保険者インタビュー・導入事例

人生100年時代!〜健診の大切さを加入者へ〜

インタビューイー様のご紹介

東洋機械金属健康保険組合 常務理事 水田 ゆか子 様
本社総務部から17年秋から出向(現在も母体企業のハラスメント相談窓口と兼任)

※本インタビューは水田様へ行いましたが、コラボヘルスで取り組みを共にすることも多い本社総務部総務課 部長代理 田中様にも写真撮影に応じていただきました

事例概要

2022年2月の被扶養者健診の特集は読者の皆さまから大きな反響をいただきました。
特集で取り上げた健保様の中でも特に大きく健診受診率を向上させていた東洋機械金属健康保険組合様。以前の特集では取り上げられなかった取り組みの詳細や、被扶養者の健診事業への思いを伺いました。

東洋機械金属健康保険組合様について教えてください。

兵庫県明石市に本社がある東洋機械金属株式会社とグループ会社が母体の単一健保です。
東洋機械金属株式会社は自動車部品などの物の形をつくる成形機という機械を作る会社で、2025年に創業100周年を迎えます。株式会社神戸製鋼所、株式会社日立製作所のグループ会社を経て、現在は独立しています。
売上の約7割が中国をはじめとする海外で、海外駐在の社員も多くいます。

一方、東洋機械金属健保は戦後間もない1946年4月に設立されました。
被保険者は約620名で男性の比率が約94%、被扶養者は約710名です。

健保着任当時はどのような状況でしたか?

2017年の健保着任当初は何をすれば良いのかわからないことが多く、厚生局や健保連によく電話をかけて聞いていました。

当時は前期高齢者納付金・後期高齢者支援金が保険料収入の45-50%あり、財政状況がかなり厳しかったです。
そのため、まずは前期高齢者納付金を減少させるために65歳以上の被保険者を減らそうと考えました。国保より保険料が高くても会社愛が強いために任意継続を望む人が多くいたのですが、(あまり良い方法ではありませんが)そのような方には国保に移ってもらうようにお願いをした程困っていました。
総務部にいて社員と顔が見える関係だったからこそできた取り組みでしたが、とても効果があり2020年度には前期高齢者の任意継続者は0名に、被保険者は数名になりました。その結果、前期高齢者納付金・後期高齢者支援金が保険料収入の20-25%まで減少し、保健事業にお金をかけられるようになりました。

また、2017年当時は被扶養者の健診受診率は約20%でしたが、この率が高い数値なのか低い数値なのかすらわかっていませんでした。近隣の健保に聞いたところ、残念ながらとても低いレベルだということがわかり、「これはアカン」と思い健診への取り組みに力を入れ始めました。
特に、当健保では扶養率が2020年度で1.17、着任した2017年度は約1.30と高く、被扶養者へも予算をかけるべきだと考えました。

2018年度以降の被扶養者健診の取り組みについてもう一度詳しく教えてください。

2017年の健保着任前は健保からの発信があまりできていなかったと感じています。被扶養者健診のお知らせも社内報などで見たことがなく、知っている人しか受けられないという状況でした。

まず2017年度は過去健診受診者へ被保険者経由で案内をお送りし、2018年度から40歳以上の被扶養者全てへ個別に郵送するようにしました。また、封筒のデザインや案内の内容も工夫しました。その結果、受診率が約10%上がりました。
2018年度の健診案内

検診内容を充実させたら受診率が上がると信じ、2019年度からはがん検診(子宮頸がん、乳がん:マンモとエコー選択制)も含め自己負担をほぼ無料にしました。2018年度は健保の負担は一人あたり約8,000円でしたが、2019年度は約40,000円になりました。
また、巡回健診を取り入れ、北関東〜九州にいる加入者がどこで受けても同じ内容になるようにしました。
社内イントラなどを活用し周知に力を入れた他、予約締め切り日から一カ月前を目安に未予約者に対して再勧奨を行いました。再勧奨すると受診者が顕著に増えました。締め切り直前に再勧奨すると一気に受診者が増えるため、方法を問わず他の健保様にもおすすめしたいです。

2020年度はコロナ禍で健診事業を進めるべきか様子見する風潮がありましたが、「受診控えで誰も死なせたくない!」という思いがあったため当健保は手を抜かないと決めました。社内イントラなどでがんの早期発見の重要性などのメッセージとあわせて健診を受けるように伝えました。
また、40歳になったからといっていきなり健康意識が高まるわけではないので、早めに健診受診を習慣化してほしいという思いから特定健診の対象者を39歳以上に引き下げました。新たに対象となった人も80%ほど受診してくれました。

2021年度は、兵庫連合会からショッピングモールなどでの健診の提案があり導入しましたが、2名の追加受診がありました。当健保は規模が小さいため、一人でも増加すると受診率が向上します。仕組みがうまく回っているので、40歳未満も含めて受診率はさらに伸びると思います。 予約者ベースの暫定数値ではありますが、2021年度の受診率は52%程度になる見込みです。

健診に力を入れている背景にはどのような思いがあるのでしょうか?

健保着任後の3年間は、毎年のように乳がん、肺がん、大腸がん等で入院する加入者がいました。年齢層は40〜50歳代が多く、まさに働き盛りで亡くなった方も少なからずいました。加入者が亡くなったという訃報を聞くたびに、悔しさでいっぱいでした。その時の気持ちはいつまで経っても忘れられないです。
その思いがきっかけとなり、特にがん検診に注力しようと考えました。令和元年以降、現役世代で亡くなった加入者はいません。この記録をできる限り継続していきたいです。
前述のような経験から早期発見・早期治療はとても重要だと考えていますし、医療費に費用をかけるくらいなら予防費にかけるべきだと思います。一人でもがんを早期発見できたら元がとれますし、保健事業にお金をかけてマイナスになることはありません。
実際、がんを早期で発見できるようになって入院期間が1-2週間で済み、医療費も下がってきています。
こうした思いが実を結び、令和3年度の「がん対策推進優良企業」として表彰されました。

さらに今後は、日本だけでなく海外駐在の加入者の健康管理にへも取り組みも強化していきたいです。

今後の健診事業・保健事業の展望について教えてください。

2022年度からは、被保険者の人間ドックと被扶養者健診の対象年齢を36歳以上に引き下げます。

また、子宮頸がん対策として細胞診と同時にHPV検査を3年ごとに実施することにしました。地域によっては健診機関でHPV検査ができないところもあるため、その場合は自己採取キットを取り入れる予定です。

さらに、被扶養者健診で個人負担5,000円で胃カメラをオプションとして導入します。

2019年に被保険者を対象にABC検査を行ったところ、ピロリ菌感染の所見ありの人が予想以上に多く危機感を感じました。そこで胃カメラを受けられる機関を増やし自己負担を無料にしたところ、人間ドック自体の受診率が上がり胃がんも数名で発見されました。
現在被扶養者の胃がん罹患者はゼロですが、検査を受けず見つかっていないだけではないかと感じています。被扶養者健診ではX線検査を導入していますが、女性はあまり受けたがりません。2022年度は健診機関の環境が整うため、胃がんも早期発見できればと思っています。

また、ここまで早期発見・早期治療の重要性を強調してきましたが、そもそも病気やがんにならない体づくりが大切だと思い、2021年にPep Up(※編集者注:JMDCが提供するICTツール)を導入しました。
健康年齢で客観的に体の状態がわかるのが良いですし、秋に初めて行ったウォーキングラリーも反響が大きかったです。
できるだけ短期間で登録率をあげたいと考えているので、ウォーキングラリー開催時に呼びかけに力を入れたり、インフルエンザ予防接種の補助金申請や人間ドックの希望調査をPep Up経由で行うようにしたりしています。事業主側からも基本料の半分を出してもらっているので、会社からも声をかけやすいようです。それにより、当初の目標は登録率80%でしたが、現在76%まで上がっています。
登録率が上がったことで健保からの発信などもしやすくなってきているので、今後はPep Upをより活用していきたいと考えています。

人生100年時代、仕事を続けられるよう加入者に健康を保ってもらうのはもちろんですが、退職後も長生きし人生を全うしてほしいと願っています。そのために健診を受けてもらえるようこれからも努力していきます。

ありがとうございました。



取材日:2022年3月24日


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