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【2025(令和7)年度版】後期高齢者支援金の加算・減算制度のポイント、変更点を解説

2024年度から第4期が始まった後期高齢者支援金の加算・減算制度。2025年度は前年度の大枠の変更はないものの、項目の追加や配点の変更などが予定されていると発表されました(2024年7月2日 第46回保険者による健診・保健指導等に関する検討会)。改めて同制度の要点を押さえながら、今回の変更点について解説します。

※ 本記事は2024年7月2日に厚生労働省ホームページで公開された「第46回 保険者による健診・保健指導等に関する検討会 資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001268046.pdf
」に基づき作成しています。内容についての疑義がございましたら関係省庁へお問い合わせ願います。
※本文中の図はすべて同資料より引用しています。


目次[非表示]

  1. 1.制度の概要と経緯
  2. 2.加算・減算の要件(2024〜2026年度)
    1. 2.1.加算要件(加算基準)
    2. 2.2.変更点
    3. 2.3.減算要件(総合評価指標)
    4. 2.4.変更点
    5. 2.5.大項目1「デジタル活用の体制整備」の新設
    6. 2.6.大項目5内に小項目④「重複投薬・多剤投与対策」追加
    7. 2.7.大項目7に小項目3件が追加(女性、ロコモ、こども)
    8. 2.8.配点の見直し(特定健診・特定保健指導実施率の配点引き下げ)
  3. 3.今後の見直し方針
  4. 4.おわりに


制度の概要と経緯

後期高齢者支援金の加算・減算制度は、各保険者の特定健診・特定保健指導実施率や予防・健康づくり、医療費適正化の取り組み状況を評価し、支援金の額を最大10%加算または減算するインセンティブ制度です。各保険者に義務化されている特定健診・特定保健指導の実施率向上を目的に、2013年度より開始されました。2018年に始まった第3期以降は、保険者のうち健康保険組合と共済組合が同制度の対象となっており、その他の保険種別では特性に合わせた別のインセンティブ制度が運用されています。 


加算・減算の要件(2024〜2026年度)

加算要件(加算基準)


次の1、2のどちらにも当てはまらない場合、年度ごとに設定される「加算基準」に従って支援金が加算されます。

<加算を免れる要件>
前年度の特定健診・特定保健指導の実施率が、

  1. 全保険者目標(特定健診70%、特定保健指導45%)を達成できている
  2. 「保険者種別ごとの支援金年度の4年前の実施率の平均値-1×SD(支援金年度の4年前の実施率の標準偏差)」以上

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変更点

加算基準は過去の実績をもとに設定されるため、2025年度の基準値が2024年度から変更になる点に注意が必要です。加算基準は年々厳しくなることが想定されるため、2024年度に加算上限ギリギリだった保険者は、引き続き実施率向上に向けた取り組みが求められます。


減算要件(総合評価指標)

減算の可否は、予防・健康づくりや医療費適正化に関するさまざまな項目から成る「総合評価指標」の点数によって決まります。総合評価指標の合計点数が上位20%に該当し、かつ同指標の必須項目4つをすべて満たすと減算対象となります。また、減算率は総合評価指標の合計点数に応じた区分で決まります。


変更点

2025年度は総合評価指標に新たな項目が追加されるほか、一部の配点変更が行われる予定です。


大項目1「デジタル活用の体制整備」の新設


マイナ保険証の利用拡大などを背景に、デジタル活用を推進する取り組みを評価する総合評価指標が追加されます。このうち小項目①「デジタル活用推進」(ICTやデジタル技術の活用)、小項目③「PHRの体制整備②」(40歳未満の事業主健診データの取り扱いなど)は新設の項目です。また、2024年度には大項目4に含まれていた「PHRの体制整備」も、新たな大項目1内の小項目②に移動します。
なお「マイナ保険証の利用促進」に関する評価項目が継続されるかどうかは今後検討される予定です。


大項目5内に小項目④「重複投薬・多剤投与対策」追加


「大項目5 後発医薬品の使用促進、加入者の適正服薬を促す取組の実施状況」に、重複投薬・多剤投与に関する情報提供を行っているかどうかを評価する小項目が追加されます。2023年9月に公表された「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針の改正」を受けた変更となっています。


大項目7に小項目3件が追加(女性、ロコモ、こども)


「大項目7 加入者に向けた予防・健康づくりの働きかけ」内に小項目⑩「性差に応じた健康支援」(女性特有の健康課題への支援)、小項目⑪「ロコモティブシンドローム対策」の2件が追加されます。これらも前述の「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針の改正」に伴うものです。
また社会保障審議会・医療保険部会で言及された観点から、小項目⑨「こどもにとってより良い医療の在り方」も追加。被扶養者のうち、こども(0歳〜18歳)を対象とした予防接種・歯科健診などの保健事業や、こどもの適切な医療受診・抗菌薬処方に関する周知、広報を行っているかどうかを評価する項目です。


配点の見直し(特定健診・特定保健指導実施率の配点引き下げ)


「大項目2 特定健診・特定保健指導の実施(法定の義務)」にある2項目の配点が引き下げられます。第4期特定健診・特定保健指導の開始以降、実施率という「アウトプット指標」よりも、施策・事業の実施により発生する効果・成果=「アウトカム指標」の重要性が高まっていることを背景とした変更です。またこの引き下げに伴い、別の項目の配点が引き上げられます。

<配点が引き下げられる小項目>

  • 小項目①特定健診・特定保健指導の実施率:10~50→5~10
  • 小項目③肥満解消率:1~20→1~10

<配点が引き上がる主な小項目>

  • 糖尿病性腎症等の生活習慣病の重症化予防の取組Ⅰ、Ⅱ(大項目3)
  • コラボヘルスの体制整備(大項目4)
  • がん検診の実施状況 など(大項目6)
  • 運動習慣の改善、食習慣の改善 など(大項目7)


今後の見直し方針

厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」では、第4期の中間見直し以降(2027年度〜)の制度運用についても議論されています。検討段階ではありますが、加算基準、減算対象の考え方が大きく変わる可能性も示されています。
例えば、加算基準については、特定健診・特定保健指導実施率アップの取り組みが十分底上げされた段階を想定し「将来的には実施率が著しく低い保険者を加算対象とし、加算率は最大の10%とする」案を提示。また減算対象の考え方については、加算規模の縮小が見込まれるため「減算対象の中で区分を設けず、加算の規模に応じて定率の減算額を設定する。また減算対象保険者については表彰を行う」案が検討されています。


おわりに

2025年度の後期高齢者支援金の加算・減算制度については、新たな大項目1の設定、複数の小項目の追加や配点の変更などに注意したいところです。また2027年度以降は加算基準や減算対象の考え方が大幅に変更される可能性も示唆されています。引き続き、最新の動向を注視しておきましょう。




<参考情報>
厚生労働省 保険局 保険課「後期高齢者支援金の加算・減算制度の見直しについて」(第46回保険者による健診・保健指導等に関する検討会 資料)

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