健事業を高い水準で継続させるためには、今まで見てきたレセプトデータや健診結果データだけではなく、事業所独自の実態を把握して、根本から動かすことが必要だと考えました。そこで、事業所特有の生活習慣(例:ラーメン好き文化、人気のお菓子など)を数値化し、その結果をレセプトデータや健診結果データとクロス集計することにより、『Aという行動がBという結果に結びついている』という根拠を、その事業所の「健康白書」として提供することで、社員だけでなく会社の経営層にもコンセンサスを取って進めていくことを提案しました。」と浅井氏。
「意識しているのは、レポートを作成することがゴールではなく、これを起点にして行動目標を決め、検証まで行うというPDCAサイクルを回すことです。
作成したレポートを活用して、『健康経営を実現するため従業員の健康に投資しましょう』と事業所をより強く説得できる材料にしたいと考えています。」(浅井氏)