catch-img

肥満対策だけで大丈夫?データヘルス計画で「見落としがちな」低体重と睡眠

働く世代の健康課題は年々複雑化しています。生活習慣病対策やメンタルヘルス対策に加え、近年では「プレゼンティーイズム(体調不良を抱えたまま働くことで生じる生産性低下)」といった概念も広く知られるようになりました。


健康状態が日常生活や仕事に与える影響をどう捉えるかは、保険者にとっても重要なテーマです。一方で、健康診断結果やレセプトデータといった医療データだけでは、加入者自身の実感や生活の質、仕事への影響までを把握することは容易ではありません。

こうした中、JMDCではPHRサービス「Pep Up」を通じて取得した個人の主観データと、健診・レセプトデータを組み合わせた大規模分析を実施し、その結果をプレスリリースとして発表しました。

本記事では、分析結果から、BMIや睡眠といった身近な指標と仕事のパフォーマンスや幸福度との関係について、保健事業やデータヘルス計画に活かす視点で整理・解説します。

 

 ▼ 2025年12月22日発表 プレスリリース

 JMDC健康状態・生活習慣と仕事のパフォーマンスの相関関係を大規模データ分析で確認

 

【アンケート概要】

 アンケート期間 2025 年 6 月 5 日〜6 月 20 日   
 対象者 Pep Up ユーザー 
 回答総数

 35,514 名

(分析対象:企業正社員27,357名、うち健診データ連携あり:25,370名、連携率92.7%)

 

 


医療データ×主観データで「見えない健康課題」を可視化する

保険者が日常的に扱う健診データやレセプトデータは、加入者の健康状態を客観的に把握するうえで欠かせない情報です。一方、仕事のパフォーマンスや幸福度、生活の満足感といった要素は、医療データだけでは捉えにくい側面があります。

今回の分析では、Pep Upの分析基盤を活用し、健康診断結果・レセプトデータと、アンケートによる主観データをID単位で紐づけて解析しています。これにより、健康状態や生活習慣と、日常生活や仕事への影響との間に、どのような関連が見られるのかを確認することが可能となりました。

 

なお、本分析はあくまで探索的なものであり、因果関係を示すものではありません。しかし、データヘルス計画において「どのような切り口で施策を検討すべきか」という、仮説を立てるための材料としては有用な結果といえるでしょう。

 


【分析結果①】BMIと生産性の関係|肥満だけでなく「低体重」にも配慮が必要

分析の1つ目のテーマは、BMIと仕事のパフォーマンス、幸福度との関係です。

 

BMI※1を「低体重」「普通体重」「肥満」に区分して比較したところ、普通体重の人は、健康上の問題による仕事の生産性低下を自己評価で測る指標(SPQ※2)が高い傾向にありました。

具体的には、SPQスコアが90以上(生産性が高い状態)と回答した人の割合は、普通体重群が37%と最も高い結果となりました。
一方で、低体重群ではその割合が32%にとどまっており、肥満群(1度)の割合と同水準であることがわかります。

 

※1 「BMI」:BMI(Body Mass Index:体格指数)は、体重(kg)÷身長(m)²で算出される体格の指標。BMI18.5 以上 25 未満を「普通体重」、18.5 未満を「低体重」、25 以上を「肥満」と定義しています。

※2 「SPQ」:SPQ(Single-item Presenteeism Question)は、健康上の問題による仕事の生産性低下を、自己評価で 測定する指標。0〜100 点で回答し、点数が低いほど健康影響による生産性低下が大きい状態を示します。

 

「図1:BMI区分別のプレゼンティーイズム(SPQ)スコア分布」
※グラフはプレスリリース詳細を基に加工

 

また、幸福度についても同様に、普通体重の人の平均スコアが6.92と最も高く、低体重や肥満の人ではスコアが低い傾向が確認されました。

「図2:BMI区分別の幸福度スコア分布」

※グラフはプレスリリース詳細を基に加工

 

注目すべき点は、肥満への対応だけでなく、「低体重」においても生産性や幸福度が低い傾向が見られたことです。保健事業では肥満対策に注目が集まりやすい一方で、やせの状態にある加入者への配慮も必要であることを示唆しています。


【分析結果②】睡眠と生産性の関係|「睡眠休養感」がパフォーマンスを左右する

2つ目のテーマは、睡眠と仕事への影響です。

 

睡眠休養感「あり」と答えた群※4は「なし」と答えた群と比べて、プレゼンティーイズム (SPQ)・アブセンティーイズム※5 ・幸福度のいずれもが良好な結果となりました。

※4 健康診断の問診の「睡眠で休養が十分とれている」という設問で「はい」と答えた方

※5 「アブセンティーイズム」:病気や体調不良等を理由として、欠勤や遅刻・早退が生じ、労働時間や業務遂行が失 われている状態を指す。当アンケートでは、昨年 1 年間に自分の病気で何日仕事を休んだかを回答

 

「図3:睡眠休養感の有無による各指標(SPQ・アブセンティーズム・幸福度)の比較」

 

この結果からは、睡眠の質や休養の確保が、日常生活だけでなく仕事のパフォーマンスにも関連している可能性がうかがえます。睡眠改善を促す支援は、加入者本人の健康維持にとどまらず、働く世代全体のコンディション改善につながる施策として検討する余地があるといえるでしょう。

 

第3期データヘルス計画への示唆|「行動変容」を促す新たなアプローチ

厚生労働省の『データヘルス計画作成の手引き(第3期改訂版)』における「第3期データヘルス計画のPDCAサイクル」では、計画(Plan)段階において「事業の成果を測り、健康課題の解決につながるアウトカム指標を設定」することや、実施(Do)段階において「被保険者本人に関しては、労働生産性向上の視点を意識した実践も重要」であることが明記されています。

 

厚生労働省・健康保険組合連合会「データヘルス計画作成の手引き(第3期改訂版)」より引用

 

これに伴い、第3期データヘルス計画の推進においては、単なる健診受診率や数値改善にとどまらず、こうした健康状態が生活や行動にどのような影響を与えているかを踏まえた施策設計がより重要になっています。

 

今回の分析結果は、BMIや睡眠といった既存の健診項目を、より立体的に捉えるための視点を提供しています。数値の改善を目標とするだけでなく、「その状態が日常生活や仕事にどう影響しているのか」を伝えることで、加入者の理解や行動変容を促しやすくなる可能性があります。

 

また、肥満対策だけでなく、低体重や睡眠不足といった見過ごされがちな課題にも目を向けることは、より幅広い加入者層への支援につながります。データを分析して終わりにするのではなく、情報提供や施策設計にどう落とし込むかが、今後のポイントといえるでしょう。

 


データに基づく「納得感のある」施策立案に向けて

JMDCでは、医療ビッグデータとPHRを活用した分析を通じて、健康課題の可視化とエビデンス創出を進めています。こうした取り組みは、保険者がデータヘルス計画を推進するうえでの意思決定を支える基盤となるものです。

 

第3期データヘルス計画の推進にあたっては、データに基づく仮説を積み重ねながら、自組合の課題や特性に合った施策へとつなげていくことが求められます。本記事が、その検討の一助となれば幸いです。

なお、データヘルス計画に役立つ実務情報も以下にまとめています。今後の取り組みの参考として、あわせてご覧ください。

 


本記事のご感想や今後希望するテーマなど
ぜひご意見をお寄せください

こちらの記事もおすすめ

データ分析や保健事業でお悩みの方は
お気軽にご相談ください

CONTACT
保険者様・企業様お問合せ専用

平日10:00~17:00

ご不明な点はお気軽に
お問い合わせください
保険者支援実績No.1
JMDCのサポート内容はこちら
お役立ち情報満載の
メルマガをお届けします

過去開催したセミナー

 


人気記事ランキング

タグ一覧