catch-img

令和8年度 健保組合予算編成見通しを解説|診療報酬改定や子ども・子育て支援金制度の影響は?

令和8(2026)年4月、健保連は「令和8年度(2026年度)健康保険組合 予算編成状況について-8年度予算早期集計結果と今後の財政見通し-」を発表しました。高齢者拠出金負担の増大など、依然として厳しい財政状況が明らかにされたほか、子ども・子育て支援金制度の開始や診療報酬改定といった最新の制度改正による影響についても言及されています。

本記事では、同発表の要点を整理しながら、今後の見通しも踏まえた保健事業の考え方を解説します。

 


【この記事からわかること】

  • 経常収支は2,890億円赤字の見通し。賃上げなどで保険料収入は増加の見込みだが、診療報酬改定などで保険給付費が増加し、拠出金も増加すると見られる。
  • 平均保険料率は9.32%。協会けんぽの料率引き下げや子ども・子育て支援金制度を背景に一時的な引き下げ傾向にある。
  • 中長期的な支出増・保険料率引き上げは避けられない見通し。医療費適正化と拠出金の減算にもつながるデータヘルスの重要性が増すと考えられる。
     


経常収支は2,890億円の赤字見通し

健康保険組合連合会「令和8年度(2026年度)健康保険組合 予算編成状況について-8年度予算早期集計結果と今後の財政見通し-」より引用

 

令和8年度における健保組合(1,364組合)の予算は、全体として2,890億円の赤字となる見通しです。収入は増加すると見られますが、高齢者拠出金や保険給付費などの支出も増加が予想されており、根本的な財政好転には至っていないといえます。


続く賃上げ効果で保険料収入は増加見込み

経常収入は総額9兆7,636億円で、前年度比+4.0%の増加となる見通しです。

収入全体の98.6%を占める保険料収入は、前年度比で約3,550億円増加の見込みです。令和6年度からの賃金上昇傾向が引き続き影響しており、平均標準報酬月額は前年度比+1万3,697円(+3.4%)増の41万6,078円、平均標準賞与額は+5万808円(+4.1%)増の128万7,136円の見通しとなっています。


拠出金負担は増加傾向 診療報酬改定などで保険給付費増も

 

経常支出は総額10兆526億円で、前年度比+2.9%の増加となる見通しが示されました。

支出全体の53%を占める保険給付費(5兆3,250億円)は、前年度比+3.4%(+1,745億円)増加の見込みです。診療報酬改定などの影響が見られ、一人当たり保険給付費は+4.1%の見通しとなっています。

 

また、高齢者拠出金(後期高齢者支援金・前期高齢者納付金)は3兆9,796億円と、前年度比で+2.2%(+873億円)増加の見込みです。義務的経費(法定給付費+高齢者等拠出金)に占める拠出金負担割合は43.3%と、令和7年度の43.6%(見込み)から微減。負担割合が50.0%以上の組合は、全体の10.0%にあたる136組合となる見通しです(令和7年度:10.6%、146組合)。前年度見込みより数値は改善しているものの、引き続き拠出金負担が大きい状況が浮き彫りになっています。

 


赤字組合は依然7割超

組合数は前年度に比べ8組合減少し、1,364組合(令和8年4月1日現在)となりました。黒字組合は22組合増加して354組合(全体の26.0%)、赤字組合は30組合減少して1,010組合となる見通しです。ただし、全組合の74.0%が赤字と、いまだ7割超が赤字組合という状況は変わっていません。

 


平均保険料率9.32%、実質保険料率9.90%

 

各組合が設定した保険料率の平均料率(単純平均)は、前年度比0.02ポイント減の9.32%となっています。202組合が料率を引き下げた一方、料率を引き上げた組合も101組合。また、収支を均衡させるために必要な実質保険料率は9.90%と平均設定料率を上回っており、楽観視はできない状況です。


3割弱が協会けんぽの平均料率以上

料率引き下げの背景には、先述した賃上げ傾向のほか、令和7年度の協会けんぽの平均料率引き下げ(10.00%→9.90%)に同調しようとする動きも影響していると考えられています。

今回の協会けんぽの料率引き下げもあり、設定料率が協会けんぽの平均料率(9.90%)以上となった健保組合は376組合と、全体の27.6%に上ります。

 


子ども・子育て支援金制度開始の影響も

料率引き下げのもう一つの背景として、令和8年度から開始された子ども・子育て支援金制度の影響が挙げられています。同制度により、各健保組合は一般保険料率とは別に、支援金率0.23%(事業主0.115%+被保険者0.115%)を新たに拠出する義務が生じました。これに対し、加入者の負担増を吸収しようとする動きとして、一般保険料率を引き下げる対応が取られていると健保連は見ています。

令和8年度における子ども・子育て支援金額は、健保組合全体で合計約2,347億円、被保険者1人当たりの負担額(年額)は1万3,711円の見通しです。

 


中長期的な支出増・保険料率引き上げは避けられない

 

以上を踏まえ、健保連は今後の財政見通しとして、中長期的に支出がさらに増加する可能性があると指摘。物価・賃金上昇を反映した診療報酬改定などの影響で医療費の増加が見込まれることに加え、現役世代の減少によって高齢者拠出金の負担額がこれまで以上に増加すると分析しています。

また、健保連はこうした支出の増加により、保険料率も引き上げざるを得なくなる可能性についても言及しています。令和8年度は全体として保険料率が引き下げられる傾向にありますが、これは先述した通り、協会けんぽの平均料率引き下げや子ども・子育て支援金制度の開始などを背景とした一時的なものであるという見方です。現行の料率9.32%を維持した場合、将来的に保険料収入に占める拠出金割合は41%から46%まで上昇するという試算も示されています。


【解説】データヘルスの強化で医療費適正化、拠出金の減算を

健保連の分析でも示されたように、今後も健保財政においては中長期的に厳しい局面が続くと予想されます。外部要因の影響は大きいものの、健保組合が自らコントロールできる支出抑制策も少なくありません。特に注力すべき対策は、次の3点です。

 
  1. 医療費(保険給付費)の適正化
  2. 後期高齢者支援金の加算・減算制度への対応による拠出金の削減
  3. データに基づいた保健事業の費用対効果改善(保健事業支出の適正化)
 

これらはそれぞれ独立したものではなく、密接に関連し合って効果を発揮するといえます。例えば、適切な医療のかかり方や適正服薬の促進、生活習慣病の予防・重症化予防といった医療費適正化に向けた取り組みは、後期高齢者支援金の加算・減算制度において加算を免れ、減算を狙う上でも欠かせません。

また、その際、データに基づいて費用対効果の高い保健事業を展開し、施策の実効性を向上させれば、将来的な医療費適正化につながりやすくなります。さらに、後期高齢者支援金の加算・減算制度においても、2027年度以降は減算にかかわる総合評価指標の一部で選択式が導入され、自組合の健康課題に即した保健事業の展開が評価されるようになる予定です。

令和8年12月頃に予定されている第3期データヘルス計画の中間見直しもひとつの機会として有効に活用し、改めて保健事業を戦略的に検討する必要があるでしょう。

 


まとめ

令和8年度の健保組合予算では、黒字組合の増加、保険料率の引き下げといった傾向も見られますが、中長期的には決して楽観視できない状況に変わりはありません。今後も医療費や高齢者拠出金の増大が懸念される中、健保組合におけるデータヘルスの重要性はより一層増してくるといえるでしょう。今後の制度改正など外部要因の動向も注視しつつ、来たる第3期データヘルス計画の見直しに能動的な姿勢で取り組みたいところです。

 

第3期データヘルス計画中間見直し支援サービスはこちら>>

 


本記事のご感想や今後希望するテーマなど
ぜひご意見をお寄せください

こちらの記事もおすすめ

データ分析や保健事業でお悩みの方は
お気軽にご相談ください

CONTACT
保険者様・企業様お問合せ専用

平日10:00~17:00

ご不明な点はお気軽に
お問い合わせください
保険者支援実績No.1
JMDCのサポート内容はこちら
お役立ち情報満載の
メルマガをお届けします

過去開催したセミナー

 


人気記事ランキング

タグ一覧