
健康経営やコラボヘルスを推進するうえで、「何を目標に取り組むべきか」「従業員の行動変容をどう促すか」と悩む担当者は少なくありません。
JMDCも同様の課題に向き合いながら、自社アセットである「健康年齢*」をKGIに設定し、データを活用した健康課題の可視化と、PHRサービス「Pep Up」を活用した継続的な健康施策を推進。その結果、「健康経営優良法人2026(ホワイト500)」に認定されました。
本記事では、健康経営推進プロジェクトを牽引した健康推進室の保健師・大目に、JMDCが取り組んだ健康経営施策と、その推進を支えたPep Up活用の工夫をご紹介します。
参考)JMDC、「健康経営優良法人 2026 ~ホワイト500~」に認定(2026/3/9プレスリリース)
・「健康年齢®」*
「健康年齢®」は株式会社JMDCの登録商標です。個人の健診結果をもとに、健康状態を年齢で表したもので、 実年齢よりも健康年齢が高いほど、同世代と比べて生活習慣病リスクが高いことを表します。
・健康経営優良法人(ホワイト500)*
「健康経営優良法人認定制度」とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。その中でも、大規模法人部門における健康経営度調査結果の上位500法人が「ホワイト500」として認定されます。
<株式会社JMDC>
健康推進室 保健師
大目 美織
健康経営施策の企画・運営を担当。健康年齢を指標とした健康経営の推進や、Pep Upを活用した健康施策の企画、加入健保とのコラボヘルス推進に携わる。健康経営優良法人2026(ホワイト500)認定に向けた取り組みも担当。
| 企業名 | 株式会社JMDC |
| 従業員数 |
488名(2025年3月31日現在) |
| 健康保険組合 | 関東ITソフトウェア健康保険組合 |
| 企業プロフィール | 「健康で豊かな人生をすべての人に」をビジョンに掲げ、医療ビッグデータを活用したヘルスデータプラットフォーム事業を展開。保険者向けサービスやPHRサービス「Pep Up」などを提供。 |

JMDCは、経営方針「健康で豊かな人生をすべての人に」に基づき、従業員の健康も実現するため、健康経営を推進しています。近年では、健康経営を推進する業界横断型組織「健康経営アライアンス」の代表幹事も務める中、自社の健康経営のさらなる強化を図ることとなりました。そのひとつの目標として設定したのが、ホワイト500の取得です。
2026年における健康経営優良法人制度の改訂では、評価項目(健康経営度調査の設問)として、経営層の関与がより具体的に問われるようになったのが特徴のひとつです。健康経営を効果的に進めるためにはトップのコミットメントが不可欠ですが、このように評価項目としてわかりやすく可視化された結果、経営層を説得しやすくなった側面もあります。
「定期的に、代表取締役社長・野口と、健康施策の企画・運営を担う健康推進室による定例会議を設定し、自社の健康課題や取り組む施策について議論しています。その際、健康経営度調査の設問にも触れ『このように経営層のコミットメントが求められているので、積極的な発信をお願いします』と訴えてきました。結果、現在では年2回の全社会議で、野口から健康経営について発信してもらうようになっています」(大目)

同じく、2026年の健康経営優良法人制度改訂でより重視されるようになったのが、経営方針と連動したKGI・KPIの設定や、データに基づく施策の効果検証・改善です。
JMDCでは、健康経営のKGIとして、JMDCがサービスとして提供する「健康年齢」を設定。その上で、血糖や肥満リスクといった課題を特定し、具体的な施策を検討しました。大目は「ベンチマークの設定に苦労した」と振り返ります。

図:JMDCの健康経営推進体制
JMDCでは、「健康で豊かな人生をすべての人に」を健康経営推進方針に掲げ、経営層・人事・産業保健スタッフが連携して健康経営を推進しています。詳細はJMDC健康経営宣言をご覧ください。
ベンチマークがあれば『基準との差が大きな施策から着手する』といったように、経営層にも施策の優先順位の説明がしやすくなります。しかし、JMDCの従業員の年齢平均は約38.8歳(2024年度)と若く、国や健保の平均年齢と比較しても独自の課題が浮き彫りになりにくい難しさがありました。
「これまでは、健康スコアリングレポートや、「JMDCの健康KPIガイドブック」を活用して健康経営銘柄やホワイト500企業の水準などを参照しながら手探りでベンチマークを設定していました。しかし最近は、自社の『全社データ統合分析基盤』を活用できるようになったことで状況が一変。単に自社の健診データをみるだけではなく、 【健康年齢が実年齢よりも若い人の特徴】や【健康年齢が高い人の生活習慣の特徴】など、高度な分析が可能になり、自社に合ったベンチマークの設定が手軽にできるようになりました」(大目)
さらに、自社の成功事例を顧客(保険者や企業)へ展開することを見据え、 施策の効果検証も重視しており、ビフォー・アフターで成果を検証しやすくなるよう、あらかじめ意識してデータ収集を行っていると言います。

図:コラボヘルスによる特定保健指導実施率向上のあゆみ
加入健保との共同利用を通じて対象者への働きかけを強化。個別面談やPep Upによるインセンティブ施策により、特定保健指導実施率の向上につながった。
施策における健康データ活用を強化するため、2022年にはJMDCが加入する関東ITソフトウェア健康保険組合(以下、加入健保)とのコラボヘルスの一環として、健康データの共同利用*手続きを行いました。
コラボヘルスで特に注力したのが、特定保健指導率向上に向けた取り組みです。
事業主であるJMDCでも対象者へ積極的に働きかけた結果、実施率は2021年〜2024年の3年間で、12.0%から66.6%へと大幅に向上しました。
「実は共同利用の手続きをするまで、健診データの管理は紙ベースの手作業でした。定期健診を委託している加入健保から健診結果を紙で受け取り、目視で産業医面談などを判定して、スタンプを押して管理をする。医療ビッグデータを扱うJMDCでも、つい最近までこうしたアナログ運用だったんですよ。業務効率化の観点でも、共同利用の意義は大きかったです」(大目)
共同利用については、関連記事をご参照ください。
【特定保健指導実施率向上につながった3つの取り組み】
① 対象者一人ひとりとの個別面談
データの共同利用開始後は、加入健保から受け取った対象者情報をもとに、JMDC健康推進室が本人へ直接案内を行う運用に変更。
② 「Pep Up」を活用したインセンティブ施策
特定保健指導への参加を後押しするため、「Pep Up」を活用したポイント付与を実施。
③ 保険者と事業主による役割分担
特定保健指導そのものは加入健保が実施する一方で、JMDCは対象者への働きかけや参加促進を担当。保険者と事業主がそれぞれの役割を明確にしながら連携することで、効率的に施策を推進する。
こうした取り組みを支えたポイントについて次のように振り返ります。
「会話の中で、それぞれの対象者の方に響く話題や伝え方で、特定保健指導への参加を促すようにしています。加入健保であるITSはさまざまな保健事業を展開しており、その情報を事業主である私たちにも丁寧に共有してくれています。こうしたコミュニケーションがあるからこそ、事業主として健保の取り組みに協力できますし、施策の重複を避けながら効果的に役割分担できていると思います」(大目)
さらにJMDCでは、健康診断の受診率100%を確実にするため「健診の早期受診」にも力を入れています。大目はその背景を次のように語ります。

以前は1月から3月の年度末に受診する従業員が半数を占めていたのですが、冬場はインフルエンザなどで体調を崩したり、予約が取り直せずに結果として未受診になってしまうリスクがありました。また、コラボヘルスで健診データを連携してもらうまでに約2ヶ月のタイムラグがあるため、年度末の受診だと未受診者の把握が遅れて取り返しがつきません。そこで、確実に健康診断の受診率100%を達成するためには、年内の早期受診が不可欠だと考えました。
こうした早期受診の促進と連動し、イベントの実施タイミングも工夫していると大目。例えば、健診機関に合わせて、毎年8〜10月頃にイベントを集中開催しています。

図:健診時期に合わせた健康施策の年間実施スケジュール
健康イベントや食生活改善施策、eラーニングなどを実施。年間を通じて継続的な健康づくりを支援している。

健康経営優良法人2026(ホワイト500)を達成したJMDC。一方で、従業員が健康状態の改善を実感できるようになるなど、本質的な健康経営の成果が出てくるのはこれからだと大目は話します。
「国内で健康経営が提唱されるようになって10年余り経ち、求められる健康経営の在り方も変化してきました。今、求められているのは『自社らしい健康経営』だと私は考えています。JMDCでは、自社のプロダクトである『健康年齢』を指標に設定し、『Pep Up』を健康施策の基盤として積極的に活用してきました。今後も、従業員の健康はもちろん、会社への愛着にもつながるような健康経営を推進していきたいと思います」(大目)