
【最新動向】2027年度「後期高齢者支援金の加算・減算制度改正」保険者が押さえておきたいポイント
2024年度からスタートした第4期「後期高齢者支援金の加算・減算制度」。令和8年4月20日発出の最新通知※により、2027年度以降の抜本的な制度改正が正式に決定しました。
※「2027年度以降の後期高齢者支援金の加算・減算制度の改正について」(令和8年4月20日保保発0420第1号厚生労働省保険局保険課長通知)

「厚生労働省『【概要】第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度(2027~2029年度)』より引用」
■ 2027年度 後期高齢者支援金の加算・減算制度にかかるスケジュール
- 評価対象:2026年度(令和8年度)に実施した取組
(特定健診の実施〈通年〉、特定保健指導の実施〈翌2027年度9月末まで〉、総合評価指標の取組)
- 判定・通知:2027年度(令和9年度)に実績報告および法定報告が行われ、その後、加算率の決定・通知、減算率は見込み減算率通知・確定減算率通知が行われる
- 適用時期:2029年度(令和11年度)の確定後期高齢者支援金に、加算率・減算率が適用される
このように、2027年度支援金の評価対象となるのは、まさに今年度「2026年度(令和8年度)の取り組み実績」からとなります。そのため、各組合は現在の事業計画に、新しい制度を見据えた対策を検討していく必要があります。
それでは、2027年度以降の加算・減算制度は具体的にどう変わるのか、実務担当者がいち早く押さえておくべき変更点を順に解説し、今すぐ準備すべき3つの対策を紹介します。
2027年度以降の加算基準はどう変わる?「絶対値評価への移行」
2027年度以降の改定において、健保組合の財政に最もダイレクトに影響を与えるのが加算(ペナルティ)基準の見直しです。これまでの「他組合の動向に左右される相対評価」から、「絶対値評価」へ厳格化されます。

「厚生労働省『【概要】第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度(2027~2029年度)』より引用」
1. 実施率の「絶対値のみ」を加算判定の基準へ変更
これまで加算免除の要件には、全保険者目標値だけでなく、前年度の平均値を用いた相対的な基準(平均値-標準偏差)が組み込まれていました。
しかし2027年度以降は、到達すべき基準を明確にするため、過去の実績値に左右される相対評価は廃止され、特定健診および特定保健指導ともに「実施率の絶対値のみ」で判定されることになります

「厚生労働省『【概要】第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度(2027~2029年度)』より引用」
2. 保険者種別ごとに「段階的な加算率」を適用
保険者種別ごとに実施率に応じた固定の加算基準(絶対値)が設定され、例えば単一健保の特定健診であれば「50%未満は10%加算」「50%以上~60%未満は5%加算」といったように、基準値に達していない保険者へ段階的に加算(ペナルティ)が適用されます。
3. 加算除外要件の変更(「個別通知」と「実施率上昇」が必須へ)
2027年度以降は、総合評価指標における「重点項目」の設定が廃止されることに伴い、実施率に応じた加算除外の条件も変更されます。 厚生労働省が公表した最新の「Q&A資料(※)」にも明確に記載されている通り、特定健診および特定保健指導の実施率が一定以上ある加算対象保険者については、これまでの条件に代わり、「全対象者へ個別通知を実施していること」および「前年度の実施率を上回っていること」という2つの新条件を両方満たすことが必須となります。これらをクリアすれば、引き続き加算除外が認められる方針へと変更されました。
※厚生労働省『第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度に関するQ&A(2027年度以降支援金)』Q3より引用
減算(インセンティブ)基準と総合評価指標の変更点:「選択と集中」を促す評価体系へ

「厚生労働省『【概要】第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度(2027~2029年度)』より引用」
■ 2027~2029年度の減算になるための要件等
- 総合評価指標の合計点数が上位20%に該当すること
- 総合評価指標の必須項目(2つ)を全て満たすこと
また、減算対象となった保険者の「減算率」の決まり方にも大きな変更があります。 第4期前半(2024〜2026年度)までは、合計点数に応じて5段階の区分が設けられ、上位区分ほど高い減算率が適用される「ピラミッド型」でした。しかし、2027年度以降はこの段階(区分)が廃止され、全体の加算規模に応じて一律で「定率の減算率」が設定されることになります。
【全体像】2027~2029年度 総合評価指標の大項目一覧
- 大項目1:健康課題に対応した保健事業の実施(※新設)
- 大項目2:特定健診・特定保健指導の実施(法定の義務)
- 大項目3:要医療の者への受診勧奨、糖尿病等の重症化予防
- 大項目4:デジタル活用、予防健康づくりの体制整備
- 大項目5:後発医薬品の使用促進、加入者の適正服薬を促す取組の実施状況
- 大項目6:がん検診・歯科健診等の実施状況
- 大項目7:加入者に向けた予防・健康づくりの働きかけ
それでは、減算対象になるために欠かせない「2つの必須項目」と、総合評価指標の新たな仕組みについて詳しく見ていきましょう。
1. 減算必須要件に「データヘルス計画の策定」が直結
第4期前半(2024~2026年度)において、減算枠に入るための必須要件は以下の4項目でした(※大項目番号は2025・2026年度指標に基づく)。
- 大項目2-①「特定健診・特定保健指導の実施率(基準値以上)」
- 大項目5-②「後発医薬品の使用割合(基準値以上)」
- 大項目1-②「PHRの体制整備①」
- 大項目4-①「コラボヘルスの体制整備」
2027年度からはこれらが再編され、必須項目は以下の2つに整理されます。
- 【新設必須】大項目1-①「健康課題に対応した保健事業の実施」
- 大項目2-①「特定健診・特定保健指導の実施率(基準値以上)」
新設された「大項目1-①」により、データヘルスポータルサイト上での「データヘルス計画策定」自体が減算の絶対条件となります。

「厚生労働省『【概要】第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度(2027~2029年度)』より引用」
2. 大項目7「選択式」の導入と重点項目の廃止
これまで必須とされていた画一的な「重点項目」が廃止され、代わりに大項目7(保険者申告の小項目①、⑦〜⑪)において「選択式」が導入されます。※NDB集計の小項目等は対象外。
これは、データヘルス計画に基づき、自組合の健康課題に合致する指標(こころの健康や女性の健康など)をあらかじめ選んで申告する仕組みです。
これにより、国が定めた項目をまんべんなく実施するアプローチから脱却し、「自組合の課題解決にリソースを集中させる」という本質的な取り組みが正当に評価されるようになります。


「厚生労働省『【概要】第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度(2027~2029年度)』より引用」
【重要:最大「2項目」を選択して満点(30点)を狙う仕組みへ】
選択式となる小項目(①、⑦〜⑪)については、「最大2項目を選択して申告する(最大30点)」仕組みです。これは、結果が問われる厳しいアウトカム評価(NDB集計項目)で満点を取るのが難しくても、自ら選択した課題に対して着実に事業を実施する「プロセス」を踏めば、十分に高得点(30点分)がカバーできる構造であることを意味しています。すべての項目を実施する必要はなく、自組合の健康課題に合致する項目に絞り、確実に得点できるよう事業を設計・推進していくことが重要になります。
実務担当者が今すぐ準備すべき3つの対応策
実務担当者が準備すべき対応策は以下の3つです。
① 絶対値評価による「段階的な基準値」突破に向けたロードマップの再構築
現時点で基準に達していない場合は、従来のアプローチを抜本的な見直しが必要です。事業主との連携(就業時間中の実施配慮など)や、ICT・インセンティブの活用など、あらゆる手段で「絶対値ライン」を突破する計画を立てましょう。
② 特定保健指導の「新たな加算除外要件」を確実にクリアする運用体制の整備
実施率が加算対象基準に留まる場合でも、ペナルティ回避の防衛線として加算除外要件のクリアが重要です。2027年度以降必須となる「全対象者への個別通知」と「前年度実施率の超過」を確実に達成できる運用体制を今から構築しましょう。
③ データヘルス計画の「中間見直し」を活用した課題の絞り込み
大項目7の「選択式」で確実に得点するには、データに基づく健康課題の正確な抽出が不可欠です。2026年度に予定される第3期データヘルス計画の「中間見直し」を最大限活用し、自組合が注力すべき指標(女性の健康、ロコモ等)を明確に定義しましょう。
2027年度以降の制度は、一見厳格化されているようですが、本質は「各組合の課題を尊重し、真剣に取り組む保険者を正当に評価する」仕組みへの進化だと考えます。
データに基づいたPDCAを力強く回すことが、結果として最大のインセンティブ獲得へと繋がります。来る2027年度に向け、今から確実な一歩を踏み出しましょう。
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