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【セミナー開催レポート】重症化予防・地域包括ケア推進で成果を上げた長久手市の事例に学ぶ

2021年8月24日(火)に、自治体の保健事業・介護事業のご担当者様を対象に「重症化予防・地域包括ケア推進で成果を上げた長久手市の事例に学ぶ」と題したオンラインセミナーを開催いたしました!
本セミナーでは、愛知県長久手市で疾患予測AIや地域医療DXの活用において実務を統括されたご担当者様にご講演いただきました。

今回の記事では、当日のご講演の内容を抜粋してお届けいたします。

目次[非表示]

  1. 1.長久手市についてご紹介
  2. 2.長久手市の重症化予防プログラム
  3. 3.プログラムの成果
  4. 4.プログラムを振り返って
  5. 5.今後の展望
  6. 6.編集後記

長久手市についてご紹介

長久手市は人口が6万人ほどの都市で、名古屋市と豊田市に挟まれています。2005年の愛・地球博の開催地として有名で、また来年オープンするジブリパークが話題になっています。
長久手市の平均年齢は全国で最も若く38.6歳ですが、国保加入者の年齢構成は他市町村と大きく変わりません。国保加入者数は8,754人、令和元年度の特定健診受診率は54.1%でした。

長久手市の疾患別医療費を見ると、入院では新生物に続き循環器疾患が第2位、外来では糖尿病を含む内分泌疾患と循環器疾患で全体の約3割を占めています。そのため、重症化予防でも特に糖尿病と循環器疾患の施策が非常に重要だと感じていらっしゃるとのことでした。

重症化予防プログラム実施の課題

生活習慣病重症化予防を行っていくにあたり、自治体においては市・専門医・かかりつけ医と協力して事業を進めていくことが重要となります。
長久手市においては以下のような課題があったそうです。

長久手市
・ハイリスク者の効率的な抽出方法が分からない
・医療職の不足、マンパワー不足
・プログラム終了後にも継続的にサポートするために、患者を地域医療に結び付ける体制づくりが必要

専門医
・かかりつけ医から患者が紹介されるときには、入院や透析をしないといけないほど重症であることが多い
・軽症の患者が多く受診されるとマンパワーが不足するため、専門医への紹介基準や医療連携が必要

かかりつけ医
・患者の生活習慣が確認できず、的確な生活指導ができない
・専門医や薬局との多職種連携ができない


長久手市の重症化予防プログラム

「効率的で効果的な事業の実施」「ICTによる医療従事者間で統一した情報共有」「保健事業と地域医療の連携」の3つのポイントを軸に、長久手市・愛知医科大学病院・かかりつけ医・地域の薬局・JMDCが連携し、ハイリスク対象者を総合的にサポートできる体制を構築しました。

本プログラムで対象となった方は、AIによって3年以内に入院や手術となる可能性が高いと予測されたハイリスク者100名のうち、医療機関未受診の方・市内のクリニックをかかりつけ医としている人です。その後かかりつけ医にプログラム参加に適する人を選定いただき、本人同意をとった上で最終的に9名が参加したとのことです。

3か月のプログラム期間中は、毎月の専門職介入に加え、専門医が作成したお薬の投与計画と個別診断基準(かかりつけ医から専門医へ紹介する際の基準となるもので、対象者ごとに具体的な検査の数値が記載されている)によって、かかりつけ医と専門医の連携を強化されたとのことです。

プログラムの成果

対象者全体の結果では、体重は一人を除いて皆減少し、平均マイナス2.9kgと高い効果が出ました。また、収縮期血圧やLDLコレステロール、中性脂肪においても改善が見られました。

専門医からの声
・対象者の検査値の大幅な改善を見て、多職種介入の意義を感じた。
・患者指導自体も重要だが、短期間での効果を考えると対象者の意識の変化が要因として考えられるのではないか。
・これだけの介入があると、対象者の負担が大きいことを感じる。(アプリ入力など)
・かかりつけ医の先生が意識高く血糖管理をされていることが分かり、感謝したい。

かかりつけ医からの声
・食事アプリで患者の食事内容が確認できて大変参考になった。高齢患者で思ったより脂っこい食事を取られていたり、量を食べていたりすることが分かった。
・栄養士の指導内容を見て、診療の参考になった。
多職種で介入してもらうことで、患者の治療意欲が高まっている。
・モチベーションの高い患者には相性の良い事業だと感じる。生活改善に繋がっている印象。
・アプリ入力は患者の負担が大きく、継続が今後の課題

     

プログラムを振り返って

手ごたえ・良かった点として、「プログラムの効果が出たこと」、「自治体と医師との関係が構築でき、本事業以外の案件も相談しやすくなった」ことが挙げられました。
特に医師との関係においては、医療費や国保加入者の状況をデータを用いて説明したら興味をもって話を聞いてもらえたことや、参加された医師11名全員からプログラムに対して賛同を得られたことが大きかったとのことです。

反対に苦労した点は、かかりつけ医への説明と仰っていました。かかりつけ医の中には、AIで出された数値がどういう経緯で出されたかを理解しづらかったり考えに合わなかったりする先生もいらっしゃったそうです。

     

今後の展望

プログラム終了後のサポートとして対象者へ定期的に電話等でフォローしたり、事業に参加していただけるかかりつけ医を増やしたりしていきたいと考えているとのことです。

     

編集後記

地域の様々なステークホルダーを巻き込んだ施策は自治体(国保)ならではの取り組みだと感じました。一方で、健康課題はどの保険者様でも概ね共通していますので、国保以外の保険者様でも参考になる部分もあるのではないかと思います。

長久手市では「地域の困りごとは、地域で解決する」を目標として掲げているとのことで、地域と連携した取り組みを今後も期待し注目していきたいと思います。

末尾になりますが、セミナーにご登壇いただきました長久手市のご担当者様に厚く御礼申し上げます。

本記事のご感想や今後希望するテーマなどぜひご意見をお寄せください