catch-img

後期高齢者支援金加算・減算制度 2021年度改定までの経緯を振り返り

2021年度に後期高齢者支援金加算・減算制度が改定され、評価項目や配点が変更となりました。
はじめに、今回の改定に至るまでの制度の歴史を振り返ります。

目次[非表示]

  1. 1.加算・減算制度の歴史
  2. 2.さいごに


加算・減算制度の歴史

国民皆保険制度は1961年に発足しました。当時の高齢者割合(65歳以上人口)は6%でしたが、近年日本の高齢化は加速し2020年の高齢者割合は29%に達しています。同時に、医療費収入を支える生産年齢人口も減少しています。
60年前に成立した国民皆保険制度は、高齢者割合が高い現代には適合しておらず、医療保険制度の財政状況がひっ迫しているのが現状です。そのため、制度維持のために様々な改革が行われてきました。

後期高齢者支援金を健康保険組合が負担する後期高齢者医療制度は、2008年に開始されました。
健康保険組合はそれまで、生産年齢人口の減少や高齢化による経営収支の悪化を職域保険自己負担割合の段階的引き上げにより解消していましたが、後期高齢者医療制度始まったことで再び赤字となる組合が増加しました。

また同年には、将来の医療費抑制を目的とした特定健診・特定保健指導がスタートしました。

その後も高齢化の影響による医療費の増加は止まらず、また特定健診・特定保健指導の実施も伸び悩みを見せたため、保険者の努力をより促すことを目的として後期高齢者支援金の加算・減算制度が2013年に導入されました。
当初の加算・減算制度は全保険者が対象で、特定健診・特定保健指導の実施率のみが評価項目でした。また、特定健診・特定保健指導を実施していない(実施率0.1%未満)保険者に0.23%の加算するという方法でしたが、実際に加算に該当する保険者はほとんどありませんでした。

また、2015年に医療保険制度改革法が成立し、国民健康保険の運営が市町村から都道府県へ移管されました。
同時に厚生労働省が推進する「データヘルス」や経済産業省が推進する「健康経営」が両輪の取り組みとして開始され、保険者の負担は更に増大しました。

そして、2018年度より市町村国保は保険者努力支援制度で対応する体制となったため、加算・減算制度の対象が健康保険組合と共済組合のみに変更されました。
この改定により、0.23%だった加算が上限10%となり、特定健診・特定保健指導の実施率の基準も厳しくなりました。この点は、特定健診・特定保健指導のみを評価の指標とせず総合評価とすることで救済措置が取られました。

さらに、総合的な保健事業の取り組みを推進するため、加算・減算制度は2021年度に見直されました。
今回の改定で保険者は保健事業の結果を出すこと、そして効果検証をしっかりと行うことがいっそう求められるようになりました。
加算・減算指標は保険者が取り組むべき事業の実質的な指標となったのです。

  

さいごに

ここまで、後期高齢者支援金 加算・減算制度の沿革を見てきました。

次回の配信では2021年度改定の内容や保険者の皆さまが取り組むべき保健事業について、詳しくご説明する予定です。

本記事のご感想や今後希望するテーマなどぜひご意見をお寄せください