
第3期データヘルス計画の中間評価・中間見直し|実務ポイントを解説
2024年度にスタートした第3期データヘルス計画は、いよいよ折り返しの時期を迎えます。令和8年度(2026年度)12月頃から令和9年(2027年)3月末にかけて、「中間評価」と「中間見直し」が実施される予定です。
JMDCでは「第3期データヘルス計画 “成果につながる” 中間見直しの進め方」を開催。本記事では、現時点で公表されている公的資料に基づき、中間見直しの基本、STEP1〜3の整理ポイント、健康保険組合連合会(以下、健保連)が公表する「ポスト2025」の方向性といった論点を整理しています。
中間見直しに向けて押さえておきたい情報を整理し、これからの準備に活かせる内容です。
データヘルス計画とは?背景と第3期の特徴

データヘルス計画とは、健診やレセプトなどのデータを活用し、科学的根拠に基づいて保健事業を計画・実施・評価するための仕組みです。すべての保険者に策定が義務づけられています。
第3期では、企業による人的資本投資や健康経営の流れを受け、企業でもデータヘルス計画の情報を活用することが期待されている点が新しい特徴です。
中間評価・中間見直しとは?まず押さえたい基本

データヘルス計画は現在、第3期の2年目にあたり、来年度には中間評価・中間見直しの実施が予定されています。両者は目的の異なるプロセスです。
● 中間評価(前半3年間の“振り返り”)
第3期データヘルス計画の前半3年間で実施してきた取り組みを振り返り、健康課題や事業目的の達成状況、事業の進捗、評価指標の達成度を客観的に把握します。
● 中間見直し(後半3年間の“再設計”)
中間評価で把握した成果や課題を基に、後半3年間の事業内容の修正、目標・評価指標の更新、そして必要に応じた STEP1〜3 の見直しを行う工程です。
なお、厚生労働省の手引きでは 「健康課題の分析をやり直すことは必須ではない」とされていますが、後半の事業計画の精度を高めるためには、可能な範囲で最新の傾向を把握しておくことが望ましいと、JMDCとしては考えています。
いつ何を行う?中間評価・見直しスケジュール

社会保険診療報酬支払基金|2025年度 データヘルス研修会 データヘルス計画に関する分析と 今後の展望 より引用
社会保険診療報酬支払基金の資料では、以下の通り示されています。
- 中間評価・見直し:令和8年12月〜令和9年3月末
- 修正反映期間:令和9年4月〜6月
第3期データヘルス計画|STEP1〜3の見直しポイント
本セクションでは、厚生労働省「データヘルス計画作成の手引き(2023年6月改訂)」をもとに、中間見直しで押さえておきたい STEP1〜3 の見直しポイントを整理します。
【STEP1:現状把握(基本情報・保健事業の実施状況・基本分析)】
STEP1は以下の3つで構成されます。
- 基本情報の整理(加入者数、組織体制など)
- 保健事業の実施状況
- 基本分析(健診・レセプト・医療費等の分析)
中でも STEP1-3「基本分析」が重要で、手引きでは、以下の観点での分析が推奨されています。
- 対策可能な疾病の把握
- 医療費構造の把握
- 高リスク者の状況
- 健診・保健指導の実績
- 健康行動の傾向

ただし、分析方法やアウトプット形式は保険者に委ねられており、分析方法に悩む場合は、支払基金や健保連の提供する研修・支援を必要に応じて活用することが有効です。
参考)
社会保険診療報酬支払基金|2025年度 データヘルス研修会 データヘルス計画に関する分析と 今後の展望
【STEP2:健康課題の抽出と優先順位付け】

STEP1の分析結果をもとに、健康課題を整理し優先順位をつけます。判断の視点は以下の通りです。
- 対象者数の大きさ
- 医療費インパクト
- 悪化リスクの高さ
- 改善可能性(保健事業による効果が期待できるか)
- 実行可能性
共通評価指標 や 後期高齢者支援金の加算・減算制度の観点も優先度の検討に役立ちます。
【STEP3:事業設計と目標・評価指標の設定】

STEP3では、後半3年間に向けて、以下の項目を整理します。
- 事業全体の目的
- 個別保健事業の設定
- 対象者・方法の整理
- アウトカム/アウトプット/プロセス/ストラクチャーの設定
中間見直しでは、これまでの「成果の把握」と、可能であれば「最新の健康課題の状況をデータで把握」した上で、 後半3年間で強化・改善すべき事業を検討します。
健保連「ポスト2025」、女性や若年層対策等への取組をふまえた重点領域
中間見直しでは、健保連が公表している「ポスト2025(健康保険組合の提言)」や新たな保健事業に対する積極的な取組なども重要な検討材料となります。
セミナーでは、これらの資料をもとに、後半3年間で保険者が重点的に取り組むべき領域について解説しました。
■「ポスト2025」健康保険組合の提言に示された5つのチャレンジ

2025年度データヘルス研修会 健康保険組合連合会組合サポート部|データヘルス推進に向けた取組等について 「ポスト2025」健康保険組合の提言抜粋より引用
健保連が示す「ポスト2025」の方針では、保険者が今後重点的に取り組むべき方向性として、次の5つのチャレンジが掲げられています。
- 多様な働き方に対応した保健事業の充実強化
- かかりつけ医との連携
- 健康保険組合の発信力強化
- データ分析強化による加入者サービスの充実
- デジタル化による健康保険組合業務改新
■女性の健康、若年層等に対する2030年までの積極的な取組

さらに近年は、女性の健康や若年層対策等に関する新たな保険事業が示され、2030年までの具体的な数値目標も設定されています。
| 取組 | 2024年 | 2030年 |
| 女性特有の健康課題等・性差に応じた健康支援 | 952健保 | 可能な限り全組合へ |
| ICTを活用した保健事業 | 804健保 | 全組合達成 |
| メンタルヘルス対策 | 654健保 | 1150健保 |
| 40歳未満健診データの活用 | 557健保 | 全組合達成 |
| ロコモティブシンドローム対策 | 194健保 | 500健保へ |
これらの動向は、中間見直しで重点領域を検討する際の重要な判断材料となり、後半3年間の事業検討に役立つ視点を得ることができます。
【STEP4:事業評価と見直し】

STEP4では、保健事業の達成度を 毎年・中間・期末のタイミングで評価します。
アウトカム・アウトプット指標を用い、以下の項目を整理します。
- 実施状況
- 実施時期
- 成功要因
- 課題・阻害要因
年度途中で、新たな事業を開始したり、既存の事業に変更があった場合は、中間評価・中間見直しのタイミングで計画の修正が必要になります。
評価指標については、本質的な長期目標(予防効果など)と、毎年評価する短期的な目標を分けて設定することが重要です。
まとめ:データヘルス計画の中間評価・中間見直しで行うこと

第3期データヘルス計画では、令和8年度12月頃〜令和9年3月末にかけて中間評価 と 中間見直し を実施し、前半3年間を振り返ったうえで後半の計画を検討します。
- 中間評価:前半3年間の進捗・健康課題を振り返る
- 中間見直し:結果を踏まえて STEP1〜3 を更新し後半3年間の計画を整える
- 重点領域の検討:ポスト2025(健保連)を参考にする
中間見直しでは、分析の進め方や事業設計の整理など、限られた期間の中で多くの検討が必要になります。
JMDCでは、保険者様の状況に合わせて、
- データヘルス計画全体の整理・見直しサポート
- 分析レポートの作成支援
- 費用や支援内容が確認できる資料のご提供
など、段階に応じたサポートをご用意しています。
以下のフォームよりお気軽ににお問い合わせください。


