【分析事例】健診データから見るコロナ禍の課題の変化
新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから約1年半が経過しました。
緊急事態宣言による外出自粛など、私たちの生活や行動も大きく影響を受けています。
今回の記事では、JMDCが保有するビッグデータを用いて、
コロナ禍により意識・行動・結果(健診値)にどのような変化があったのかを見ていきます。
条件
以下に該当する約5万人のデータを用いて分析を実施しました。
・年度:2019年度・20年度
・在籍:各年度1日でも在籍していた被保険者
・年齢:各年度末40歳以上
分析結果
1. 意識の変化
コロナ禍におけるストレス増加により睡眠や飲酒習慣に変化が起きているのではないかという仮説のもと、分析を行いました。
はじめに「睡眠で休養が十分にとれていますか」の問診回答の構成割合を調べました。
2019年度と2020年度を比較すると、「睡眠で休養が十分にとれている」という回答は55%から60%に増加していました。
次に、飲酒習慣を2つの問診を用いて集計しました。
飲酒頻度が「毎日」で1日あたりの飲酒量が2合以上と回答した人、または飲酒頻度が「時々」で1日あたりの飲酒量が3合以上と回答した人と定義しました。
多量飲酒群の構成割合を見たところ、2019年度と2020年度で目立った変化は見られませんでした。
2. 行動の変化
保険者に最も選ばれているウェアラブルデバイスであるFitbitの装着者と非装着者を比較し、行動の変化を調べました。
ここでは、問診の「1日1時間以上の身体活動をしていますか?」の結果を用いて分析を行いました。
Fitbit装着群・非装着群いずれも、「1日1時間以上の身体活動をしている」と回答した人の割合が2019年度から2020年度にかけて減少していました。
また、装着群と非装着群の間では、同年度の比較で「1日1時間以上の身体活動をしている」と回答している人の割合が異なることも注目すべき点です。
Fitbitを装着者が1日1時間以上歩く傾向があるのか、1日1時間以上歩く人がFitbitを装着する傾向があるのかはこの結果からは結論づけられませんが、Fitbitの装着と運動習慣の向上に関係性があることが示唆されました。
3. 健診値の変化
最後に、実際の健診値への影響を分析しました。
今回は、運動量の低下による肥満者の増加傾向を調べました。
肥満の指標には、BMIと腹囲を用いました。
その結果、2019年度と2020年度を比較して肥満者の割合はほとんど変化がないことが示されました。
運動量の低下による肥満者の増加は、現在のところ確認されませんでした。
まとめ
睡眠や飲酒習慣においては、コロナ禍による悪化傾向は見られませんでした。
また、行動面ではコロナ禍において歩数は減少し、継続的な運動習慣が行えなくなった人が増加していることが示されました。
一方で、健診結果から見た肥満度においては、未だ影響が顕在化していませんでした。
日頃の生活習慣が健診値に反映されるまでには時間がかかりますので、
今後も意識・行動・結果のデータから、コロナ禍においてどのような変化が起きているのかを追跡することが非常に重要です。
JMDCでは、上記データやウェアラブルデバイスから得られたデータのデータベース化や分析のご支援が可能です。
コロナ禍の影響や保健事業の推進についてお悩みがある際は是非お気軽にご相談ください。