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2025年度上期JMDCユーザー会|開催レポート

2025年5月、毎年恒例となっているご契約保険者様向けのユーザー会を開催いたしました。

ユーザー会とは
ご契約いただいている保険者様をご招待し、制度や最新動向の解説、JMDCが提供するサービスや保険者様の事例をご紹介する場として、2022年より毎年開催しています。

本年は、5月15日に愛知、16日に大阪、23日に東京で開催し、対面とオンラインをあわせて全国300を超える保険者様から500名以上の方々にご参加いただきました。ご参加いただいた保険者様には、改めて感謝申し上げます。


本記事、「2025年度春JMDCユーザー会|開催レポート」では、2025年度の総合評価指標に関する先進事例の紹介を中心に、JMDCによるデータ分析や保険者支援事業として目指す姿、参加者の声などを交えてお届けします


開会のご挨拶  ユーザー会開催にあたって


まず、ユーザー会冒頭では、保険者支援事業本部 共同本部長の岩井浩一より、ご挨拶をさせていただきました。


日頃よりJMDCのサービスをご利用いただいている保険者様への感謝の意を述べるとともに、遠方からご来場いただいたことへのお礼、また、こうした場で皆さまと直接交流できる機会の大切さについて語りました。
また、「保険者向けの事業は、当社の創業時から続く原点であり、現在においても最大の事業です。これまで私は、JMDCにて医療機関向けの支援事業を中心に、日本最大級の医療データベースを活用した病院経営支援や医薬品の適正使用に取り組んできました。その知見を活かし、今後は保険者の皆さまにも、より価値ある支援を提供していきたい。」と述べ、保険者支援への強い意欲を示しました。


2025年総合評価指標における先進事例のご紹介


本セッションでは、2025年度から適用される総合評価指標の評価配点の見直しについて、保険者支援事業本部 営業部 グループリーダー 須山より、その背景と実務への影響を中心に解説を行いました。
今年度の改定では、健診・特定保健指導に関する配点が大幅に減少する一方で、その他の保健事業への取り組みに関する配点が引き上げられることとなり(下図参照)、保健事業全体の底上げが求められる年となります。


こうした中、事業の効果検証や分析を通じた継続的な改善が、これまで以上に重要視されています。この背景を踏まえた上で、先進的な取り組みを行っている保険者様の事例をご紹介しました。


①ダイセル健康保険組合|禁煙対策事業「卒煙マラソン」


ダイセル健康保険組合では、喫煙率の高さや支援プログラムの活用不足といった課題を背景に、2024年度より新たな禁煙対策事業「卒煙マラソン」を開始しました。
本セッションでは、事務長 北條 誠二様より、組合の課題認識と取組内容、得られた成果についてご紹介いただきました。


■プロフィール


被保険者数

6,748人(男性:5,619人、女性:1,129人)

被扶養者数

6,581人(男性:2,241人、女性:4,340人)

加入事業所数

19カ所

業種形態

化学工業・同類似業

組織体制

職員5名


■背景

ダイセル健康保険組合は、同組合全体の喫煙率が、ホワイト500獲得企業の平均喫煙率よりも高い傾向にあったこと、そして禁煙支援プログラムの利用者が少なかったという課題を抱えていました。


■取組概要

こうした背景を踏まえ、喫煙率の抑制を目的に、2024年度より「第1回卒煙マラソン」という喫煙対策事業を開始しました。
本施策では、喫煙者と非喫煙者からなる3人1組のチームを結成し、アプリを活用しながら3か月間、楽しくコミュニケーションをとりつつ禁煙に取り組む施策です。完走したチームにはPepポイントを付与し、参加促進を図りました。


■チーム制で楽しく禁煙に挑戦──「卒煙マラソン」が示した成果と今後の展望

本施策により、従来の禁煙支援プログラムと比べて、年間参加者数が3か月で4倍となり、禁煙達成者数が大幅に増加しました。施策終了後のアンケートでは、禁煙継続率が41.7%に達するなど、一定の効果が見られました。一方で、6割の卒煙達成者が再び喫煙を始めたことから、施策終了後のフォローアップ体制の重要性も明らかになりました。

今後は喫煙者に限らず、すべての加入者を対象に継続的な行動変容を促す施策を検討しており、Pep Upの「やることリスト」機能を活用した継続支援の導入が予定されています。



②鈴与健康保険組合|Pep Upを軸としたコラボヘルス推進事例


鈴与健康保険組合では、加入事業所の特性を踏まえた柔軟な保健事業に取り組んでいます。本セッションでは、 伴 郁美様より、課題への対応や具体的な施策、得られた成果についてご紹介いただきました。


■プロフィール


被保険者数

13,686人(男性:9,080人、女性:4,606人)

被扶養者数

8,721人(男性:3,125人、女性:5,596人)

加入事業所数

84カ所

業種形態

運輸業

組織体制

職員14名


■背景

鈴与健康保険組合様では、加入者のPep Up登録率の向上が課題となっており、より効果的な登録促進策が求められていました。
特に、事業主による働きかけが不十分であることが、登録率向上を妨げる一因となっていたため、事業主が能動的に勧奨を行えるような仕組みの整備が必要とされていました。


■取組概要

こうした背景を踏まえ、2023年5月より「事業所管理機能」の導入を推進。
この機能は、事業主によるPep Up登録の働きかけを支援するもので、加入者の登録状況や本人確認コードの管理、イベント参加状況などを事業所単位で把握・活用できる仕組みです。


■ 事業主の協力を得た登録促進──「事業所管理機能」が示す可能性と今後の展望

本施策では、無償でウォーキングラリーを実施できる点の訴求と、本人確認コードを事業主が一括管理できる「事業所管理機能」の周知がポイントとなりました。
その結果、登録率の向上および業務工数の削減といった成果が得られました。特に、2025年5月時点で「事業所管理機能」を導入した12事業所の登録率は77.5%と、組合全体の登録率(48.3%)を大きく上回っています。また、加入者からの登録に関する問い合わせも減少しています。

一方で、出向者を含めたウォーキングラリーの実施管理については、現在は組合が代行して設定し、1年以上先までスケジュールをブロックしている状況です。
今後は、記号に縛られず柔軟に参加できるウォーキングラリーの仕組みの導入が期待されています。

Pep Up機能の活用は、健康経営優良法人の認定要件を多く満たすことができるため、事業主にとっても大きなメリットがあります。ぜひ、事業主様にも積極的にご案内いただければと思います。


本事例を通して、事業所単位の取り組みが健保全体の活用促進につながる可能性についても注目が集まりました。事例セッションの進行を担当した保険者支援事業本部 営業部  小坂は次のように話しました。


「2つの事例に共通しているのは、事業所へのアプローチを増やすことで、結果的に健保様全体でのPep Up活用につながっている点です。現場を巻き込み、組織全体へ波及させる仕組みを作る工夫が随所に見られました。
各事業所の登録率を上げることで、健保全体の登録率が高まる——総合健保・単一健保いずれにも展開可能な、非常に実用性の高い取り組みだととらえています。」



JMDCにおけるデータ分析と取組報告


データヘルス研究所の工藤より、JMDCにおけるデータ分析および各種取組についてご報告いたしました。



①健康経営推進への取り組み


昨年12月に「健康経営KPIガイドブック」を発行しています。

近年、健康経営に取り組む企業が増加する一方で、「この取組は本当に健康につながっているのか」といった疑問の声も聞かれるようになりました。

そこで当社では、健康経営認定企業と突合可能な被保険者データを用い、各種検査項目や問診回答を比較。健康経営銘柄およびホワイト500認定企業の健康状態を可視化しました。

その結果、健康経営に積極的に取り組む企業の従業員は、生活習慣や健診項目においてより良好な傾向を示すことが明らかとなりました。



具体例として、「腹囲(分析結果①)」と「HbA1c(分析結果②)」の有所見者の割合を分析しました。いずれの項目でも、健康経営銘柄の企業は、その他の企業と比較して顕著に有所見率が低いことが確認されました。


健康KPIガイドブックのサンプル無料版はこちらからダウンロードいただけます▼

  JMDC健康経営KPIガイドブック データドリブンな健康経営を推進する土台として、健康経営に取り組むすべての方に手に取っていただきたい。データに基づいて、自社の課題把握やターゲット特定、目標値設定をするための基盤となるガイドブックです。 JMDC STORIES


②Pep Up効果検証における取り組み



Pep Upの利活用促進に向けてその効果を検証するため、各種イベントへの参加状況やポイント獲得と、健康年齢の改善度との関係性を追跡し、統計的手法を用いた分析を実施しました。

その結果、1,000pt以上を獲得した群やイベント参加群は、ポイント獲得が少ない群やイベント不参加群に比べて、健康年齢の改善度が高い傾向が明らかとなりました。

特に10,000pt以上を獲得した群では、健康年齢が0.95歳改善するなど、顕著な効果が確認されました。イベント別では、eラーニング利用群が最も高い改善度を示しました。



また、10,000pt以上獲得した群の平均イベント参加回数は5.4回であり、高ポイント獲得者はイベント参加数も多いことがわかりました。
このことから、積極的なイベント参加とポイント獲得が健康改善に寄与している可能性が示唆されます。



さらに、特定保健指導対象者においても同様の傾向が見られました。特に5,000〜8,000pt獲得した群では健康年齢の改善度が最も高く、イベント別ではeラーニング利用群の改善効果が顕著に現れました。

これらの結果から、Pep Upの利活用が健康度の向上に寄与していることが明らかとなり、今後もより効果的な活用が促進されるよう、継続的な分析を進めてまいります。


③歯科健診研究事業への取り組み


厚生労働省が推進する「国民皆歯科健診制度」の検討資料として、歯科健診が健康度に与える影響についてJMDCが受託した研究結果の要点をご紹介しました。


本研究の結果については、以下のプレスリリースでご紹介しています。ぜひご覧ください▼

  JMDC、生涯を通じた歯科健診の受診に向けた取り組み推進のため、レセプトデータ等を活用し、歯科健診の効果について調査を実施 株式会社JMDC(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:野口亮、以下「JMDC」)は、令和6年度厚生労働省事業「歯科健康診査推進事業に係る調査研究等一式」を 株式会社JMDC


JMDCサービスアップデートのご紹介



続いて、「らくらく健助」「個人介入通知」「Pep Up」「JMDC保健指導」など、保険者支援サービスに関する最新の取り組み、保険者様向けの各種情報発信について、各プロダクトの責任者より説明を行いました。


それぞれのサービスにおける今後の方向性や取り組み内容に対しては、参加した保険者様の関心も高く、熱心に耳を傾ける様子が見られました。


その後、保険者支援事業本部 営業部 部長 北澤より、JMDCに対する総合的な満足度に関する評価と、保険者支援事業の今後に向けた方針が示されました。


「JMDCでは、保険者様一人ひとりの状況に寄り添い、課題解決につながる提案型の支援を強化しています。
分析やソリューションの提供にとどまらず、効果検証や改善に基づく継続的な取り組みを通じて、本質的な健康づくりを目指しています。
単なるデータ提供に留まらず、保険者の皆さまの”伴走者”として、信頼関係を大切にしながら、長期的なパートナーシップを築いていきたいと考えています。」


さいごに


ユーザー会開催後には懇親会も実施し、ご参加いただいた保険者様同士、また弊社社員との間で活発な意見交換が行われました。
日頃なかなか接点のない他保険者様との情報共有や、取り組みに関する率直な意見交換の場として、多くの方にご活用いただきました。



また、終了後に実施したアンケートでは、参加した保険者様より以下の感想やご意見が寄せられました。

鈴与健康保険組合様の事業所管理機能の活用事例は非常に参考になりました。今後、自組合でも導入を検討するにあたり、具体的な運用イメージがつかめました。


ダイセル健康保険組合様の卒煙マラソンは、喫煙者だけでなく非喫煙者も巻き込むチーム制という点がユニークで、職場全体で健康を支える仕組みとして興味深かったです。


Pep Upの活用によって健康年齢の改善が見られたという分析結果は非常に示唆に富んでおり、データに基づいた保健事業の重要性を再認識しました。


満足度調査の結果を開示いただき、その背景や今後の対応方針まで説明があったことで、利用者の声に真摯に向き合っていることが伝わり、安心感がありました。


サービス紹介は充実していましたが、実際に運用して苦労した点や乗り越えた工夫など“現場のリアル”ももう少し聞けると、より参考になったと思います。


皆様からお寄せいただいたご意見・ご感想は、今後のサービス改善や情報提供にしっかりと活かしてまいります。

また、事例紹介にご協力いただいた保険者様には、心より御礼申し上げます。そして、本ユーザー会にご参加いただきましたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。

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