【分析事例】新型コロナ感染拡大による医療費への影響 〜2020年4月度レセプトにおける分析〜

6月に掲載した『レセプトデータから見る、COVID-19が与えた医療費への影響』にとても多くの反響があり、その後の経過も見たい、というお声を多数いただきました。

そこで今回は、前回の分析対象に含まれていなかった 2020年4月分のレセプトデータを利用し、3月分のレセプトデータ分析により表れた結果との比較を実施しました。

目次[非表示]

  1. 1.この記事の概要
  2. 2.条件
  3. 3.分析結果
    1. 3.1.月別医療費の比較
    2. 3.2.受療率(実患者数)の比較
    3. 3.3. 疾病別分析-ICD10大分類
    4. 3.4.疾病別分析-傷病別分析の比較
  4. 4.まとめ

この記事の概要

■ 前年同月比では、2020年3月よりも2020年4月における医療費・実患者数の減少率が大きい。
■ 疾病別の実患者数ベースで見ると、3月時点でほぼ減少が見られなかった歯科外来や、3月時点で増加傾向にあった生活習慣病の患者数においても、4月時点での前年同月比では大きく減少していた。

条件

2018年4月から2020年4月までの25か月間、継続して在籍をしている約280万人のレセプト分析を実施。
2019年4月と2020年4月で比較し、どういった変化があったのかを調べてみました。
※25か月間継続在籍となっていること、レセプトデータの更新があることから、2020年3月レセプトのデータについては、前回の記事と数値が若干変動している部分もあります。

分析結果

月別医療費の比較

2019年4月と2020年4月の総医療費を比較したところ、前年同月比▲15%でした。
3月における前年同月比が▲4%だったため、3月と比較して4月の方が減少率が大きいという結果になりました。

受療率(実患者数)の比較

続いて、2019年4月と2020年4月における、受療率(実患者数)の差を分析しました。

全体の受療率は前年比 ▲20.9%であり、2020年3月分における前年比 ▲9.8%と比較して、大きく減少していたことがわかりました。

年齢別(10歳刻みの階層毎に分類)の分析においては、全ての年代で昨年度よりも実患者数が減少しており、3月同様に0〜19歳における減少率が最も大きく、▲34%以上という結果でした。

また、60〜70代については、他の階層と比べると減少度合いは低いものの、前年同月比 ▲8%以上となっており、3月の ▲3%未満に比べると大きく減少していました。

 疾病別分析-ICD10大分類

ICD10大分類で疾病別の実患者数を分析した結果、減少数上位の項目すべてにおいて3月よりも4月の方が同年前月比(2019年4月 対 2020年4月)の減少率が大きいという結果になりました。

その中でも、
・J00-J99 呼吸器系の疾患
・K00-K93 消化器系の疾患
・H00-H59 眼及び付属器の疾患
・A00-B99 感染症及び寄生虫症
の患者数が、前年同月比で大きく減少していることが分かりました。

また、3月と比較すると【H60-H95耳及び乳様突起の疾患】が減少率が▲40.5%と、もっとも大きなインパクトになっていることが分かりました。

疾病別分析-傷病別分析の比較

傷病別に分析した結果、風邪で通院した患者数の前年同月比(2019年4月 対 2020年4月)が ▲56.1%と、半数以下になったことがわかりました。3月の減少率 ▲37.6%と比較しても4月でさらに大きく減少しています。

また、歯科外来の実患者数が前年同月比 ▲22.3%と大きく減少しており、3月の減少率 ▲1.9%と比較しても、かなり減少した傾向にあることがわかりました。

緊急事態宣言を受けて、歯科診療が縮小されたり不急の通院が減ったことが影響している可能性が考えられます。

一方で、3月データでは受診数が増加していた生活習慣病、悪性腫瘍、気分障害・統合失調症についても、4月に入ると軒並み減少傾向が見られるため、そのまま通院をフェードアウトしてしまわないよう継続した観察が必要です。

まとめ

今回は、2020年4月のレセプトデータを用いた分析を実施し、3月データで行った同様の分析との差異を調査しました。

緊急事態宣言の発令に伴う外出自粛の本格化により、3月と比較して4月においては患者数の減少が顕著に表れていました。

緊急事態宣言は、2020年5月25日に解除となりましたが、依然として外出自粛が呼びかけられている地域もあり、加入者の受診行動に注意が必要です。

前回の記事でも記載しましたが、今後はさらに異なる動向や結果が見えてくると考えられます。

具体的には、
・手術件数の減少
・治療中患者の治療中断の増加
・外出自粛の本格化に伴い本来治療等で通院すべき対象者の受診控え

などが懸念されます。

これらについては、秋ごろに6月分レセプトまでを含めた分析結果をJMDC STORIESにてご紹介させていただく予定です。

JMDCでは、今回ご案内したように、各保険者様の保有されているレセプトデータを活用した医療費分析のサポートを始め、加入者分析や健診分析なども行っておりますので、保健事業全般の分析でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。


本記事のご感想や今後希望するテーマなどぜひご意見をお寄せください