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健康経営の基本をおさらい!認定に向けて保険者が協力できること


健康経営とは、従業員の健康管理・健康増進を経営的な課題として捉え、戦略的に取り組むことです。健康保険組合をはじめとする保険者も、事業主にとってもっとも身近な健康づくりのプロフェッショナルとして健康経営に協力する例が多数見られます。
今回は、保険者が押さえておきたい健康経営の基礎知識と、主要な認定制度「健康経営優良法人」の認定に向けて保険者としてサポートできることを解説します。



目次[非表示]

  1. 1.健康経営の背景~超少子高齢化社会で求められる人的資本経営
  2. 2.認定制度「健康経営優良法人」とは 部門と認定メリット
  3. 3.手続きは前年度から!健康経営優良法人の認定スケジュール
    1. 3.1.大規模法人部門
    2. 3.2.中小規模法人部門
  4. 4.保険者との連携は不可欠 事業主の健康経営に協力できること
    1. 4.1.データの共同利用を含むコラボヘルスの推進
    2. 4.2.健康宣言事業への参加のサポート
  5. 5.おわりに


健康経営の背景~超少子高齢化社会で求められる人的資本経営


健康経営が重視される背景には、国内の超少子高齢化と人口減少、それによる労働力不足の問題があります。企業においては、深刻化する人手不足に加え、従業員の高齢化による健康リスクの増大、すなわち、従業員の病気やけがによる欠勤(アブセンティーズム)や離職、出勤時の生産性低下(プレゼンティーズム)がもたらす損失が重要な経営課題に。

例えば、2017年に横浜市が東京大学政策ビジョン研究センターと共同で実施した調査では、同市の中小企業における年間の労働生産性損失が、従業員1人当たり76.6万円にも上ることが明らかになりました。


こうした課題に対し、企業は最低限の健康管理だけでなく、より積極的に従業員の健康へ投資するべきである──という考え方が、健康経営の根底にあります。健康経営の取り組みは、アブセンティーズムやプレゼンティーズムなどの損失低減だけでなく、従業員を大切にする企業風土に対する従業員満足度の向上にもつながります。従業員満足度はモチベーションや従業員エンゲージメントに好影響を及ぼし、生産性向上、人材定着率の改善にも効果を発揮。さらに健康経営の取り組みが対外的に認知され、企業イメージがアップすれば、優秀な人材獲得、投資対象としての魅力向上、売上アップにつながる可能性もあります。

実際に、日本経済新聞社らが運営するスマートワーク経営研究会による調査レポート「働き方改革と生産性、両立の条件」によると、健康経営を実施している企業はROA(総資産経常利益率)とROS(売上高営業利益率)のいずれについても、実施後に中長期スパンで利益率が上昇していることが明らかになっています。

このように、これからの時代に向けて企業が長期的、継続的に発展するために、健康経営は不可欠となっているのです。従業員の健康を資本として捉え、健康への投資を将来的な企業価値の向上につなげる健康経営は、人的資本経営の考え方にも直結するといえるでしょう。



認定制度「健康経営優良法人」とは 部門と認定メリット


健康経営促進のため、国内では健康経営に取り組む企業を顕彰する認定制度が数多く設定されています。その主要なもののひとつが、経済産業省(以下「経産省」)と日本健康会議による「健康経営優良法人」制度です。

認定は大きく分けて「大規模法人部門」「中小規模法人部門」の2部門に分かれており、大規模法人部門の上位500社までは「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位500社までは「ブライト500」の冠も付与されます。健康経営優良法人に認定されると、社内外に対する企業イメージアップにつながるのはもちろん、自治体による入札審査での加点、金融機関による融資優遇など、さまざまなインセンティブも得られます。


2023(令和5)年3月認定分では申請数が1万7,000件以上に上り、大規模法人部門では2,676法人、中小規模法人部門では14,012法人が認定を受けています。


手続きは前年度から!健康経営優良法人の認定スケジュール


健康経営優良法人は毎年3月頃に認定されますが、申請などの手続きは前年からスタートします。大規模法人部門と中小規模法人部門 *1、それぞれの申請・認定フローを、健康経営優良法人2023の認定スケジュールをもとに解説していきましょう。
(2024年認定に向けたスケジュールは経産省のページをご確認ください)

*1 従業員数により、どちらの部門に該当するかが変わります。基準となる従業員数は、法人分類や業種によって異なります。



大規模法人部門


大規模法人部門では、経産省による健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)への回答をもって、健康経営優良法人の認定に申請できます*2。調査結果をもとに、健康経営優良法人の要件達成状況が判定されます。また、回答提出後に認定申請料(88,000円(税込/件)を支払う必要があります。

*2 調査項目の中に健康経営優良法人認定への申請有無についての設問があり、申請を希望する場合はその旨を回答します。


中小規模法人部門


中小規模法人部門では、加入している保険者が実施する健康宣言事業(後述)への参加が申請の条件になります*。その上で「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書」に自社の取り組みを記載し、申請受付期間内に提出。提出後に認定申請料(16,500円(税込))の支払いが必要です。

*3 加入している保険者が事業を行っていない場合は自治体が実施する事業への参加で代替できます。どちらも実施していない場合は、自社独自の健康宣言の実施で代替可能です。



保険者との連携は不可欠 事業主の健康経営に協力できること


健康経営は基本的には事業主側の取り組みですが、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定基準に「健保組合等保険者との協議・連携」が挙げられるなど、保険者の協力も欠かせません。保険者にとってもデータヘルスをはじめとする保健事業上のメリットが期待できるため、積極的にコミットしたいところです。主な方法としては、以下の2つが挙げられます。


データの共同利用を含むコラボヘルスの推進


保険者が蓄積してきた保健事業のノウハウや医療・健康データを事業主と共有し、共同で健康づくりに取り組む「コラボヘルス」を推進します。


健康経営優良法人の認定要件には「ヘルスリテラシーの向上」「具体的な健康保持・増進施策」(食生活の改善、運動機会の増進、女性の健康保持・増進など)がありますが、これらは事業主が対応してきた労働安全衛生法上の健康管理を超えた内容で、事業主側にノウハウやリソースがない場合も少なくありません。これに対し、コラボヘルスの体制を整えた上で、上記の要件に関わる健康プログラムを保険者と事業主が共同で実施すれば、例えば、主な運営は保険者、主な費用負担と実施環境の整備は事業主が行う、といった役割分担をしながら、効果的に運営できるようになります。


また、認定要件の「健康経営の具体的な推進計画」「健康経営の実施についての効果検証」などの要件に関わるのが、データの共同利用です。事業主が保有している主なデータには、労務データや定期健診データ、ストレスチェック結果のデータなどがありますが、コラボヘルスで保険者とデータを共同利用することにより、保険者が実施する特定健診・特定保健指導やがん検診などのデータも活用可能に。自社の健康課題をより的確に把握した上で適した健康づくり施策を企画したり、施策の費用対効果を客観的に評価したりできるようになります。


健康宣言事業への参加のサポート


事業主が中小規模法人部門に該当する場合は、事業主が健保連または協会けんぽの健康宣言事業に参加できるよう、保険者の協力が必要です。現在、協会けんぽによる健康宣言事業は都道府県支部単位、健保連による事業は都道府県連合会単位で行われています。例えば、健保連愛知連合会における健康宣言事業参加*4 の流れは以下の通りとなっています。


  1. 事業主が所定の健康宣言書を保険者(健康保険組合)を経由して健保連愛知連合会に提出。
  2. 健保連愛知連合会から「健康宣言チャレンジ認定証」が発行され、保険者経由で事業主が受け取る。
  3. 事業主は、健康宣言に基づいた健康経営の実施結果を、保険者経由で健保連愛知へ報告する。

この一連の流れの中で、保険者は窓口を担うのはもちろん、健康宣言の策定や施策の実行にも積極的に協力することが求められます。

*4 東京都所在の保険者に加入している法人の場合は、健康宣言を策定するだけでなく、実際の健康経営への取り組み状況をもとに、協会けんぽ東京支部または健保連東京連合会から健康優良企業「銀の認定」を受けることが、健康経営優良法人に申請する条件となります。


おわりに


事業主による健康経営と保険者による保健事業は、最終的なゴールこそ異なるものの、従業員・加入者の健康増進を目指している点は一致しています。事業主と密に連携して施策の実効性を高めるためにも、コミュニケーションにおける共通の土台として、「健康経営優良法人」制度をはじめとする健康経営の基礎知識はしっかりと押さえておきましょう。



(参考URL)
健康経営の推進について 令和4年6月 経済産業省ヘルスケア産業課
企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)
労働生産性損失は年間 76.6 万円(従業員一人当たり)!健康リスクと労働生産性損失の関係が明らかに!  横浜市経済局経営・創業支援課
「健康経営」は人的資本経営の土台 - ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
健康経営優良法人認定制度(METI_経済産業省)
ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
認定申請料のお支払について 健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)
令和4年度 健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)
健康経営優良法⼈2022(中⼩規模法⼈部⾨)認定申請書
データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン 厚生労働省保険局
「健康宣言事業」の実施に向けたご協力のお願い 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
『健康宣言』をしましょう! _ けんぽれんあいち
「健康経営」を健保がサポートします – 中部電力健康保険組合

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