【分析事例】生活習慣病重症化予防事業の効果検証

多くの保険者様が重症化予防事業を実施し、効果検証まで行われています。皆さまはどのような方法で行っているでしょうか。
本来は健診値の改善効果まで観察することが望ましいですが、短期的に健診値の劇的な変化は見えづらいことから受診歴をアウトカムとしている場合が多いのではないでしょうか。

今回は全国外食産業ジェフ健康保険組合様で実施したJMDCの生活習慣病重症化予防通知の効果検証の事例をご紹介します。この事例では、レセプトデータと健診データを掛け合わせて健診値の変化を観察しました。
全国外食産業ジェフ健康保険組合様では、短期的な医療機関受診率の変化だけでなく中長期的な健診値への効果を事業主に示すことで、事業主とコラボした重症化予防事業の推進を視野に入れているそうです。

全国外食産業ジェフ健康保険組合様の紹介

全国外食産業ジェフ健康保険組合は外食産業で唯一の総合健保で、チェーン展開をしている外食産業の事業所が集まっています。令和3年9月末現在の加入事業所数304社・被保険者118,895名、被扶養者55,120名が加入しています。
2020年度の報告では、特定健診受診率は76％、特定保健指導実施率は5.1%です。

条件

・2019年3月に実施した生活習慣病重症化予防通知の対象者（被保険者・被扶養者）
・対象健診期間：2019年度健診
・通知の抽出条件は以下

分析結果

2019年3月に重症化予防通知を送付した3,804名のうち、2020年度または2021年度に健診を受診した人は2,728名いました。

2,728名の対象者を、通知後半年以内に生活習慣病で医療機関を受診しているかで「受診群」「未受診群」に分け、通知前健診（受診勧奨時の健診値）と最新健診（2020年度・2021年度いずれか最新の健診値）で健診値の変化を比較しました。

1. 血糖

HbA1cの平均値を比較したところ、受診群では-9%、未受診群では+5%でした。
また空腹時血糖の平均値は、受診群で-17%、未受診群で-8%でした。

さらに改善・悪化者割合を比較した結果、HbA1c、空腹時血糖ともに未受診群より受診群の方が改善者割合が高いことがわかりました。

2. 血圧

次に血圧の平均値を比較しました。
収縮期血圧では受診群では-16%、未受診群では-6%という結果が得られました。
同様に、拡張期血圧でも受診群は-16%、未受診群が-5%でした。

また、改善・悪化者割合の比較においては、収縮期血圧、拡張期血圧ともに、受診群で改善者の割合が高いという結果が得られました。

3. 脂質

脂質に関しては中性脂肪、HDL、LDLの平均値を比較しました。
中性脂肪では、受診群は-33%、未受診群が-47%でした。
また、HDLでは受診群が+21%、未受診群が+36%、LDLでは受診群で-10%、未受診群で-4%という結果が得られました。

改善・悪化者割合の比較では、LDLで未受診群より受診群の方が改善者割合が高かったですが、中性脂肪とHDLでは受診群、未受診群で大きな違いは見られませんでした。

以上の結果より、重症化予防通知による医療機関受診は血糖・血圧の健診値改善に効果があることが示唆されました。　　

全国外食産業ジェフ健康保険組合様のコメント

当健保では、事業所一つに大人数いる業態ではないため保健事業がやりにくく、効果も上がりにくい状況でした。
コロナ禍以前は事業所訪問をして、保健事業について説明していましたが、その際に「実際に医療機関への受診勧奨をして健康状態は改善しているのか」と聞かれることがありました。
しかし、具体的なデータがなく事業所へ保健事業の効果を示せなかったため、ただやっているだけという状況でした。
今回この効果検証レポートによりデータで健診値改善効果を示すことができたため、今後より確信をもって重症化予防事業やコラボヘルスを進めていけるのではないかと考えています。

一方で、重症化予防事業をやっていく中で虚血性心疾患で亡くなられた方が出てきました。
その方を追跡すると、2年ほど前から重症化予防通知を出していましたが医療機関を受診していなかったことがわかりました。
現在は機関誌にもこの事例を出し、重症化予防通知が届いたら必ず開封して医療機関を受診するように呼びかけています。
また、事業主からも従業員に対して同様の呼びかけをお願いしていきたいと考えています。

まとめ

今回の効果検証により、重症化予防通知後に医療機関を受診することで血糖・血圧の改善に寄与することが示唆されました。JMDCでは以下のような重症化予防通知を提供しており、対象者抽出から効果検証までサポートいたします。

ご興味のある保険者様はお気軽にお問い合わせくださいませ。