【分析事例】レセプトデータから見る COVID-19が与えた医療費への影響
新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)は世界中で猛威を振るっており、私たちの生活に大きな変化を与えています。日本でも、緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナ以前の生活に戻るまでにはまだ遠い状況と言えます。
保険者様におかれましても、新型コロナへの対応や通常業務の継続等、ご尽力されている所かと存じます。
また、組合会・理事会の時期が近づく中、新型コロナがどの様な変化を与えた(与える)のかについて、調査を求められている保険者様もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、JMDCが保有するビッグデータを用いて、レセプトデータから見る新型コロナによる医療費の変化について、分析事例をご紹介いたします。
目次[非表示]
- 1.条件
- 2.分析結果
- 2.1.月別医療費の比較
- 2.2.受療率(実患者数)の比較
- 2.3.疾病別分析-ICD10大分類
- 2.4.疾病別分析-傷病別分析の比較
- 2.5.インフルエンザ実患者数
- 3.まとめ
条件
2018年4月から2020年3月までの2年間、継続して在籍をしている280万人のレセプト分析を実施。
2020年3月と2019年3月で比較し、どういった変化があったのかを調べてみました。
分析結果
月別医療費の比較
2019年3月と2020年3月の総医療費では前年同月比▲5%でした。
前年同月で比較すると、他の月は同程度~増加傾向であったことから、医療費についても若干の変化があったと見受けられます。
受療率(実患者数)の比較
2019年3月と、2020年3月を比較すると、受療率は前年比▲9.8%と医療費に比べ大きく減少していました。
さらに、10歳刻みの階層毎に分析したところ、0~9歳・10代は前年同月比▲17%以上に対し、60代・70代については前年同月比▲2%程度と年齢階層毎に変化の度合いが大きく異なりました。
疾病別分析-ICD10大分類
ICD10大分類で分析したところ、
・J00-J99呼吸器系の疾患
・A00-B99感染症及び寄生虫症
・H00-H59眼及び付属器の疾患
・H60-H95耳及び乳様突起の疾患
の患者数が前年同月比で大きく減少していることが分かりました。
これにより、風邪等の軽症患者の受診抑制、在宅勤務増加に伴いコンタクトの処方減等が原因という可能性が示唆されました。
疾病別分析-傷病別分析の比較
傷病別に分析した結果、呼吸器の中でも、特に風邪・インフルエンザには大幅な減少が見受けられます。不要不急の外出を控えるといった要因以外にも、手洗いうがいの徹底等で罹患者数が減少した可能性も考えられます。
生活習慣病やがん・歯科全般については、前年同月と比較しても大きな変化は見られませんでした。
インフルエンザ実患者数
ただし、インフルエンザについては、10月から3月までの6ヶ月で比較すると、2019年度は2018年度に比べて患者数が全体的に少なく、新型コロナによる変化だけとは言い切れず、流行の規模が小さかった可能性も考えられます。
まとめ
今回使用したレセプトデータは、緊急事態宣言発令(2020/04/07)以前の、
2020年3月診療分のレセプトデータまでとなっているため、
2020年4月以降のレセプトで分析することによって、また違う結果が見えてくることが考えられます。
具体的には、
・既に治療中患者の治療中断の増加
・歯科メンテナンス等の受診者数の減少
・外出自粛の本格化に伴い本来治療等で通院すべき対象者の受診控え
などが懸念されます。
4月レセプト以降の分析については、秋ごろに改めて実施いたします。
JMDCでは、今回ご案内したように、各保険者様の保有されているレセプトデータから、医療費分析のサポートを行っておりますので、医療費分析などでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。