保険者インタビュー・導入事例

4年で支援金加算対象から減算対象に
「特定保健指導実施率アップ大作戦」の軌跡

インタビューイー様のご紹介

津川 朝子様 (写真 左端)常務理事
辻村 祥子様(写真 左から2番目)
田中 未来子様(写真 左から3番目)

事例概要

近年、特定保健指導の実施率向上に取り組まれてきたネスレ健康保険組合様。2018年の実績は5.1%と後期高齢者支援金の加算対象となっていましたが、わずか4年ほどで実施率を57%まで向上させ、減算対象へと転換しました。何が成果につながったのか、またその中でJMDCのサービスをどのように活用したのかを伺いました。

プロフィール

ネスレ健康保険組合
 被保険者 2,444人(男性1,635人、女性809人)
 被扶養者 2,311人
 事業所数 1(母体企業のみ)

 

特徴:事業拠点が本社(兵庫)のほか、東京コマーシャルオフィス(東京)や工場(兵庫、静岡、茨城)など全国に点在し、加入者とのコミュニケーションに工夫が必要。加入者は30代、次いで40代が多くなっている。

あえて“メタボ”と伝えない特定保健指導で
実施率を5.1%→57%にアップ


津川様:
私は2019年、常務理事として着任しました。これまでネスレ健康保険組合は母体からの出向の事務職のみで運営されており、保健事業に積極的に取り組める体制ではありませんでした。田中と辻村が専任の管理栄養士として加わり、給付や経理といった健保業務と合わせて保健事業を行う体制になってから、全ての業務改革に取り組んできました。なかでも最優先で着手したのは、「特定保健指導実施率アップ大作戦」。2018年に特定保健指導の実施率が過去最低の5.1%となり、ついに後期高齢者支援金の加算対象となってしまった危機感は非常に大きかったですね。

田中様:
「大作戦」の目玉は「新しく開催するウォーキングイベントと、その一環として、内製で特定保健指導を行う」という試みです。そもそもなぜ対象者が特定保健指導に参加してくれないのか、聞き取りを行ったところ「『あなたは太っています』と悪口を言われているようで気分が悪い」という回答が多数。当時は健保組合に専門職がいなかったため特定保健指導を外部委託していましたが、紙ベースの事務的な特定保健指導の通知が加入者の心象を悪くしていました。そこで、ウォーキングアプリを活用した社員向けのイベントで対象者との接点を作り、特定保健指導だとあえて伝えずに指導できないかと考えたのです。案内の工夫で対象者が自然と参加できるようにし、対象者にはあくまでウォーキングイベントのフォローとして個別面談などを行いました。

 ウォーキングイベントを活用した特定保健指導実施の工夫

 

案内時

案内に“メタボの人のあるある”をそれとなく盛り込み「ぜひこういう人を誘って5人1組で参加してください」とアナウンス。

 

インセンティブの設定

平均歩数8000歩の達成、チームでの目標歩数の達成や、体重-2キロ・腹囲-2センチの達成(BMI22以上の参加者)などでインセンティブを付与。

 

集合研修

一般参加者も特定保健指導対象者も関係なく参加できる「ウォーキングセミナー」として実施。

 

初回面談

参加者のうち特定保健指導対象者には「健診結果を見たところ、ウォーキングイベントへの参加に心配があるので、事前にお話させてください」と管理栄養士から個別にメール連絡。面談時には「ウォーキングを続け、体重を減らせば数値が改善する」といったようにウォーキングと関連付けた形でアドバイス。

 

継続支援

インセンティブ付きのメディカルチェックアンケートを送り、管理栄養士が確認して返信する形に。

 


田中様:
結果、初回のイベント全体の参加者は約400人、うち58人が特定保健指導の対象者で、特定保健指導の実施率を一気に20%まで向上できました。その後も毎年春と秋の2回実施。2021年度には特定保健指導の実施率31%を達成。頑張りによって順位が可視化されるスタイルやコミュニケーションが生まれるチーム戦が当組合の加入者にマッチしていたようで、健保組合から参加を何度も呼びかけなくても順調に参加者が増えていきました。2024年のイベントにはついに社長も参戦、ランキングトップ10内に躍り出るなど、ますますもりあがっているんですよ。

辻村様:
さらに国が目標として掲げる実施率55%を目指すため、2024年には母体企業事業部のネスレヘルスサイエンスと連携し、Fitbitを活用した睡眠プログラムを新たに導入しました。このプログラムも同じように特定保健指導を組み込んで実施したところ、ウォーキングイベントでは接点を持てなかった対象者にもアプローチできるように。結果、実施率57%を達成でき、後期高齢者支援金の減算対象となりました。


「自発的な継続」が健診数値改善のカギ
行動経済学を取り入れた情報発信も


田中様:
特定保健指導の実施率が向上しただけではなく、腹囲や体重、BMIなどの健診数値や生活習慣も毎年着実に改善し、対象者は約4年間で約17%も減少しています。この最大の要因は、対象者が自発的にウォーキングイベントや特定保健指導に参加してくれるようになったからだと考えています。私たちもこの自発性を促すため、コミュニケーションは意識的に工夫してきました。
例えば、特定保健指導の案内は健保組合のグループアドレスから一斉送信するのではなく、対象者一人ひとりに個別で文面を作成し、私や辻村など管理栄養士個人名義のアドレスから送信するように。「私はあなたを心配しています」といったメッセージが伝わったことで対象者も特定保健指導を自分事として捉え、好意的に参加してくれるようになったと感じます。
比較的規模の小さな健保組合なので、加入者の方々と顔の見える付き合いを大切にしています。

津川様:
実施率を上げるだけであればトップダウンで参加を促したほうが早いかもしれませんが、その後継続せず、健診結果の改善にはつながらない可能性もあります。健保組合は加入者を数十年にわたってサポートする組織。長期的な視点で健康を維持していただくためには、やはり加入者の自主性、自発性が不可欠。そのために、行動経済学を取り入れた「人を動かす」ためのメッセージを発信するようにしています。

田中様:
もちろん、初めからうまくいったわけではありません。
例えば、生活習慣病への不安感や危機感をあおるような発信は当組合ではむしろ逆効果で、大失敗した経験もあります。一方、健診結果を「健康つうしんぼ」として可視化するなど、「見える化」に意識を向けた伝え方はポジティブな行動変容につながりやすい。
自組合の加入者に合った発信のあり方をゼロベースで試行錯誤してきましたね。



「らくらく健助」でデータ分析のコスパが改善
支援金の減算を狙いやすくなった


辻村様:
JMDCのサービスは、後期高齢者支援金の減算を意識する大きなきっかけになりました。
当組合では第3期データヘルス計画への対応のために、「らくらく健助」を導入しました。実際に「らくらく健助」を使ってみたり、JMDCの勉強会で活用法を学んだりして「自前でこれほどクリアに、かつスピーディにレポートを出せるのか!」と驚いたのです。これまでは一部のデータ分析を他社に外注していましたが、仕様に合わせたデータ準備の手間がかかるうえ、分析項目ごとに少なくない費用が掛かったり、データ抽出結果に納得がいかないケースがあったりと、効果に疑問を感じる部分もありました。これに対して「らくらく健助」が利用できれば、自在にさまざまな分析ができる。また、セミナーや問い合わせ窓口などサポート体制が手厚く、実施しているさまざまな保健事業の何をどう分析し、効果を確認したら総合評価指標の項目にチェックがつけられるのかがクリアになりました。「これなら、今まで簡単には着手できないと思っていた総合評価指標の項目にもチャレンジできる!」と火が付きましたね。
実際に重症化予防対策では、自分たちで健診データとレセプトデータを突合してハイリスク者を抽出できるようになり、より納得した形で対象者への受診勧奨や指導を行えるようになりました。


津川様:
健保組合は扱うデータが多く、これまでは加入者全体の健康状態を把握し、経営者にわかりやすく自分事としてみてもらえるためのデータ分析、共有方法に苦労していました。それが「らくらく健助」を導入してからは全体傾向の把握はもちろん、事業拠点別、部門別などの比較まで自分たちで簡単に行えるように。「健康スコアリングレポート」はわかりやすいレポートですが、経営者に持っていくには2年前のデータというのがネックでした。「らくらく健助」を用いて最新のデータで部門別の数字を出すことで、各部門で自分事として捉えてもらいやすくなりました。

効果検証やコラボヘルスを強化 他組合の好事例を参考にしたい

辻村様:
2023年10月には特定保健指導実施率57%を達成し、初めて国の目標水準を上回ることができました。次は重症化予防、二次受診未受診者へのアプローチをより強化していく予定です。またウォーキングイベントを始めとする各種プログラムの効果検証も「らくらく健助」を使ってより丁寧に行いたいと思っているところです。

田中様:
またコラボヘルスを一層推進し、母体企業の健康経営に健保組合としても積極的に取り組んでいきたいと考えています。ネスレ スイス本社が発行した資料でも健康経営の重要性が示されていますが、母体企業であるネスレ日本には健康経営の運営主体がなく、健保組合の役割が期待されていると感じます。
ネスレでは母体企業と健保組合との距離が近く、新たな挑戦を推奨する風土もある一方、母体企業側のコスト意識が非常に高いです。今以上に費用対効果を意識して、いろいろと試行錯誤していきたいですね。

津川様:
保健事業やコラボヘルスが健診数値の改善につながり、さらに医療費削減につながるまでには時間がかかるかもしれません。しかし、加入者の皆さまが健康になれば、本人も、母体企業も、健保組合も必ず幸せになれると信じています。そうしたみんなの幸せを目指す健保組合の仕事は、改めてとても素敵だなと思いますね。
こうした未来像に向け、今後は他のJMDCユーザーの方々とより活発に事例を共有しながら切磋琢磨したいと思います。そしてゆくゆくは、JMDCアワードもぜひ受賞したいですね。JMDCには引き続き、ユーザーフレンドリーなサービスを提供してくれるよう期待しています。

インタビューを終えて

「特定保健指導実施率だけを上げればよいのではなく、健康状態の改善という“中身”が伴っていなければならない」「そのためには加入者の自発的な行動を促すコミュニケーションが大切」といったお話が印象的でした。今すぐ使えるような具体的なテクニックの数々も参考になります。
改めて、このたびはインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。






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