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歯科保健事業の目的と進め方とは?


近年、歯科保健指導や歯科受診勧奨が、歯の健康維持だけでなく、生活習慣病予防にも重要な役割を果たしていることが注目されています。歯科健診制度は、健康増進法に基づき、市町村が実施する歯周疾患検診と、一部有害な業務等に従事する者に義務づけられている歯科特殊健康診断等がありますが、職域における歯科健診は、基本的に健康保険組合や企業で自主的な取組みとなっているのが現状です。

第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度の減算基準である共通評価指標の項目として、歯科健診・受診勧奨、歯科保健指導の配点が高くなっていることからも、施策として重要視されております。

本記事では、歯科に関する事業の重要性と歯科保健事業の進め方について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.歯科の医療費はどれくらいのインパクト?
  2. 2.歯周病と全身の健康への影響とは?
  3. 3.歯科疾患のリスクは?
  4. 4.歯科保健事業(歯科健診・受診勧奨、歯科保健指導)の進め方
    1. 4.1.ステップ1
    2. 4.2.ステップ2
    3. 4.3.ステップ3
  5. 5.まとめ


歯科の医療費はどれくらいのインパクト?

JMDCの保有するデータでの分析(2022年度)によると、レセプト種別毎の医療費構成割合では、歯科は12.0%となっています。


レセプト種別毎の医療費構成割合(JMDCデータ 2022年度)


歯科の疾患は予防できるため、この医療費構成割合は無視できない状況であることがわかります。詳細な分析を行うと、う蝕や歯周病が重症化すると、患者当たり医療費は倍以上となり、重度のう蝕や歯周病は歯科受診者の約10%を占めていました。

この分析結果から、歯科疾患においても1次予防としてのセルフケア(ブラッシング等)の啓発や保健指導、2次予防として早期発見と早期治療のための受診勧奨が望ましいことが分かります。

2017年度の国民医療費統計によると、歯科医療費はがんに続いて高額であることも示されており、年齢とともに医療費が増大するため、早期の対策が必要となっています。


歯科疾患と主要慢性疾患の医療費の比較(国民医療費の概要、2017年度)

各種統計からみる歯科疾患の重み | e-ヘルスネット(厚生労働省) より引用



歯周病と全身の健康への影響とは?

歯周病と糖尿病が双方向の関係にあることをご存知の方は多いのではないでしょうか。ではその理由は?というと、歯肉の炎症である歯周病になると、出血や膿を出す歯周ポケットから、炎症に関連した化学物質が血管を通って体中に放出され、その化学物質が血糖値を下げるインスリンの効きを悪くし、糖尿病の発症や進行を促進するからです。また、糖尿病による高血糖の状態が、歯を支える骨の吸収を促進し、歯周病が悪化します。

さらに、歯周病は全身の様々な病気に関わっていることがわかっています。糖尿病以外に、狭心症・心筋梗塞、肺炎、早産や低体重児出産などです。狭心症・心筋梗塞の原因となる動脈硬化を起こした血管壁から、歯周病菌が見つかったという報告があり、脳梗塞も同様の関連により、歯周病と関連する可能性が高いと考えられています。


歯科疾患のリスクは?

歯周病は、下記4つの危険因子が重なることで発症や悪化しやすくなります。

JMDCの保有するデータの分析(2018-2020年度)では、3年以上歯科の受診をしていない対象が、16.5%もおり、そのうち、喫煙やかみ合わせ不良、毎日飲酒、毎日間食している対象者は9.1%、健診値で空腹時血糖やHbA1cが異常値となっている対象者は1.6%いました。

このようなリスクのある対象者が、自覚症状が出てから受診すると、重症化した歯科疾患の医療費が高額となることが予測されます。


歯科未受診者および歯科疾患リスク者数および割合



歯科保健事業(歯科健診・受診勧奨、歯科保健指導)の進め方

歯科保健事業を進めるにあたって、次のようなステップが考えられます。


ステップ1

ポピュレーションアプローチ(集団としての住民・人々(ポピュレーション)に対して健康増進や疾病予防に関する働きかけ(アプローチ)を行うこと)により、う蝕や歯周病は予防可能であること、全身の健康のためにもセルフケア・セルフチェック、3ヶ月に1度の定期受診が重要であること等の知識の普及により意識付けを行います。


ステップ2

歯科健診による、口の中の観察、唾液検査、個別問診等によるスクリーニングの実施と、リスク者に対する歯科医や歯科衛生士による保健指導や受診勧奨の実施、または健診や特定健診の問診等により歯科疾患のリスクとなる喫煙・糖尿病リスク者などを抽出して受診勧奨を実施します。



ステップ3

知識の普及状況、歯科健診受診率、リスク者の歯科の受診状況を把握し、課題に対しての追加の施策を検討・実施します。


具体的な事例として、ポピュレーションアプローチは、情報発信としてe-learningの活用と知識習得者へのインセンティブ付与、食堂で噛むことを促進するメニューの提供、口腔ケアや歯ブラシセットの配布などが行われています。歯科健診の普及においては、健康保険組合と事業主との連携により職場での健診実施・健診の費用補助を実施している事例が多くあります。
特に、職場での歯科健診は、個別に受診する健診よりも希望者が多い傾向にあり、職場以外の会場型健診でも、機関誌やホームページ中心の案内から、ICT(Pep Up)を活用して案内したところ、健診受診率がアップしたケースもあります。
また、歯科健診受診者へポイントインセンティブの付与を行ったところ、受診率が16%程向上したケースもあります。受診勧奨・保健指導においては、上述した歯科疾患のリスクとなる対象を抽出して受診勧奨や歯科健診、保健指導を促進する取り組みが行われています。


まとめ


歯科の医療構成割合は全体の12%であり、う蝕や歯周病が重症化すると医療費が高くなり、さらに歯周病は全身疾患に影響するため、定期的な歯科受診・健診が重要です。歯科の3年以上未受診者は16%、未受診者のうち歯科疾患のリスクが重なっている対象は10%程度いることが想定されます。

歯科疾患の重症化を防ぐためには、セルフケアやセルフチェック、歯科疾患に関する知識を普及しながら、定期的な歯科健診・歯科受診を促進する工夫が必要です。ICT(Pep Up)を活用した案内とポイント付与、健診データを使ったリスク者の抽出など、できることから実施し、まずは自らも歯科健診・歯科受診をして、実体験を通して対策を検討することをおすすめいたします!

また、当社では歯科健診 の受診を促す歯科受診勧奨通知のご用意もございます。ご興味のある方は是非お問い合わせください。



参考情報

各種統計からみる歯科疾患の重み | e-ヘルスネット(厚生労働省)
歯周病と糖尿病の深い関係|国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 
からだの健康は歯とお口から|公益財団法人8020推進財団 


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