
健保連「特定健診・特定保健指導の実施状況速報」を解説|アウトカム評価の該当率は?
健康保険組合連合会(以下、健保連)は令和8年2月、「令和6年度 特定健診・特定保健指導の実施状況(速報版)」(調査対象1,125組合)を発表しました。
同年度から、特定保健指導では成果を重視した評価体系「アウトカム評価」がスタート。今回の速報では、そのアウトカム評価の該当状況も集計されています。
本記事では、今回の速報値を前年度(令和5年度)の集計結果と比較しながら、健保組合における特定健診・特定保健指導や生活習慣病の現状を解説します。
※本文中の表は注釈のないものは、健保連「令和6年度 特定健診・特定保健指導の実施状況(速報版)」「令和5年度 特定健診・特定保健指導の実施状況」をもとにJMDCが作成。
健診・保健指導の実施率は引き続き向上
特定健診受診率、特定保健指導実施率は、ともに前年度から順調に向上しています。
ただし、いずれの数値も被保険者・被扶養者間でいまだ差があるのが実情です。
特に、被保険者の特定健診受診率は91.2%と高い水準をキープしている一方、被扶養者の特定健診受診率は49.2%と、全体の半数以下にとどまっています。
【 特定健診受診率の推移】
|
令和6年度 (速報) |
令和5年度 | 増減 | |
| 全体 | 82.0% | 80.8% | +1.2pt |
| 被保険者 | 91.2% | 90.4% | +0.8pt |
| 被扶養者 | 49.2% | 48.1% | +1.1pt |
【特定保健指導実施率(終了者割合)の推移】
|
令和6年度 (速報) |
令和5年度 | 増減 | |
| 全体 | 35.0% | 33.9% | +1.1pt |
| 被保険者 | 35.8% | 34.8% | +1.0pt |
| 被扶養者 | 20.7% | 18.6% | +2.1pt |
生活習慣病のリスク保有者割合は微増
メタボリックシンドローム(以下、メタボ)該当者・予備群、各種服薬者といった生活習慣病リスク保有者の割合は、いずれも微増という結果になりました。
中でも、メタボ該当者と予備群を合わせた割合は28.0%と、依然として全体の4分の1を超えています。
【メタボリックシンドローム該当者・予備群*1の推移】
|
令和6年度 (速報) |
令和5年度 | 増減 | |
| メタボ該当者 | 15.2% | 14.9% | +0.3pt |
| メタボ予備群 | 12.8% | 12.5% | +0.3pt |
*1
・メタボリックシンドローム該当者:内臓脂肪の蓄積(腹囲測定など)に加え、血中脂質、血圧、血糖の基準のうち、2つ以上に該当する者。
・メタボリックシンドローム予備群:内臓脂肪の蓄積(腹囲測定など)に加え、血中脂質、血圧、血糖の基準のうち、1つに該当する者。
【生活習慣病関連の服薬率の推移】
|
令和6年度 (速報) |
令和5年度 | 増減 | |
| 高血圧症服薬者 | 17.3% | 16.8% | +0.5pt |
| 脂質異常症服薬者 | 13.1% | 12.4% |
+0.7pt |
| 糖尿病服薬者 |
5.2% |
5.0% |
+0.2pt |
アウトカム評価「2cm・2kg」該当率は約2割
令和6年度から導入されたアウトカム評価の状況については、積極的支援終了者におけるアウトカム評価の該当者数および割合が集計され、発表されました。
| <令和6年度 特定保健指導積極的支援終了者におけるアウトカム評価の該当率>
1.身体数値の変化
|
上記の通り、アウトカム評価の該当率は指標によって差があり、必ずしも保健指導が成果に十分つながっているとは言い切れない現状が浮き彫りになっています。
例えば「腹囲2cm・体重2kg」「腹囲1cm・体重1kg」の該当者は合計で約30%と決して多くはなく、大半の保健指導参加者が数値上の改善に至っていない実態が示されています。また、生活習慣に関する指標を見ると、食習慣は積極的支援終了者の4割以上が改善を達成しているものの、運動習慣を改善できた割合は28.5%、喫煙習慣はわずか1%程度にとどまっています。
【ポイント解説】成果につなげる特定保健指導の重要性
今回のデータ集計では、特定保健指導におけるアウトカム評価の該当率が初めて示され、健保組合で実施されている特定保健指導が実際に生活習慣病予防・重症化予防につながっているかどうかがデータとして可視化されました。

厚生労働省 保険局 医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室「第4期特定健診・特定保健指導の見直しについて」より抜粋
特定保健指導は、その仕組み上、積極的支援の対象者がアウトカム評価の目標を達成できなかったとしても、従来のプロセス評価を中心に180ptを達成してしまえば、指導は終了となります。しかし、今回のデータを見ると、前年度比で特定保健指導の実施率(終了者割合)が増加しているにもかかわらず、メタボや服薬者といったハイリスク者は増加。対象者が単に指導を受け、終了に至るだけでは、生活習慣病予防・重症化予防にはつながらないことが示唆される結果となっています。
特定保健指導の実効性アップに向け、アウトカム評価の「2cm・2kg」「1cm・1kg」や生活習慣改善の該当率をひとつの指標として、運用のPDCAを回していくのも有効であると考えられます。
さらに、こうした「成果(アウトカム)につながる保健指導の運用」は、後期高齢者支援金の減算要件となる「保険者機能の総合評価指標」の得点獲得にも直結します。

厚生労働省 第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度について (2025・2026年度)より引用
併せて、特定健診・特定保健指導における従来からの課題に対しても、継続して取り組みが求められます。例えば、被扶養者の特定健診・特定保健指導受診率アップに向けたアプローチの工夫や、服薬者が治療を中断しないような通院勧奨なども、保健事業の一環として引き続き注力したいところです。
まとめ
健保連の集計データでは、特定保健指導でアウトカム評価が導入された背景でもある、成果につながる保健指導運用の重要性が改めて示されたといえます。
各保険者においても、今回の速報値を自組合のデータと照らし合わせながら、今後の保健事業の計画に役立ててみてください。
(参考情報)
健康保険組合連合会政策部調査分析グループ「令和6年度 特定健診・特定保健指導の実施状況(速報版)」
健康保険組合連合会政策部調査分析グループ「令和5年度 特定健診・特定保健指導の実施状況」
厚生労働省 保険局 医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室「第4期特定健診・特定保健指導の見直しについて」
厚生労働省 第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度について (2025・2026年度)
厚生労働省保健局「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」
厚生労働省保険局医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 4.2 版)」



