
2025年度の新制度でも評価対象に!医療費抑制にもつながる保健事業「女性の健康支援」
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働く女性が年々増加している今、彼女たちの健康増進は日本経済に大きな影響を与える要素のひとつであり、「女性のための健康支援」は保険者に課せられた重要な役割といっても過言ではありません。
しかし、実際にどのような方法で支援を行うべきかわからず、悩んでいる保険者も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、女性の健康支援の必要性や具体的なアクションのアイディアをご紹介します。
今、女性の健康支援が注目されている
近年、女性の健康支援は日本社会全体で取り組むべき重要な課題として広く認識されています。背景にあるのは、女性が健康を損なうことによる経済損失の大きさです。経済産業省の推計では、その額はなんと年間約3.4兆円にも上るとされています。働く女性の増加や「プレゼンティーイズム(健康の問題を抱えつつ仕事を行っている状態)」による生産性への影響の分析が進んだことなどを背景に、女性特有の健康課題による経済損失額は大きくなり、注目度が高まっていると考えられます。また、医療費の適正化の観点でも、女性の健康支援は欠かせません。
すべての女性が健やかに働くためのサポートは、社会的にも、経済的にも重要なテーマといえます。
「第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度」でも女性への健康支援を評価
こうした背景を受け、2025年度から運用が開始された「第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度」でも、女性への健康支援が評価項目に加わっています。具体的には、大項目7「加入者に向けた予防・健康づくりの働きかけ」に、小項目10として「女性特有の健康課題への支援等の性差に応じた健康支援・保健事業」が新設されました。(下図)
健康保険組合の運営という観点でも、女性の健康支援には積極的に取り組みたいところです。
保険者ができる女性の健康支援例
女性の健康支援に取り組みたいと考えている保険者は多いものの、具体的なニーズの把握に苦戦し、アクションにつなげられていないケースは多く見られます。そこで、以下に保険者ができる支援の例をいくつかご紹介します。
①情報提供による当事者および関係者の理解促進
女性本人、そして管理職をはじめとしたそのほかの被保険者へ女性の健康に関する情報を提供しましょう。例えば、ライフステージに応じた女性の不調(「月経前症候群(PMS)」や「更年期障害」など)に関する正しい知識が挙げられます。
情報提供によってリテラシーを高めることで、女性本人は自身の健康増進のためのアクションを起こしやすくなったり、周囲がそれを支援しやすくなったりします。
また、保険者自らによる情報発信のほか、職場で健康教育の機会を設けるよう働きかけるのも有効な方法です。
②がん検診の受診促進
子宮頸がん、乳がんをはじめとした女性特有のがんは、経済産業省も「性差に基づく多数の健康課題のうち、経済損失が短期で発生するもののひとつ」として重視しています。
保険者としては、啓発活動や受診しやすい環境の整備(費用の補助や職域健診の活用奨励など)をとおして、検診の受診率向上を目指したいところです。また、合わせて検診を受けるための休暇をとりやすい雰囲気づくりを促すこともポイントになります。
③若年層へのやせ対策
日本人女性にはやせ型(18.5未満)の方が多くみられ、特に若年女性では約5人に1人が「やせ」に該当することがわかっています。しかもその中には、自分がやせていることを自覚していない方も少なくありません。
過剰なやせは、月経不順や無月経、骨粗しょう症、貧血、免疫力低下などのさまざまな不調を引き起こします。さらに、卵巣機能の低下によって不妊につながる可能性も否めません。研修などを通じて、やせのリスクの正しい理解を促す必要があるでしょう。
④女性が健やかに働ける環境づくり
体調が優れない際に、負担を軽減しながら働ける、もしくは無理せずに休める環境づくりも重要なポイントです。具体的には、フレックスタイム制の導入や生理休暇制度の改善(時間単位で取得できるようにするなど)といった方法があります。
なお、②のがん検診の項目でも触れたように、制度を気兼ねなく利用できる雰囲気づくりも欠かせません。
⑤ライフイベントの支援
女性の中には、キャリアの途中で妊娠・出産という健康状態の大きな変化を伴うライフイベントを経験する方も多くいます。ライフイベントに応じたサポート制度(休暇や休憩の付与、業務の一部制限・免除など)や相談体制の整備は、女性の心身の健康維持の助けになるでしょう。
また、女性からの発信を待つだけではなく、健診データを活用して初期の体調変化を把握に努めて声をかけるというアクションも望まれます。
女性の健康支援は「人的資本」への投資
女性の社会進出が進み、男性と同じように働く方がどんどん増えている今の時代、女性のための健康支援は「未来の医療費抑制」の実現に欠かせないアクションであるといえます。ご紹介したとおり、後期高齢者支援金の減算にもつながるという「追い風」もあるため、保険者として速やかに取り組むべき課題ともいえるでしょう。本記事を参考に、ぜひできることから始めてみてください。
(参考情報)
厚労省 女性の健康づくりhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/woman/
女性特有の健康課題による経済損失の試算と 健康経営の必要性について
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf
女性の健康推進室 ヘルスケアラボ
https://w-health.jp/
日本の女性のやせ過ぎ問題とその栄養対策 Part 1 若い女性のやせ過ぎ問題は待ったなし!
https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2022/010664.php