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歯科と医療費・生活習慣病との関連を紹介 歯科健診の推進に向けた レセプトデータの大規模分析(令和7年度厚生労働省事業)

歯や口腔の健康は、食事や会話など日常生活に関わるだけでなく、全身の健康との関連についても多くの研究が行われています。 なかでも歯周病は、全身のさまざまな疾患との関連が指摘されています。


例えば、歯周病による炎症が続くと、歯周ポケットから炎症性物質が血流に入り、血糖値を下げるインスリンの働きを低下させることで、糖尿病の発症や重症化に関与すると考えられています。一方で、糖尿病による高血糖の状態は歯周組織の炎症を悪化させ、歯周病を進行させる要因となります。

また、歯周病は糖尿病だけでなく、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、早産・低体重児出産など、さまざまな疾患との関連についても研究が進められています。

 

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保険者に求められる歯科保健事業の推進

こうした背景から、保険者においても歯科保健事業への関心が高まっています。
その重要性は、総合評価指標にも反映されています。

第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度では、総合評価指標の「大項目6 がん検診・歯科健診等の実施状況」において、「歯科健診・受診勧奨(8点)」と「歯科保健指導(5点)」が評価項目となっており、合計13点が配点されています。

 

 

また、厚生労働省Q&Aでは、歯科健診や特定健診の質問票を活用した受診勧奨により、複数の評価項目を同時に満たすことも可能とされています。限られたリソースの中で効率的に取り組みを進めるうえでも、歯科保健事業は検討の対象となる取り組みのひとつです。

参考資料:厚生労働省|第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度に関するQ&A (2027 年度以降支援金)

 

こうした中、JMDCは令和7年度厚生労働省事業「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)」にて、レセプトデータ等を活用し、歯科メインテナンス受療や歯の欠損の有無と、口腔および全身の健康、医療費との関連について分析を実施しました。
本記事では、その分析結果と、保険者が歯科保健事業を検討する際の参考となる情報をお届けします。

 

▼ 2026年7月13日 プレスリリース
JMDC、生涯を通じた歯科健診の推進に向け、レセプトデータ等を活用した歯科健診等の効果に関する調査を実施

【調査概要】

本調査では、JMDCと契約している健康保険組合・共済組合のうち、二次利用許諾が得られている保険者データを用い、分析方針を検討したうえで、分析を行いました。分析結果は、検討委員(歯科・公衆衛生・レセプトデータ分析に関する有識者)と意見聴取を行ったほか、検討委員会にて分析結果の信頼性や妥当性について精査しました。
調査の詳細は、厚生労働省が公表している調査報告書をご参照ください。
参考資料:厚生労働省|「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(レセプトデータを活用した歯科健診の評価分析事業)に係る調査研究等一式(令和7年度委託事業)」


【分析結果①】歯科メインテナンス受療と歯科疾患重症化との関連

まず、歯科メインテナンス受療※1の有無と歯科疾患重症化との関連について、分析結果を紹介します。

 分析方法 傾向スコアマッチングにより交絡因子※2を調整
 分析対象

歯科メインテナンス受療あり群:64,391人
歯科メインテナンス受療なし群:64,391人

 評価期間 2021年度から2024年度(4年間)

 ・※1歯科メインテナンス受療:歯科医院で、歯科疾患管理料の算定とスケーリングなどの処置を伴う保険診療を受けた人

・※2  交絡因子:分析結果に影響を与える可能性のある要因。傾向スコアマッチングは、こうした要因の影響をできるだけそろえて比較するための分析手法です。

1年間で失った歯の本数:受療あり群の方が平均0.03本少ない

2024年度に1年間で失った歯の本数は、受療あり群が0.14本、受療なし群が0.17本となり、受療あり群の方が平均0.03本少ない結果となりました。

歯科疾患が重症化した人の割合:受療あり群の方が3.9ポイント低い

4年間平均の歯科疾患重症化率は、受療あり群が32.6%、受療なし群が36.5%となり、受療あり群の方が3.9ポイント低い結果となりました。

4年間の一人あたり平均歯科医療費:受療あり群の方が約1.4万円高い 

4年間の一人あたり平均歯科医療費は、受療あり群の方が約1.4万円高い結果となりました。

歯科疾患重症化率の推移:受療あり群は低い水準で推移 

アウトカム評価期間である2021〜2024年度の歯科疾患重症化率の推移を見ると、歯科メインテナンス受療あり群は、受療なし群と比べて一貫して低い水準で推移しています(上図、緑のグラフ)。


分析結果①を受けて|
中長期的な視点で歯科メインテナンスを捉えることが重要
 

今回の分析では、歯科メインテナンス受療あり群は、受療なし群と比べて歯科医療費が高い一方で、歯科疾患重症化率や失った歯の本数が少ない傾向がみられました。
また、歯科疾患重症化率は2021〜2024年度の4年間を通じて、受療あり群の方が一貫して低く、継続的な歯科メインテナンス受療が口腔の健康維持に関連している可能性が示されました。

歯科メインテナンスの本質は、短期的な医療費の増減だけで測れるものではありません。4年間の経年データが示す通り、重症化予防や歯の喪失抑制効果に着目し、個人の生涯にわたる健康資産を守る取り組みとして、中長期的な視点から大きな枠組みで捉えることが重要です。(株式会社JMDC 保険者支援事業本部) 


【分析結果②】歯の欠損有無と医療費・生活習慣病との関連

続いて、歯の欠損有無と医療費・生活習慣病との関連について分析結果を紹介します。

 分析方法 傾向スコアマッチングにより交絡因子を調整
 分析対象 歯の欠損なし群(残存歯数24本以上):30,175人
歯の欠損あり群(残存歯数24本未満):30,175人
 評価期間 2016年度から2024年度(9年間)

 

9年間の一人あたり平均医科・調剤医療費:歯の欠損なし群の方が約1.7万円低い

9年間の一人あたり平均医科・調剤医療費は、歯の欠損なし群が21万7,800円、歯の欠損あり群が23万4,900円となり、歯の欠損なし群の方が約1.7万円低い結果となりました。

9年間の一人あたり平均2型糖尿病医療費:歯の欠損なし群の方が約3,400円低い

9年間の一人あたり平均2型糖尿病医療費は、歯の欠損なし群が19,100円、歯の欠損あり群が22,500円となり、歯の欠損なし群の方が約3,400円低い結果となりました。

生活習慣病罹患率:歯の欠損なし群の方が低い

生活習慣病罹患率は、歯の欠損なし群の方が1.1ポイント低い結果となりました(上図)。また、2型糖尿病罹患率、虚血性心疾患罹患率についても、それぞれ1.1ポイント、0.7ポイント低い結果となりました。


分析結果②を受けて|歯科領域は保険事業の根幹をなす重要な取り組み

今回の分析では、歯の欠損なし群は、歯の欠損あり群と比べて、一人あたり平均医科・調剤医療費や2型糖尿病医療費が低く、生活習慣病罹患率も低い結果となりました。歯の欠損の有無と、医療費や生活習慣病との間に関連がみられたことから、口腔の健康状態を維持することが、全身の健康維持にも関わる可能性が示されました。

分析結果が示す通り、保健事業の検討において、歯科領域は単なる口腔内の問題に留まらず、生活習慣病予防や医科医療費適正化の鍵を握る重要なテーマです。
定期受診や歯科健診による歯の喪失予防を、単なる加入者向けの健診メニューの一つとして終わらせず、全身の健康維持と医療費の適正化をマクロな視点から両立させる、保健事業の根幹をなす取り組みとして推進していくことが求められます。
(株式会社JMDC デジタル&データ新規事業本部 保険者支援事業本部) 

 

本調査結果が、自組合の健康課題に応じた歯科保健事業を検討する際の参考となれば幸いです。


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