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健康スコアリングレポートとは?スコアの見方とコラボヘルスでの活用方法


健康スコアリングレポートは、各健康保険組合の加入者の健康状態や医療費を可視化した公的なレポートです。コラボヘルスの推進に当たり、事業主と共通認識を持つためのコミュニケーションツールとして広く活用されています。
本記事ではレポートの見方や活用方法について、好事例を交えて紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.健康スコアリングレポートの目的
  2. 2.レポートの見方~種類・指標・スコア化の方法
    1. 2.1.保険者単位のスコアリングレポート
    2. 2.2.事業主単位の健康スコアリングレポート
  3. 3.【事例】レポートを活用してコラボヘルスを推進
    1. 3.1.事例1:支援金の加算対象となった危機感を事業主と共有
    2. 3.2.事例2:総合健保で事業所に特定保健指導の協力を得る
  4. 4.注意点~レポートでカバーできない集計データも
  5. 5.おわりに


健康スコアリングレポートの目的

引用元:健康スコアリング活用ガイドライン 2023年度版(2022年度実績分)
https://kenkokaigi.jp/doc/2024/scoringreport/2403250104.pdf



健康スコアリングレポートは厚生労働省・経済産業省・日本健康会議が連携して行っている施策で、社会保険診療報酬支払基金に提出・報告されたレセプトデータや特定健診データ、NDBデータに基づき年に1回作成、通知されます。

「健保組合と企業の健康通信簿」ともいえる同レポートでは、各健保組合の加入者の健康状態や医療費、予防・健康づくりへの取り組み状況が全組合平均・業態平均などと比較してスコア化されます。図表を用いながら経年変化も含めてわかりやすく示されており、加入者全体のおおよその傾向や健保組合特有の健康課題の把握に役立てられます。

レポートの目的は、企業と健保組合が加入者(従業員)やその家族の健康に対して共通の問題意識を持ち、コラボヘルスの活性化につなげること。実際に、2022年度版レポートについては単一健康保険組合の70%以上、総合健康保険組合の50%以上が事業主と共有しており、コラボヘルスに広く活用されています。さらに2023年度からは健康経営優良法人認定に関わる健康経営度調査と健康スコアリングの連携*も開始され、より存在感を増しているといえます。


*健康経営度調査では「健保組合による特定健診・特定保健指導の実施率を把握しているか」「実施率は●%か」を回答する設問があります。この設問の評価に、健康スコアリングレポート作成に用いる「健康スコアリングシステム」によって作成した記号単位実施率のデータが利用されています。


レポートの見方~種類・指標・スコア化の方法

健康スコアリングレポートには保険者単位のレポートと事業主単位のレポートがあります。


保険者単位のスコアリングレポート

保険者単位のスコアリングレポートは「レポート本紙」と「参考資料」に分かれています。
レポート本紙では大きく5つの指標について、各健保組合における加入者全体のデータを全組合平均・業態平均・基準年度と比較してスコア化し、経年変化を示しています。


<レポート本紙>


指標

内容

イメージ
※『健康スコアリング活用ガイドライン 2023年度版(2022年度実績分)』より抜粋

特定健診

特定健診・特定保健指導の実施率

健康状況

肥満・血圧・肝機能・脂質・血糖の5項目における生活習慣病リスク保有者の割合

生活習慣

喫煙・運動・食事・飲酒・睡眠の生活習慣5項目における適正な生活習慣を有している者の割合

医療費

加入者1人当たり医療費(性・年齢補正後標準医療費との比較)の推移

後発医薬品使用割合

後発医薬品の使用割合(数量シェア)の推移


参考資料では、以下の各指標について被保険者・被扶養者別、男女別、年代別のデータが示されます。


<参考資料>

  • 特定健診実施率
  • 特定保健指導実施率
  • 特定保健指導の対象者割合
  • 肥満・血圧・肝機能・脂質・血糖の5項目に関するリスク保有者の割合
  • 喫煙習慣
  • 運動習慣
  • 食事習慣
  • 飲酒習慣
  • 睡眠習慣
  • 医療費の詳細
  • 経年データ(特定健診・特定保健指導、健康状況生活習慣は過去3年分、医療費は過去5年分)


事業主単位の健康スコアリングレポート


特定健診の対象となる被保険者数50名以上の事業所に対しては、事業所単位(被保険者証等記号ごと)の健康スコアリングレポートも通知されます。保険者単位のレポートと同じような形式で、事業所ごとの従業員の特定健診・特定保健指導実施率、健康状況、生活習慣が業態平均などとの比較でスコア化され、経年変化とともに示されます。



【事例】レポートを活用してコラボヘルスを推進


事例1:支援金の加算対象となった危機感を事業主と共有


A健保組合では母体企業の執行役員を兼任する理事長から、事業主側の役員会議で健康スコアリングレポートを使って健康状態の全体像を提示しています。2019年度は後期高齢者支援金の加算対象となっていたため、制度の趣旨や具体的な納付額を併せて説明し、特定健診・特定保健指導実施率を向上させる必要性を共有しました。

これを受け、以後は事業主側から特定健診を案内する際「特定保健指導などを受ける際の離席は認める」といった一文が通知に追記されることに。被保険者が就業時間中も特定保健指導を受けやすくなりました。また健保組合側では被扶養者も含む実施率向上のため、スマートフォンでの遠隔特定保健指導や、ドラッグストアで管理栄養士の面談を受けられる仕組みなどを新たに導入しています。

これらの結果、被扶養者の特定健診実施率は20%台から40%台後半まで向上。事業主側でもグループ全体で健康経営優良法人「ホワイト500」を目指すようになるなど、気運が高まっています。


事例2:総合健保で事業所に特定保健指導の協力を得る


事業主との連携に苦慮してきた総合健保のB健保組合では、健康スコアリングレポートに加えて事業所ごとの健診結果(血糖・血圧・脂質)をまとめた「事業所健康レポート」を独自に作成し、希望する事業所に配布して健康課題を共有。併せて事業主向けの「健康経営セミナー」を開催し、参加事業所を中心に個別訪問して対面での説明も行っています。
これらの取り組みにより、事業所と健保組合が役割分担しながらさまざまな保健事業を実施できるようになりました。例えば、特定保健指導の受診勧奨案内は事業所から直接被保険者に送付するように。また特定保健指導の会場として事業所内の会議室を利用できるようになりました。その結果、一部の事業所では15%程度だった受診率が50〜60%程度まで向上しています。


注意点~レポートでカバーできない集計データも


大まかな健康課題の確認には有用な健康スコアリングレポートですが、単独では把握しきれないデータも少なくありません。例えば、以下については別途集計、分析が必要です。


<健康スコアリングレポートでは確認できないデータ>

  • 部門別、職種別、エリア別などでの集計データ
  • 事業主単位の医療費、後発医薬品使用割合(レセプトに関わるデータ)
  • 40歳未満の健康状況、生活習慣の状況(特定健診に関わるデータ)


また、事業所単位の健康スコアリングレポートは被保険者証等記号と一対一で対応する事業所に対して作成されます。したがって、1つの記号に複数の事業所が紐づけられていたり、記号ではなく所属コードで事業所を区分していたりする場合は活用が困難です。
より詳細な分析を行うためには、民間事業者のデータ分析サービスの利用も検討するとよいでしょう。

<参考:JMDCの「事業所別レポート」と健康スコアリングレポートの比較>



おわりに


健康スコアリングレポートは事業主との情報共有を前提にわかりやすく作成されており、現状把握の第一歩として非常に使いやすいツールです。不足している分析項目については民間事業者のデータ分析サービスも利用して補完しつつ、積極的にコラボヘルスへ活用しましょう。



(参考情報)
健康スコアリング活用ガイドライン 2023年度版(2022年度実績分)

事業主単位の健康スコアリングレポート活用の手引き 2023年度版(2022年度実績分)

2023 年度健康スコアリングレポートの実施方針

事務連絡「2023 年度版健康スコアリングレポートの作成について」(厚生労働省保険局保険課) 令和5年度 健康経営度調査


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