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第3期データヘルス計画の対応はいつから?期間や変更点を押さえよう


2024(令和6)年度から始まる第3期データヘルス計画に向け、保険者は2023年度中から次期計画立案などの準備を行う必要があります。
第3期の開始に伴い「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」「データヘルス計画策定の手引き」などの見直しも厚生労働省(以下、厚労省)により進められており、変更点を確実に押さえておきたいところです。
今回は、データヘルス計画の狙いや背景を改めて振り返りながら、第3期データヘルス計画のポイントを解説します。

本記事は2023年6月時点情報となります。最新情報は手引きをご確認ください。​​​​​​​


データヘルス計画の概要と狙い


データヘルス計画は、保険者による保健事業をデータ分析に基づいたPDCAサイクルで実施するべく、2015(平成27)年に厚労省により開始されました。従来の保健事業が手探りで、あるいは前例通りでなんとなく行われてしまっていた部分もある中、データを根拠に費用対効果の高い保健事業へと改善すること、その結果、健康寿命の延伸と医療費適正化を図ることがデータヘルス計画の狙いです。
厚労省による「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」(以下、指針)の記述が、データヘルス計画の根拠となっています。

PDCAサイクルの各フェーズで想定されている取り組みは下図の通りです。データをもとに客観的に実態を把握したうえで各保険事業の目標と計画を定め、実施後はデータに基づいて評価・効果測定を行い、軌道修正する、といった流れになっています。


「第1回 第3期データヘルス計画に向けた方針見直しのための検討会 事務局資料」より引用


「手引き」「ポータルサイト」の位置づけと具体的な実務

データヘルス計画に伴う実務は、厚労省保険局および健保連による「データヘルス計画策定の手引き」(以下、手引き)を主に参照しながら遂行します。より具体的な作業としては、厚労省による「データヘルス・ポータルサイト」(以下、ポータルサイト)上の手順(下記STEP1〜4)に沿って、計画の登録や事業の評価を行います。

STEP1:保険者(自組織)の実態把握分析(加入者や事業所の概要、予算などの基本情報と既存の取り組み、特定健診結果・医療費・レセプト情報などの分析結果)を登録する
STEP2:登録した分析結果から、自組織の健康課題と対策の方向性を整理する
STEP3:整理した課題および対策の方向性をもとに、年度ごとの保健事業実施計画を登録する
STEP4:各年度の実施状況と評価を登録する




これまでの経緯と今後のスケジュール


これまでのデータヘルス計画の経緯および直近のスケジュールは下記の通りです。

  • 第1期:2015(平成27)年度~2017(平成29)年度
  • 第2期:2018(平成30)年度~2023(令和5)年度
  • 第3期:2024(令和6)年度~2029(令和11)年度


第2期までの流れで特に重要なのは、第2期データヘルス計画後期から、評価指標の標準化と保健事業のパターン化が進められている点です。評価指標の標準化により、保健事業の取り組み状況や効果を保険者間で客観的に比較できるようになり、より適切に評価を行えるようになることが期待されます。パターン化については、成果の高い保健事業のパターンを抽出し、保険者間で横展開できるようにするのが狙いです。

また、今後のスケジュールでは、第2期最終年度の2023(令和5)年度から、第3期に向けた準備(第2期の振り返り、第3期の計画策定)が必要になる点に注意しましょう。



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第3期で検討されている変更点 6領域


第3期データヘルス計画での変更点は、厚労省の「第3期データヘルス計画に向けた方針見直し検討会」で議論されています。具体的には、次の6つの領域で、現状の課題とそれに対する対応策が整理されています。

  1. 計画策定・公表
  2. 事業メニュー
  3. 事業アプローチ
  4. 事業実施方法
  5. 評価指標
  6. 保険者間連携


以下では、2023年3月23日に公開された「第3期データヘルス計画に向けた方針見直しのための検討会(とりまとめ)」から、押さえておくべき変更点を抜粋します。
※最新の情報は、厚労省Webサイトをご確認ください。



01 計画策定・公表

主な課題

検討中の対応策例​​​​

  • 計画策定のリソース不足
    • 保険者職員のマンパワー不足、保健師・ICT 専門家などの人材不足、人事異動によるノウハウ喪失など
  • 複数保険者によるデータヘルス計画の共同策定・実施・評価を許容することを新たに指針へ記載
  • ポータルサイトの新機能実装
    • 保険者向けの平易な分析機能、第3期データヘルス計画などの実施計画を効率的に作成するための機能
  • その他、手引きへの追記、研修の実施など
  • データヘルス計画の公表が低調
    • 企業ブランドを背負った保険者が健康課題を公開することへの懸念
  • 公表範囲を限定し、ポータルサイトに、保険者同士が相互閲覧できる機能を実装


データヘルス計画公表に対する保険者の懸念を受け、公表範囲をポータルサイト内に限定するのが大きな変更点です。また、計画策定のリソース不足対策として、複数保険者によるデータヘルス計画の共同策定・実施・評価を許容する旨を指針に記載することが検討されています(04 事業アプローチ、05 事業実施方法にも関連)。
そのほか、保険者の計画策定をサポートするようなポータルサイトの機能改善が行われる見込みです。



02 事業メニュー

主な課題

検討中の対応策例​​​​

  • 新たな保健事業の指針上の位置づけが不明瞭
    • 女性特有の健康課題など性差に応じた健康支援
    • ロコモティブシンドローム対策
    • 歯科疾患対策
    • メンタルヘルス対策
    • 重複多剤対策・セルフメディケーション事業
    • 40 歳未満の事業主健診データを活用した若年層対策
  • 指針上に事業メニューを提示。
  • 対応する事業分類をポータルサイトに実装
  • 手引きへの好事例の追記
  • 費用対効果を踏まえた保健事業の優先順位付けが困難
  • 予防・健康づくりに関する大規模実証事業」
  • 「予防・健康づくりの社会実装に向けた
  • 研究開発基盤整備事業」の成果をもとに、事業の推奨度を指針に提示
  • 手引きに「PFS 補助事業」の成果などを追記


先進的な保健事業についての記述が指針や手引きに追加され、ポータルサイトにも反映される予定です。また、保健事業の優先順位付けの目安として、各種事業の成果を参照できるよう、指針や手引きでの情報提供が検討されています。



03 事業アプローチ

主な課題

検討中の対応策例

  • 共同事業やPFS事業*1 の普及が低調
    • 幹事保険者の負担が重い(共同事業)
    • モデル事業が不足(PFS事業)
  • 共同事業における幹事の負担軽減対応を検討
  • PFSモデル事業の結果などを踏まえた
    ガイドラインを策定
  • その他、普及に向けて指針や
    手引きへの追記、ポータルサイトの改修など
  • 外部委託事業者の選定が困難
  • ポータルサイトに検索機能を実装
    • 各事業者の成果などを閲覧可能
    • JMDCも対象となる予定
  • 保健事業の効果検証が困難
    • 指針に記載なし
    • ノウハウ不足
  • 保健事業の効果検証に関する
    既存ガイドラインを整理・整備
  • 指針への追記
  • コラボヘルスや保健事業の継続性に課題
    • 事業主との連携
    • オンライン、リモート環境での実施
  • コラボヘルスにおける事業主への
    働きかけについて、手引きに追記
    • 健康スコアリングレポートの活用など
  • その他、保健事業の継続性担保について指針に追記


共同事業の推進やコラボヘルスの継続性担保に向けた記述が指針や手引きに追加される見込みです。また、データ分析などの外部委託を適切に行えるよう、ポータルサイトに事業者の検索機能が実装されました。そのほか、効果検証に関するガイドラインの整理・整備状況も注視しておきたいところです。

*1 成果連動型民間委託契約方式による事業。あらかじめ設定された成果指標の改善状況に応じて、民間事業者への委託金額が変動する仕組み。



04 事業実施方法

主な課題
検討中の対応策
  • 保健事業の効果的な実施方法が横展開されていない
    • 先進事例の共有
    • ポータルサイトに蓄積されたデータの活用
  • 事業の効果を高める実施方法や実施体制の要因
    (コラボヘルス、専門職との連携など)
    について、データ分析結果を手引きに追記
    • 中長期的な効果も求めるよう配慮


事業の効果を高める実施方法・体制を整備するための参考情報として、ポータルサイトに蓄積されたデータの分析結果を手引きで紹介することが検討されています。



05 評価指標

主な課題

検討中の対応策例

  • 共通の評価指標のさらなる整備
    • 任意項目の実績値の入力が低調
    • データ集計の負担が大きい
  • NDBデータ*2 で集計が可能な指標は、
    国が実績値をポータルサイトにプリセット
  • 後期高齢者支援金の加算減算制度における
    総合評価に用いられる指標は目標設定を必須化
  • その他、指針や手引きへの追記


共通指標に関するデータ集計・入力の負担を軽減する対応が検討されています。一方、共通指標を事業評価などに効果的に活用できるよう、一部の指標は目標設定が必須化される見込みです。

*2 厚労省保険局が収集・管理している「レセプト情報・特定健診等情報データベース」。



06 保険者間連携

主な課題

検討中の対応策例

  • 市町村など自治体との保健事業の連携に課題
    • 国民健康保険、後期高齢者医療制度への被保険者の引き継ぎ
  • 被保険者の引き継ぎについて
    指針または手引きに追記
  • ポータルサイトに実装されている
    自治体の保健事業の登録・閲覧機能の活用を促進する方策を検討

保健事業に関する自治体との連携を円滑化するべく、手引きへの追記やポータルサイトの改修が検討されています。



おわりに


第3期データヘルス計画に関する検討状況を振り返ると、現時点では第2期までと大きな変更点はないように見受けられます。新任の担当者はこれまでの経緯も踏まえつつ、直近で必要な対応を実務レベルで整理しておきましょう。
また、厚労省による検討内容は一通りとりまとめられてはいるものの、最終的な情報は6月末に発出予定の「第3期データヘルス計画策定の手引き」に記載があると思われます。
引き続き、厚労省からの情報提供に注目しておきましょう。

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(参考資料)
第3期データヘルス計画に向けた方針見直しのための検討会(とりまとめ)(令和5年3月 第3期データヘルス計画に向けた方針見直しのための検討会)
「データヘルス計画のこれまでの経緯と第3期に向けた課題等について」第1回 第3期データヘルス計画に向けた方針見直しのための検討会 事務局資料


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