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【分析事例】生活習慣病ハイリスク者の実態とは?

多くの保険者様が生活習慣病未受診者への医療機関受診勧奨や継続通院勧奨に注力されていますが、イベント*発症者の実態まで把握できているでしょうか?

*イベント:本記事では脳卒中・虚血性心疾患・透析を指す

今回の特集では、JMDCが保有するビッグデータを用いてイベント発症者のレセプトから確認できる医療機関受診歴や健診値について分析を行いました。


目次[非表示]

  1. 1.分析条件
  2. 2.分析結果
  3. 3.まとめ


分析条件

以下に該当する約600万人のデータを用いて分析を実施しました。

分析結果

1. イベント発生者の割合

はじめに、2020年度のレセプトデータを用いてイベント発症者の割合を算出しました。
その結果、全体で脳卒中は0.12%、虚血性心疾患は0.17%、人工透析新規導入率は0.01%であることがわかりました。

また、いずれの疾病も年齢が上がるごとに発症割合は増加しており、40歳代以下の若年層でも一定数発症者が存在していることがわかりました。
虚血性心疾患、脳卒中は日本人の死因のそれぞれ2位と4位であることから*、今回のデータでは示せませんが発症してそのまま亡くなる人も少なくないと推測されます。

*参考:令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)


2. イベント発症者の医療費

次に、イベント発症者の年間医療費について分析を行いました。
脳卒中、虚血性心疾患、透析でそれぞれ平均256万円、199万円、349万円という結果となりました。透析については一般的な年間医療費よりも低い値となりましたが、これは年度内新規導入者が分析対象のため、年度後半で新たに導入となった対象者も含まれていることによると考えられます。
また、年間医療費が500万円以上の人は脳卒中、虚血性心疾患、透析でそれぞれ16%、8%、18%でした。


3. イベント発症者の健診受診率

次に、イベント発症者は健診を受けておらず事前の検知ができないのではないかという仮説に基づき、イベント発症の前年度の健診受診率を分析しました。
その結果、どの疾患においても被保険者・被扶養者ともにイベント発症者は母集団全体と同程度の健診受診率となっていました。
したがって、仮説に反してイベント発症者の健康意識がより低いとは言えず、健診受診を促進してもイベント発症を予防できるとは限らないことが示唆されました。


4. イベント発症者の健診値

さらに、イベント発症の前年度健診における健診値を分析したところ、いずれの疾患においてもそれぞれの健診値でD判定の割合は30%未満であり、アンコントロール者の割合が高いとは言えませんでした。


5. イベント発症者の通院歴

最後に、イベント発症の前年度における、医科・調剤レセプトから見られる生活習慣病関連の通院歴を調べたところ、脳卒中では59.6%、虚血性心疾患では78.5%でした。透析は突然導入することはないので、93.7%と大多数の人が前年度に受診歴がありました。
この結果から、生活習慣病関連で医療機関を受診していても、必ずしもイベント発症を防ぐことはできないと考えられます。

以上より、健診受診、健診値、通院歴などそれぞれの指標単独ではイベント発症を予測することは難しく、これらを複合的に解析し施策を検討することが必要だと言えます。


まとめ

JMDCでは保有するビッグデータを活用し、無数の健診・レセプトデータからAIによってイベント発症者を予測する抽出サービスを提供しています。

ご興味がある保険者様は、ぜひ下記よりお気軽にお問い合わせください。


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