保険者インタビュー・導入事例

「愛のおせんしょ」で保険者インセンティブ全国第1位

インタビューイー様のご紹介

藤原 斉 様(写真右から1番目)
常務理事。2020年ご着任。

桐山 優子 様(写真右から2番目)
2001年ご着任、2015年より事務長。
主に適用・徴収をご担当。
保健事業においては広報誌、健康セミナー、歯科検診等を担当。

有賀 克明 様(写真右から3番目)
1998年ご着任。
主に財務、給付をご担当。
保健事業においては特定健診・特定保健指導、データヘルス等を担当。

湯澤 晃子 様(写真右から4番目)
2016年ご着任。
主に適用、給付をご担当。
保健事業においては社員相談室、PepUpイベント、検診等補助金等を担当。

事例概要

後期高齢者支援金の加算・減算制度=保険者インセンティブ制度において、2018年度189点と最高得点獲得のKOA健保様。

高得点獲得のためには7つにまたがる大項目の保健事業を実施することが求められますが、KOA健保様では4人の職員で広範な保健事業に取り組んでいます。その秘訣についてお話を伺いました。

KOA健康保険組合様について教えてください。

桐山様:
長野県にあるKOA株式会社を母体とし、関連会社を含む単一健保です。
被保険者約2400人、被扶養者約1900人と加入者が比較的少ないため、まとまりが良く保健事業を行う上でも声がかけやすいと感じています。
KOA株式会社は抵抗器という電子部品を製造・販売しており、大半の社員は工場のラインで勤務しています。40-50人規模の小さい工場が長野県に点々とある他、石川県、富山県、東京・府中などにも工場があります。

藤原様:
KOA株式会社の創業者は、養蚕業を営む農家の次男でした。かつてこの一帯は養蚕業が盛んでしたが、世界恐慌により生糸の価格が暴落したため長男以外は出稼ぎにいかないと生計がたてられない状況になりました。そこで創業者が家族が揃って地元で生活できるようにしたいと思い、電子部品について勉強して会社を興しました。その後も抵抗器の技術を広めて南信州を中心に工場をつくり、地域の雇用を守ることを大事にしています。
KOA株式会社・関連会社にはこのような背景があるため、団結力は大手企業より強いと感じています。基本的に会社はリストラはしない方針で、コロナ禍などの影響があっても「みんなで頑張ろう」という文化が根付いています。




KOA健保様と言えば、保険者インセンティブの高得点健保として有名です。制度開始以前から保健事業への取り組みを先進的にされていたのでしょうか?


有賀様:
医療費の中で負担が大きかった項目の一つが歯科だったため、2005年に事務所巡回の歯科健診を開始しました。また、その取り組みに合わせて「健診で見つかったむし歯はゼロにしましょう」という活動を2008年に始めました。
その結果、2012年には社員の歯科健診受診率が97%となり、「むし歯ゼロ」を達成することができました。

藤原様:
健診でむし歯が見つかった社員には、役員からも歯科を受診するように勧奨していたこともありました。

桐山様:
ただ検査をしただけではお金をドブに捨てているようなものなので、ちゃんと治さないとという意識がありました。その意識が2011年からの「愛のおせんしょ※大作戦」の構想に繋がりました。

※おせんしょ:「お節介」「余計なお世話」を意味する長野県南信地方の方言

有賀様:
当時、生活習慣病を悪化させたことによって現役社員が亡くなる例が続いたため、それを防ぐために「愛のおせんしょ大作戦」を始めました。具体的には、健診をきちんと受けてもらい、問題がある方には精密検査を必ず受けてもらうという活動です。
この活動により、生活習慣病が原因で現職中に亡くなる方はほとんどいなくなりました。
会社としても大切な財産である社員の健康を守るために、会社もこの取り組みには積極的に協力してくれました。

桐山様:
他にも、Pep Up(編集者注:JMDCが提供するICTツール)導入以前は、湯澤さんが「ヘルスアップチャレンジ」というインセンティブ事業を担当していました。

湯澤様:
ヘルスアップチャレンジは、ウォーキングや食事などどんなことでも良いので社員ひとりひとりに目標をたててもらい、その目標に向けて3ヶ月間取り組むことで健康づくりのきっかけにしてもらうという活動です。参加賞として図書カード、目標を達成したら努力賞として商品券をお渡ししていました。
2004年に開始して年間のべ600人ほどが参加(3ヶ月ごと4回実施)していましたが、目標の設定や記録などは紙を用いて社員と健保がやりとりしていました。



会社の福利厚生ではなく健保の保健事業でこのような取り組みをするのは 、2004年当時ではかなり珍しかったのではないでしょうか?

藤原様:
健診や精密検査の受診勧奨には会社も協力していましたが、健康づくりに関してはずっと健保に任せていただいていました。そのため健保と母体との距離は近いと感じています。
会社に協力をお願いしたいことがある際に、全拠点の安全衛生担当者が集まる会議に健保が加わっても特に反対はありませんでした。

桐山様:
色々な会議にお邪魔して、受診状況やPep Up登録率などを共有するようにしています。

有賀様:
もう一つ特徴的なことは、組合会の議員の皆さんが各事業所の先頭に立って保健事業を進めてくださっていることです。具体的な例では、組合会のたびに議員から各事業所の活動の報告をしてもらっています。

桐山様:
どうやって健診受診率を上げるか、精密検査対象者の取り組みをどのように行なっているか、各工場の状況に合わせて交替制の人の食事をどうしているかなど、組合会でみんなで新しいアイデアを共有しています。
健保の理事長が母体の会長ですので、トップの言葉は伝わりやすいです。地域や人を大事にするという創業からの精神がこのようなところにも表れていると思います。

藤原様:
会社の経営方針では、社員と家族の健康を推進することをあげています。役員も含めて社員の健康、安全には気を遣っている会社です。

このような背景から、特定健診の受診率や特定保健指導の実施率が高いのでしょうか?

藤原様:
被扶養者の健診受診率は健保から勧奨しても6割ほどで伸び悩んでいましたが、目標値を設定して社員を通じて被扶養者の受診勧奨をしたところ、2017年に受診率が顕著に上がりました。


桐山様:
家族の健康があってこそ社員も仕事をすることができます。ですから、社員を通じて被扶養者へ健診受診券の送付や受診勧奨をするようになりました。
それ以前は家族の健診受診に関心がなかった社員もいたと思いますが、この取り組みにより一気に関心が高まったのではないでしょうか。

有賀様:
会社全体に各事業所の受診率を公表し、それぞれの事業所には内訳も提供しました。

桐山様:
家族が健診を受けているか、どこで受けているか、どんな予定か、どんな結果だったかについてそれまでは関心がない人も多かったと思いますが、各事業所の受診率がわかると「うちの工場ではあと誰だ?」と自分ごとになったようです。

有賀様:
各拠点・健保からも個々にメールや文書を送っていたので、社員の意識は高まったと思います。
事業所によって条件が異なるので、健保からはそれぞれの地域に合った案内をしています。例えば、集団健診の場を設けて会場の案内をしたり、それ以外の地域では医療機関の一覧を出して受診券を使って医療機関に行くように案内したりしています。これらは外部には委託せず、すべて職員が手作業で行っています。

有賀様:
案内をした時に、「いつ受けるか」「どこで受けるか」というアンケートを配って提出してもらうようにしました。アンケートに答えてくれない方には督促をします。それでも提出してもらえない場合には、社員に対して「家族の健診受診はどうなっていますか」というメールを送っています。

桐山様:
「おせんしょ」しまくりなんです(笑)


保健指導も同様に勧奨しているのでしょうか?

有賀様:
特定保健指導制度が始まる以前から、各事業所では委託先の保健師による健康相談を行なっていました。その延長として特定保健指導が始まったため、スムーズに進めることができたと思っています。
被保険者への指導は健診機関の保健師や管理栄養士にお願いして事業所巡回で実施しているので、高い実施率が維持できています。一方で、小さい事業所にはなかなか手が回らないので、昨年度からPep Up保健指導(編集者注:「Pep Up」を利用したオンライン保健指導)の利用を始めました。

被扶養者に対する指導は2018年から本格的に始めました。対象者全員に利用券を配り、ご自身で予約して指導を受けていただくよう案内をしましたが、対象者30数名のうち2-3人にしか受けてもらえませんでした。今年から導入したオンライン保健指導によって、実施率が上がるのではないかと期待しています。
桐山様:
健診受診率や保健指導実施率が高くなってきたことから、2019年度より「愛のおせんしょ大作戦」も第2ステージとしました。
第1ステージで健診や精密検査は受けてもらえるようになったので、悪いところを見つけて治すだけでなく、初めから病気にならないように自発的な健康づくりを支援する第2ステージを始め、ウォーキングラリーなどの取り組みをスタートしました。

2013年に後期高齢者支援金の加算・減算制度が導入され、2018年度改定により現行の形に近づきました。減算は制度開始時から目標にしていたのでしょうか?

有賀様:
財政が厳しかったため、減算を目指していました。制度開始時にはすでに項目の多くを満たしていましたが、事業の見直しを行い、減算のために追加が必要な項目は対策を検討、追加をしました。
例えば、 糖尿病性腎症等の重症化予防に関しては特に事業を行なっておらず、それまでは健診後に所見がある人に対して、委託先の保健師に面談をしてもらっているに留まっていました。事業の見直し後は、特に糖尿病リスクが高い人に対しては追加で検査をしたり、追跡して受診状況を確認したりする取り組みを加えました。

制度開始時はアウトカム指標の指針となるものがなく、苦労された健保様も多くいらっしゃいました。どのようにアウトカム、アウトプット指標を設定されましたか?

桐山様:
当時は何をやったら認められるのか、どれくらいやれば良いのかがわかりませんでした。

有賀様:
外部に委託せずすべて自前でやっていたので大変でした。正直に言うと、当時は指標を満たすことができると思われる事業をただ置いただけという状況でした。
現在は、指針に従ってポイントを取ることだけにこだわらず、より効果が期待できる事業を進めていきたいと考えています。

健保職員は4名と少人数ですが、広範な事業をどのように運営しているのでしょうか?

有賀様:
保健事業以外の業務を効率化して、できるだけ保健事業に取り組む時間をつくり出すようにしています。また、それぞれ担当にこだわらずお互い助け合っています。

桐山様:
健保から呼びかけをすると、議員や安全衛生会議のメンバー、各事業所の担当者など大勢の人が動いてくれて、細やかにフェイス トゥ フェイスで声かけをしてくれています。
Pep Upの使い方を教えて回ってくれる人がいたり、ウォーキングラリー実施時期には「ウォーキングリーダー」が現れたりもしているようです。

今後の保健事業への抱負を教えてください。

有賀様:
拠点ごとの健康課題を明確にし、それぞれの実情にあった事業を提案・実施していきたいと考えています。また、コラボヘルスを積極的に推進し、加入者の皆さんに満足していただける保健事業を提供することで社員とご家族の健康を守り、社員の皆さんが生き生きと働ける環境づくりを進めていきたいと思います。

桐山様:
保険者インセンティブ全国1位ということを、健保の広報誌だけでなく会社のイントラ掲示板や社内報にも取り上げてもらって社員へ発信しました。この結果は社員の取り組みのおかげですし、会社と健保が一緒に健康づくりをしっかりやっているのだという意識を根付かせたいです。

ありがとうございました。



取材日:2021年10月28日

編集後記

後期高齢者支援金 加算・減算制度だけに囚われず、社員や家族に健康になってほしいという思いで健保や会社の皆さまが保健事業を実施されていることがとても印象的でした。

また、インタビュー後には桐山様・有賀様に会社の敷地内を案内していただきました。
ちょうどPep Upでのウォーキングラリー開催期間ということもあり、お昼休みの時間帯には広大な敷地の中を笑顔で歩いている社員の方が多く見られました。
保健事業に関わっていらっしゃる皆さまの思いが、社員の方々にもしっかりと伝わっていることが感じられました。
敷地内の食堂(左)と牧場(右)

末尾になりますが、インタビューにご協力いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。


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