
ストレスチェック制度とは?保険者が知るべき基本とデータ活用の注意点を解説
ストレスチェックは、多くの企業で事業主側の義務となっている健康保持増進措置のひとつです。保険者としても、コラボヘルス、データヘルスの一環として、ストレスチェック結果のデータをメンタルヘルス対策に活用したいと考える場合もあるでしょう。しかし、同データの取り扱いには厳密なルールがあります。
ストレスチェック結果データは、保険者が個人単位で取得し、レセプトや健診データと結び付けて活用することは原則認められていません。制度上、保健事業での直接的な活用は想定されておらず、活用する場合は、事業主が実施者から提供を受けた集団分析結果を利用するのが基本となります。
当記事では、ストレスチェック制度の基本を押さえつつ、結果データを活用する際の注意点や、保険者が取り得る活用方法について解説します。
ストレスチェック制度とは
ストレスチェックは、事業場における労働者のストレスの程度を把握するための検査です。労働者自身にストレスへの気付きを促すとともに、事業者が働きやすい職場づくりにつなげ、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。

厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支援室 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(改訂 令和3年2月)より引用
同制度は2014年の労働安全衛生法改正で「心理的な負担の程度を把握するための検査」として新設。仕事や職業生活において強い不安や悩み、ストレスを感じる労働者が増加し、さらに、それらを原因とした精神障害による労災認定が増えている実態を背景にスタートしました。
2026年1月現在、ストレスチェックは常時50人以上の労働者(パート、派遣労働者を含む)を使用する事業場で実施義務があります。
なお、2025年5月の法改正により、2028年5月までには、50人未満の企業を含むすべての事業場で実施が義務づけられる予定です。
実施体制

厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支援室 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(改訂 令和3年2月)より引用
ストレスチェックの実施責任主体は事業者です。
また、実施にかかわる実務は上図の通り、ストレスチェック制度全体の実施計画・管理を行う「ストレスチェック制度担当者」(衛生管理者など)、ストレスチェックを実施する「実施者」(産業医など)、調査票回収やデータ入力を行う実施事務従事者(産業保健スタッフ(例:保健師、看護師、心理職)など)が担います。
実施方法
事業者は、1年以内ごとに1回、ストレスチェックを実施します。定期健診と同時に実施される場合も珍しくありません。

厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支援室 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(改訂 令和3年2月)より引用
検査は労働者が調査票に自ら記入する形で行います。調査票の内容は下記の3領域を含む必要があり、実施者の提案や助言、また衛生委員会の調査審議を経て、事業者が決定。「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)などが参考にされます。
【ストレスチェック調査票の検査項目に含まれる3領域】
- 仕事のストレス要因:職場における本人の心理的な負担の原因に関する項目
- 心身のストレス反応:心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
- 周囲のサポート:職場における他の労働者による本人への支援に関する項目
実施後の流れ
各個人のストレスチェック結果は、実施者が労働者に直接通知します。また、検査の結果、実施者が面接指導が必要であると判断した労働者に対しては、結果通知に合わせて、医師による面接指導を勧奨します。
事業者は面接指導の実施後に、ストレスチェックと面接指導の実施状況を労働基準監督署に報告します。
ストレスチェック結果は保険者が活用できる?基本は「集団分析結果」のみ
個々人のストレスチェック結果データを直接扱えるのは、産業医などの実施者と、産業保健スタッフなどの実施事務従事者に限られます。
たとえ実施責任主体である事業者であっても、個人単位のストレスチェック結果データは、本人の同意がなければ取得できません。労働安全衛生法には、実施者は労働者の同意がない限り、その結果を事業者に提供してはならないと規定されています(66条の10第2項)。結果データが労働者の健康管理に必要な範囲を超えて、労働者にとって不利益な取扱いがされるケースを防止するためです。
さらに、ストレスチェック結果は個人情報保護法で規定された要配慮個人情報でもあります。要配慮個人情報を第三者に提供する場合には、原則として本人の同意が必要です。
これに対して、個人が特定されない集団ごとの集計・分析については、実施者が行い、分析結果の状態で事業者へ共有されます。また、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、集団ごとの集計・分析を行う際は、個人が特定されないよう、下限人数は10人(ストレスチェックの実際の受検者人数としての有効データ数)としています。
コラボヘルスでストレスチェックデータをどう活用できる?

厚生労働省保険局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」(平成29年7月)より引用
ストレスチェック結果データの取り扱いには厳格なルールが定められています。
また、制度上、保険者が保健事業でストレスチェックの結果データを活用するケースは想定されていません。したがって、例えば「保険者が、事業主あるいは実施者から個人単位のストレスチェック結果データを取得し、レセプトデータや健診データと結び付けて分析し、保健事業のパーソナライズ化に活かす」といったデータ活用方法は、原則として認められないと考えましょう。
保険者がコラボヘルス、データヘルスの一環としてストレスチェック結果データを扱いたい場合は、事業主が実施者から提供された集計データ分析結果を活用するのが基本です。
保険者が関与する方法は?|実施者としてストレスチェックに関わるケース
保険者側でストレスチェック結果を分析して保健事業に活かしたい場合は、保険者が事業主から委託を受け、ストレスチェックの実施者・実施事務従事者になる方法もあります。実際に、この方法を採用しているコラボヘルス事例も複数見られます。
ストレスチェックを実施する場合、実施者になれるのは以下いずれかの医療職です。保険者にこれらの条件を満たす医療職が所属していれば、ストレスチェックの実施者になれます。
【ストレスチェック実施者の条件】
- 医師
- 保健師
- 一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師
※検査を受ける労働者について解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事できない。
また、データ分析に当たっては、あくまで個人が特定されない集団ごとの分析を行う点に注意が必要です。
ストレスチェックの実施者は、日頃から事業場の状況を把握している産業保健スタッフが務めることが望ましいとされています。したがって、コラボヘルスを日ごろから積極的に推進している保険者においては有効な方法だといえます。
おわりに
ストレスチェック結果のデータは、メンタルヘルス対策など、コラボヘルス、データヘルスで活用したいデータではあります。しかし、保険者が実施者にならない限りは、原則、個人ごとの結果データは扱えない点は理解しておきましょう。制度の基本的な設計や検査の流れを理解したうえで、実施者による集団データ分析の結果を、うまく活用したいところです。ストレスチェック制度を適切に運用するためには、制度理解だけでなく、実施・結果管理を効率的に行う仕組みづくりも重要です。
PHRサービスと連携したツールを活用すれば、ストレスチェックの実施から結果確認、日常の健康管理までを一体的に管理することも可能です。
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