被扶養者健診受診率「私たちはこうやって上げた!」事例集
多くの保険者様が悩まれている被扶養者の健診受診率。
特にコロナ禍の影響で、これまでの取り組みが思うように進まなくなったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の特集では、過去数年間で飛躍的に被扶養者の健診受診率を向上させた健保様にインタビューを行い、具体的な施策を伺いました。
被扶養者の健診受診率の実態
JMDCが保有する健診データを分析したところ、2017年度に全体で46.3%だった被扶養者(40歳以上)の健診受診率は、2019年度には47.2%に微増していました。
一方で、2020年度には42.4%まで落ち込み、コロナ禍が健診の「受診控え」に大きく影響していることがわかりました。
JMDCとお取引のある健康保険組合様のうち、東洋機械金属健康保険組合様や立正佼成会健康保険組合様では、被扶養者の健診受診率は他健保平均よりも高い上昇率で増加していました。
また、渡辺パイプ健康保険組合様では2017年度にすでに他健保平均相当の45.8%の受診率でしたが、2019年度には77.1%まで上昇していました。
さらに、被保険者を介しての介入が難しく被扶養者の健診受診率の向上が難しいと考えられる総合健保にも関わらず、東京港運健康保険組合様では2年間で受診率が倍増していました。
健診受診率を上げた具体的な施策
今回は、被扶養者の健診受診率を向上させた具体的な施策について、上記で取り上げた4健保様にお話を伺いました。
お話を伺った方:
東洋機械金属健康保険組合 常務理事 水田様
立正佼成会健康保険組合 國司様
渡辺パイプ健康保険組合 宇賀神様 ※文書でのご回答
東京港運健康保険組合 総務課長 渡辺様
※以下、法人格省略
東洋機械金属 |
立正佼成会 |
渡辺パイプ |
東京港運 |
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2017年度以前の
取り組み
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2017年度 受診率:20.2% 過去に健診受診したことがある人へのみ被保険者経由で通知していました。 |
2017年度 受診率: 33.9% 母体やグループの病院で健診を受けてもらいたいという背景があり、被保険者に対しては他の健診機関を案内していませんでした。 被扶養者に対しては健診案内を行っていませんでした。 |
2017年度 受診率: 45.8% 2014年度までは、組合が全額負担し、東振協の婦人科健診を実施。受診率は2010年度以降、45~50%程度で推移。2015年度からは、被保険者及び被扶養者の健診を㈱イーウェルへ変更し、kenposを導入し申込方法をwebと紙で受付可能とした。 |
2017年度 受診率: 20.9% 2016年度以前は一律の案内を機関誌で送るだけでした。 2017年度からは東京都総合組合保健施設振興協会(東振協)の婦人科検診に参加し、自己負担額2,000円でがんや生活習慣病などの検査を受けられるようにしました。 健診の案内は従来通り機関紙にて行いました。 |
2018年度の
取り組み
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2018年度 受診率:32.0% 被扶養者へ個別に案内を郵送するようにしました。巡回健診でホテルを利用すると、綺麗で女性にとっては健診を受けやすい封筒をピンクで可愛くし、気持ちを込めたお手紙もつけました。 またパートの勤務先など他で受けた健診結果を提出した場合は、商品券などを2,000円分渡すようにしました。 |
2018年度 受診率:43.3% 子供がいる家庭には巡回健診のニーズが高いことがわかり、巡回健診を導入しました。 巡回健診でホテルを利用すると、綺麗で女性にとっては健診を受けやすいようです。 また、以前は広報誌の中に健診案内を折り込んでいましたが、2018年度は自己負担ゼロを強調した上で一部の被扶養者宛てに親展にして送りました。また未受診者にはもう一度案内を郵送しました。 |
※2018,19年度合わせてご回答をいただきました。
——————— 2018年度 受診率:61.7% 2019年度 受診率:77.1% 組合会にて第2期DH計画の目標を後期高齢者支援金の減算化をターゲットとした指標(評価指標に沿った事業)に重点を置き実施。 家族健診は、特に申込勧奨の徹底(勧奨方法:手紙、FAX、メール、該当被保険者へ依頼/2019年度は、14回実施)を行い、早期期申込者へインセンティブを付与した。 |
2018年度 受診率:36.3% 健診の内容は変えず、被扶養者に直接案内を年2回送付するようにしました。 |
2019年度の
取り組み
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2019年度 受診率:50.0% 健診の内容を充実させ、がん検診も含め自己負担をほぼ無料にしました。2018年度は健保の負担は一人あたり約8,000円でしたが、2019年度は約40,000円になりました。 また、巡回健診を取り入れ、北関東〜九州にいる加入者がどこで受けても同じ内容になるようにしました。 社内イントラなどを活用し周知に力を入れた他、未予約者に対して再勧奨を行いました。 |
2019年度 受診率:48.2% 健診案内を郵送する対象を40歳以上の全被扶養者に拡大しました。 |
2019年度 受診率:40.1% 2018年度と同じ取り組みを行いました。 |
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コロナ禍の影響、2020年度の
取り組み
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2020年度 受診率:50.3% コロナ禍でも健診は手を抜かないと決め、社内イントラなどでがんの早期発見の重要性などのメッセージとあわせて健診を受けるように伝えました。 早めに健診受診を習慣化してほしいという思いから、特定健診の対象者を39歳以上に引き下げました。 |
2020年度 受診率:39.8% 健保は取り組み内容を変えていませんが、健診機関が人数制限をした影響で2020年度は受診率が下がりました。 |
2020年度 受診率:77.9% 院内感染が不安で健診を受診されない方がいた。健康診断の実施案内に注意勧告し、早期の申込みを促した。 |
2020年度 受診率:33.8% コロナ禍でも健診案内のメッセージは変えていません。 |
2021年度の
取り組み・状況
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兵庫連合会からショッピングモールなどでの健診の提案があり、導入しました。仕組みがうまく回り始めて今年度の受診率はさらに伸びると予想しています。 |
2021年度は広報誌で健診受診の体験談を掲載しています。また今までの通知に加え、JMDCの健診受診勧奨通知を導入しました。その結果、前年度より受診率が上がる見込みです。 |
コロナ禍の影響を受けている(未申込者が全体の2割弱の方がいた)。 |
2020年度は受診率が下がってしまいましたが、2021年度は前年度より上がっています。 |
今後
取り組みたいこと
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胃カメラの導入など健診内容をより拡充させたいと考えています。 健診に関わる費用はかなりかかりますが、がんなどが早期発見できれば採算がとれますし、どうせ費用をかけるなら予防に使いたいと考えています。 |
妊娠・出産により健診を受けない人がいることを懸念しています。事業主とも協力して受けてもらえるように働きかけたいです。 被扶養者の健診受診率の目標は50%です。健保以外で健診を受けている人もいると思いますが、データを送ってもらうのは拒否されることが多いです。マイナポータルなどを活用して自分で入力して健保で管理できるようになると良いと思います。 |
未申込者の該当被保険者へ未申込の理由を調査し、未申込者全体の4割はパート先で受診していることがわかった(2021年度調査)。 パート先受診者から特定健診結果提出者へインセンティブ(電子マネー)やパート先受診者以外の方へ受診勧奨を徹底に取り組みたい。 |
2022年度から自己負担額を2,000円から1,000円に引き下げます。すでに2022年度春の健診申込を開始しましたが、例年より明らかに申込者が増加しています。将来的には受診率50%超を目指したいです。 |
JMDCの健診勧奨通知リニューアルのお知らせ
上記の事例から、健診受診率を大幅に向上させた健保様では
・被扶養者へ直接健診の案内を送付
・未予約者へ受診勧奨
・巡回健診の導入(健診受診場所へもこだわる)
・費用補助
・パート先などで受けた人へ健診結果提出に対するインセンティブ
といった施策が行われていることがわかりました。
また、案内の方法やメッセージを工夫するという声も多く聞かれました。
訴求力のある通知を被扶養者個人へ送ることは有効な手段の一つと言えます。
JMDCでは、以前より主に被扶養者の健診未受診者へ対して、
過去のレセプトと健診結果から、健診未受診理由を類推してメッセージを出し分ける健診受診勧奨通知をご提供しておりましたが、この度、対象者の大多数を占める女性に特化した形へと、本通知デザインを刷新いたしました。
この通知の特徴は、以下の通りです。
- 女性の親近感を得やすいデザイン・内容
- 過去の健診・医療機関受診の有無を分析し、通知対象者に合わせたメッセージ
- 各保険者様の健診申込サイトのURLを掲載可能
- 受診日を記載してもらうことで、ナッジ理論のコミットメント効果により受診の可能性がアップを期待
より訴求力を高め、被扶養者健診受診率向上を目指していくことを狙いとしている本通知について、詳細な説明をご希望の保険者様は、下記フォームよりぜひご相談ください。