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協会けんぽDXとは?けんぽアプリと電子申請が示す“PUSH型”保険者機能の全体像

協会けんぽは、令和8年1月「けんぽDX」の取り組みを本格始動したと発表しました。単に申請手続きや加入者への情報提供を電子化するだけでなく、4,000万人規模の加入者との接点を再構築するとともに、保険者業務を抜本的に効率化する大々的な取り組みです。

本記事では、健康保険組合や共済組合など、協会けんぽ以外の被用者保険も押さえておきたい「けんぽDX」の全体像を解説します。

 


「けんぽDX」の概要

全国健康保険協会「協会けんぽDXについて(電子申請、けんぽアプリ)」より抜粋

 

「けんぽDX」では、加入者4,000万人・280万事業所と協会けんぽが直接つながり、加入者一人ひとりの健康をデジタル技術で支える大規模なプラットフォームの構築を目指しています。

 

特徴は、従来の医療DXにおける「PULL型」支援を補完する形で、加入者へ積極的にアプローチする「PUSH型」支援を行うこと。協会けんぽによると、医療DXは医療機関や保険者、自治体などがデータをもとに連携し、加入者(国民)が集約された情報を自ら取得することで自身の予防・健康づくりに活用する「PULL型」支援が想定されているといいます。これに対し、協会けんぽが推進する「けんぽDX」が掲げているのは、独自のアプリを通じ、保険者が加入者個々人に対して最適なタイミングで情報やサービスを届け、予防・健康づくりの“お節介”を焼く「PUSH型」、いわば、より「攻め」の姿勢による支援です。

2026年2月現在、「けんぽDX」の具体的なサービスとしては「電子申請サービス」と「けんぽアプリ」が展開されています。

 

【電子申請サービス】ほぼすべての給付金申請をデジタル化

全国健康保険協会「協会けんぽDXについて(電子申請、けんぽアプリ)」より抜粋

 

電子申請サービスは、加入者の利便性向上・負担軽減と、協会けんぽの業務効率化を図る目的で開始されました。政府の「デジタル・ガバメント実行計画」や、その後継となる「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を想定した事業でもあり、「行政サービスの100%デジタル化」「行政手続きにおける書面・押印・対面の見直しとオンライン化」の達成を目指した取り組みであると説明されています。


対象者・対象の申請|マイナンバーカード所持が条件

全国健康保険協会 広島支部「協会けんぽDX(電子申請サービス、けんぽアプリ)について(概要版)」より抜粋

 

電子申請サービスの対象者は被保険者、被扶養者(特定健診の受診券発行など一部申請のみ)、被保険者・被扶養者の申請を代理する社会保険労務士(保健事業は除く)です。また、被保険者と被扶養者は申請時にマイナンバーカードで本人確認が行われるため、マイナンバーカードの所持が利用条件となっています。

上図の通り、給付金関係の申請書のほとんどが電子申請の対象です。


利用方法|審査状況のリアルタイム確認も

全国健康保険協会 広島支部「協会けんぽDX(電子申請サービス、けんぽアプリ)について(概要版)」より抜粋

 

電子申請は、協会けんぽのWebサイトまたは「けんぽアプリ」からアクセスできる専用サイトで行います。アイコンから希望の申請書を選択し、マイナンバーカードで資格情報を取得した後、申請情報を入力して必要な添付書類を電子ファイルでアップロードすると、申請が完了します。

また、給付金などの申請時には、同サイト上で審査状況(受付・審査中・審査完了・返戻)をリアルタイムで確認できます。申請内容の不備で返戻となった場合は、返戻理由のお知らせと申請ファイルが電磁的方法で返送され、再申請も申請ファイルを通じて電子で行えます。

 

【けんぽアプリ】データを活用した個別化アプローチが目玉

全国健康保険協会Webサイト「けんぽアプリについて」より抜粋

 

「けんぽアプリ」は、協会けんぽが長年抱えてきた加入者との接点に関する課題を背景に開発されています。従来、協会けんぽのサービスは事業主経由で提供されるケースが多く、協会けんぽから加入者へ直接アプローチできる機会が限られていたといいます。そうした中、令和6年12月2日以降、加入者接点の象徴でもあった健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証へ移行。この状況に対し、加入者へ直接サービスや情報を届ける新たな接点「けんぽアプリ」を開発し、さらなる保険者機能の強化を図っています。

2026年2月現在、同アプリの機能は「電子申請」と「健康記事の配信」の2種類ですが、2030年までの段階的なアップデートにより、次のような機能も実装が予定されています。

 

 

「けんぽアプリ」で実装予定の機能

健診・特定健診

  • 健診機関の検索から予約までアプリで完結
  • 健診結果を過去の結果と比較
  • アプリを通じた特定保健指導の受診

 

給付金の申請

  • 受け取れる可能性のある給付金を個別にお知らせ
  • アプリ上で給付金を電子申請
  • 申請後の進捗状況をリアルタイムで確認

 

加入者個別の情報提供

  • 加入者個人の健診結果などに基づき、日々の健康づくりをサポートするアドバイスやアンケートを配信

 

また、2030年までのロードマップでは、上記のような機能拡張のほかにも、ユーザー獲得・認知度向上の計画や、将来的に外部機関と連携したサービスを展開する構想について言及。最終的には「国民皆保険制度に新たな役割を加える、世界に例を見ない健康増進のプラットフォームを目指す」としています。

 


「けんぽアプリ」ロードマップの概要

全国健康保険協会「協会けんぽDXについて(電子申請、けんぽアプリ)」より抜粋

 

■ Ver.0(2026年~)|【黎明期】土台づくり

目的
・アプリ運用体制の構築
・サービスの検証

主な機能
・電子申請機能の提供
・健康記事の配信 

 


■ Ver.1(2028年~1月仮)|【確立期】基盤的保険者機能の確立

目的
・基盤的な保険者機能(電子申請)の確立
・初期ユーザーの大幅獲得と認知向上
 ― 入社時に自動でアプリをインストールする仕組みなどの構築

主な機能拡張
・健診案内など、個人情報を活用したサービスの提供

 


■ Ver.2(2030年~)|【成長期】戦略的活用の強化

目的
・戦略的な保険者機能(コンテンツ配信)の強化
 ― 行動特性に応じた通知など
・業務DXの推進強化

主な機能拡張
・健診予約など、付加価値のあるサービスの提供

 


■ Ver.3(未定)|【拡大期】連携によるサービスの高度化

方向性
・外部機関・サービスとも連携したにサービスの高度化
・すべての加入者が利用

 



業務効率化の視点で見た「けんぽDX」の意義

全国健康保険協会「協会けんぽDXについて(電子申請、けんぽアプリ)」より抜粋

 

この「けんぽDX」の意義は、加入者の予防・健康づくりの強化、それによる長期的な医療費削減だけではありません。保険者である協会けんぽにとっても、次のような業務効率化のメリットが期待できます。

 

【協会けんぽ側で期待できる業務効率化】

  • 各種申請が加入者から直接行われる(事業主を経由する必要がなくなる)ことによる効率化
  • 申請関連業務のペーパーレス化
  • 加入者向けアンケートをアプリで一本化して実施し、集約的にデータ管理
  • 加入者向け通知のペーパーレス化
  • 加入者個人のデータを活用し、アプリ上で給付金申請を勧奨
  • 加入者向けの配信コンテンツの集約管理
  • 健診関連のデータをアプリのプラットフォームで集約的に取得し、分析

 

まとめ

協会けんぽの「けんぽDX」では、アプリ、スマートフォンを活用した加入者との接点強化、データ活用による個別化された加入者へのアプローチなど、デジタル技術を活用した保険者機能の再設計が試みられています。また、ペーパーレス化や、データ分析に向けた情報の一元管理など、保険者業務効率化の観点でも意義の大きな取り組みです。国内最大規模の加入者数を誇る協会けんぽのこうした動きは、ほかの被用者保険にとっても決して無視できないでしょう。自組合で可能な、また効果の期待できる“DX”の在り方を、改めて検討したいところです。

 


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