保険者インタビュー・導入事例

コマツの健康文化醸成を目指して
厚労省表彰も受けた「Pep Up」活用法

インタビュイー様のご紹介

塩澤 一彦様(写真 左から2番目)専務理事
野口 仁士様(写真 左端)事務長
小川 綾様(写真 左から3番目)保健師
今井 知子様(写真 右端)保健事業担当

事例概要

JMDCのデータ分析サービスを10年以上にわたり利用されている小松製作所健康保険組合様。2023年11月には「Pep Up」とウェアラブルデバイス「Fitbit」を活用したコラボヘルスの取り組みが評価され「健康寿命をのばそう!アワード」(厚生労働省、スポーツ庁)を受賞しています*。受賞につながった成果やその要因について、登録率・イベント参加率向上のコツも含めて伺いました。

*第12回健康寿命をのばそう!アワード 生活習慣病予防分野 厚生労働省健康・生活衛生局長 優良賞 企業部門 

プロフィール

小松製作所健康保険組合
 被保険者  約27,990人(男性24,102人、女性3,888人)
 被扶養者  約29,393人
 事業所数  26(うち10事業所はコマツグループ外)

 

特徴:男性の被保険者が多く平均年齢が42歳と高めで、肥満などの生活習慣病対策が課題。また勤務時間が不規則な工場勤務の被保険者に対するアプローチに工夫が必要。

創立100周年で「Pep Up」を事業主を巻き込んだ取り組みに

塩澤様:
「Pep Up」導入のきっかけになったのは、事業主による創立100周年記念事業「KHP100(Komatsu Health Promotion 100)」です。コマツでは2014年に健康宣言を行って以降、事業主とユニオン(労働組合)、健保組合が三位一体となって健康づくりに取り組んできました。当初は糖尿病の重症化予防を中心に取り組んできましたが、KHP100以降は従業員(被保険者)のヘルスリテラシーの向上と、生活習慣そのものの自然な改善をテーマに。それにより、健康寿命100歳を目指す取り組みとなっています。


野口様:
ヘルスリテラシー向上施策自体は30年以上前から地道に展開し続けてはいましたが、従来は健保組合単独の取り組みだったせいもあってかなかなか成果を出せず、過去の被保険者向け健康ポータルサイトの登録率も2割ほどで低迷していたんです。そこでKHP100をきっかけにJMDCの「Pep Up」へとサービスを移行し、事業主を巻き込んだ事業へと一新させました。JMDCには医療データ分析のために長年データを提供してきたので、今後のデータ連携、分析のしやすさを考えると「Pep Up」以外の選択肢はあまり考えられませんでしたね。特にKHP100以降はデータによる効果検証の強化も掲げていたので、その点でもコマツにマッチしていました。


 1988年頃  国のTHP指針を受け、健保組合による「KHP活動」開始
 2014年  事業主による健康宣言、健康づくり5カ年計画(~2018年)
 2019年  第2次健康づくり計画(~2024年)
 2021年  創立100周年記念事業「KHP100」開始

 

小川様:
導入時にはまず一部の被保険者(300〜400名)を対象に約1年間のトライアルを実施。定期健診の問診データからすでに身体活動量の改善成果が見られたため、全社展開に踏み切りました。効果検証した上での本格導入だったため、社内の説得もスムーズになったと思います。

登録率はグループで71% 各事業所の“サポーター”が活躍

今井様:
登録率アップのカギになっているのが、事業所単位で活用を推進するPep Up推進リーダー、サポーター(窓口担当)の存在です。各事業所の総務部や安全推進担当の従業員のほか、ユニオンのメンバーが加わるケースもありますね。リーダー、サポーターへのイベント周知や良好事例の横展開などは、定期的に開催するPep Up連絡会で行っています(導入当初は2カ月に1回)。またTeams上にリーダーやサポーターが参加するチーム(グループチャット)を作り、事業所ごとの登録率を毎月ランキングにしてフィードバックするなどして、モチベーションを高めてもらっています。
またイベント参加率を上げる工夫では、QRコードを積極的に活用しています。なかなかPCを開けない工場勤務、現場勤務の従業員でもスマホひとつでお手軽に参加してもらえるよう、参加登録ページへ直接アクセスできるQRコードを記載したチラシを事業所に掲載してもらっています。この際、リーダー、サポーターの負担が増えないよう、チラシなどのツールは極力健保組合で用意して運用を標準化しているのもポイントですね。

野口様:
こうした取り組みの結果、当初掲げていた登録率目標50%を導入後約1年で達成。コマツグループ所属の事業所に限定すれば2024年4月現在で71%と、現業を抱えている健保組合としてはかなり高い登録率を実現できていると思います。リーダー、サポーターの継続的な取り組みのおかげで、今でも登録率は毎月数パーセントずつ上がっているんですよ。

わずか2年で運動不足を約19%改善

小川様:
約3年にわたる「Pep Up」の運用により、被保険者の身体活動量は確実に増加しています。全社展開前の2020年では1日の身体活動が30分未満という被保険者が57.7%でしたが、2022年には38.8%まで減少。身体活動の時間がアップした人が約19%増加した計算になります。被保険者の特性上、もっとも対策したかった肥満と運動不足に対する大きな改善成果を得られて、社内の反応も上々です。健保組合だけでなく「全コマツ」で取り組んだからこそ得られた成果であり、それが「健康寿命をのばそう!アワード」受賞にもつながったのではないかと感じます。

塩澤様:
コラボヘルス推進の成功要因としては、やはりまず経営層がトップダウンでKHP100を推進したことが大きいです。事業主、ユニオン、健保組合の三者で構成される会議体がしっかりと整備され、機能している背景のひとつにもなっています。これに加え、各事業所の医療職やリーダー、サポーター、ユニオンの担当者が現場の状況を細かく拾い上げて実務に反映させる、ボトムアップの積み重ねも欠かせません。そしてこれら双方のアプローチで地道にPDCAを回す。結局はこの基本に尽きるのではないかと思っています。

コラボヘルスに関する主な会議

  • 健康増進会議(年2回)
  • 健康づくり中期計画に関する会議(年2回)
  • 健康づくり推進委員会(年1回)

 

三位一体の健康づくりにデータ活用で貢献したい

塩澤様:
今後は健康習慣の継続化を目指すべく、まずはイベントの平均参加率(参加者数÷被保険者数)を25%以上にするのが目標です(2024年4月現在 21%)。とはいえ、目指すのはあくまで被保険者一人ひとりが健康を意識して主体的に行動できる状態ですから強制はしません。大切なのは雰囲気づくり。もっといえば「コマツの健康文化」の醸成です。それが被保険者とその家族の健康、そして生産性向上、健保財政の改善にもつながっていくと考えます。

野口様:
保健事業で成果を出すためにはデータから適切に現状を把握し、課題に合った施策を展開することが不可欠です。三位一体の取り組みの中でその役割を果たせるのが、我々健保組合です。JMDCにはそのパートナーとして、今後も末永く伴走してほしいと思っています。

インタビューを終えて

「Pep Up」の登録やイベント参加を推進する各事業所のリーダー、サポーターの活躍が大変興味深い事例でした。PDCAを地道に回して健康文化の醸成を目指すという、データヘルスの基本を大切にされているのも印象的です。
改めて、このたびはインタビューにご協力いただき、ありがとうございました。





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