特定保健指導対象者が2年間で2.1%減
コラボヘルスが総合評価指標に好影響
鷹見様:
こうした保健事業の取り組みが実を結び、2022年度は保険者機能の総合評価指標で144点という高得点を獲得できました。この理由は、やはりコラボヘルスという形で事業主を巻き込んだ取り組みができているからだと考えます。
例えば、現在、従業員の特定健診・特定保健指導は健保組合と同じくらい、事業主が積極的に取り組んでいるんです。具体的には、まず被保険者には人間ドックの受診を推奨し、特定保健指導も人間ドックの受診先で受けてもらうように。人間ドックの受診費用は健保が7割、事業主が3割負担し、本人は原則無料で受けられるほか、一部の事業所では公休の「人間ドック休暇」を設定しているなど、受診環境を整えています。これにより、現在では対象者(35歳以上)の約7割が人間ドックを受診しています。
さらに健康経営の推進以降は産業医と連携し、事業主側でも特定保健指導を実施。その結果、対象者の健康状態改善、または適切な治療への移行が進んでおり、ここ2年で特定保健指導の対象者を2.1%減らすことに成功しています。
こうした取り組みが配点の高い「大項目1 特定健診・特定保健指導の実施(法定の義務)」のほか「大項目5 がん検診・歯科健診等(人間ドックによる実施を含む)」などに影響したのではないかと考えます。
鳥居様:
関連して、コラボヘルス開始以降は若年者(35〜39歳)向けの「プレ特定保健指導」を始め、特定保健指導への新たな流入防止を図っています。この施策では、健診データから抽出された対象者が業務時間中に丸一日、出張扱いで保健師による「健康づくり教室」に参加し、講義の受講を踏まえて生活習慣を見直して行動目標を設定します。
4月の測定値を基準にして、6~9月に各自が受診した人間ドックや定期健診の結果で効果測定し、2回ほど保健師によるフォローを行い、生活習慣の改善を目指します。実施に当たっては事業主側の担当者や産業医と密に連携し、実務面の細かな調整を重ねています。
実際に成果も出ており、若年層予備軍の実績ですが、-2㎏・-2㎝達成割合は45.2% -2㎝達成割合は93.5%、-1㎏・-1㎝ですと、64.5%達成しています。
三井様:
正直なところ、保険者インセンティブの上位を狙って特別なことをしてきたわけではないんです。私たちはあくまで加入者の健康のために、事業主との連携体制を整えて実効性の高い保健事業の在り方を追求しているだけ。その継続と積み重ねが、結果として高得点につながったのだと考えています。
保健事業はあくまで加入者志向 重症化予防対策も検討したい
鷹見様:
JMDCのおかげで、データ分析や健康イベントの実施、加入者とのコミュニケーションなど保健事業に必要なICTツールはそろいました。次はイベントの参加率を上げていくのが直近の目標です。
鳥居様:
さらに中長期的には糖尿病関連の重症化予防にも着手できればと考えています。保険者インセンティブを意識してない分、現時点ではこの領域に関連する大項目2を達成できておらず、せっかく高得点を取れているにもかかわらず減算対象になれていないんです。マンパワーとの兼ね合いもありますが、第4期に向けて事業主にも協力を仰ぎながら検討を進めたいです。
三井様:
とはいえ、あまりインセンティブの項目にとらわれすぎないようにするスタンスは変わりません。インセンティブに振り回されると肝心の加入者が置き去りになってしまう懸念もあります。保健事業の目的はあくまで加入者の健康のため。その原点を今後も見失わないようにしたいですね。