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医療DXとは?制度の全体像と保険者に求められる役割

2022年から政府横断で推進されている医療DX。オンライン資格確認やマイナ保険証の導入など、これまでも保険者の業務に直結する施策が進められてきました。

本記事では、改めて、医療DXが何を目指しているのか、保険者に何が求められているのかを、最新動向も踏まえて解説します。

【この記事でわかること】

  • 医療DXとは、保健・医療・介護の各段階で発生する情報やデータを、クラウドなどを通じて共有・活用する仕組みを整備する取り組み。業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を進めて医療・ケアの質を向上できるよう、社会、生活の変革を目指す。
  • 具体的な施策としては「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」が推進されている。
  • 保険者は全国医療情報プラットフォーム構築の担い手として、役割を期待されている。「後期高齢者支援金の加算・減算制度」の評価項目にもなっているPHRの体制整備などに積極的に取り組みたい。


医療DXが目指す社会の変革

 

医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(予防、受診、治療、診療報酬の請求、研究開発など)で発生する情報やデータを、クラウドなどの全体最適化された情報基盤を通じて共有・活用できる仕組みを構築する取り組みです。単にシステムを導入するだけでなく、業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民一人ひとりがより良質な医療・ケアを受けられるよう、社会、生活のあり方そのものの変革を目指しています。超高齢化が進展する中、国民の健康寿命を延伸し、社会保障制度の持続可能性を維持することが目的です。具体的には、下表の5項目の実現が目指されています。

 

【医療DXで目指すもの】

1. 国民のさらなる健康増進

国民一人ひとりが自身の生涯にわたる保健・医療・介護情報をPHR(Personal Health Record)として一元的に把握し、予防・健康づくりに活かせるようにする。 

2.切れ目なく質の高い医療等の効率的な提供

本人の同意を前提に、全国の医療機関などが診療情報を共有し、災害時や救急時も含めた診断の質向上と治療の最適化を図る。

3. 医療機関等の業務効率化

デジタル化により事務負担を軽減するとともに、感染症危機時における対応力を向上させる。

4.システム人材等の有効活用

診療報酬改定作業を効率化し、医療情報システムに関わる人材の有効活用やコストの低減、医療保険制度全体の運営コストの削減を進める。

5. 医療情報の二次利用の環境整備

創薬、治験などの医薬産業やヘルスケア産業の振興に貢献する。

 

 

これまでの経緯と今後のスケジュール

厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表(全体像)(令和5年6月2日医療DX推進本部決定)」より引用

 

医療DXの直接的な端緒は、2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる骨太方針です。同方針で、内閣総理大臣を本部長とする医療DX推進本部の設置と、政府を挙げて施策を進める方向性が掲げられました。その後、2023年6月に「医療DXの推進に関する工程表」が決定。現在に至るまで、同表をロードマップとして具体的な取り組みが進められています。

*1 2026年10月、社会保険診療報酬支払基金は、医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(略称:DX審査支払機構)に改組される予定。審査支払機能に加え、医療DXに関するシステム開発・運用母体としての役割も担う組織となる。


具体的な施策「医療DXの三本柱」

医療DXでは、次の3つの施策を「三本柱」として位置づけ、具体的な取り組みを推進しています。

 


1. 全国医療情報プラットフォームの創設

厚生労働省「全国医療情報プラットフォームの概要」より引用

 

オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、保健・医療・介護情報を全国的に共有できる基盤を構築する取り組みです。患者は同意のもとで、過去の薬剤情報や健診結果を医師・薬剤師と共有し、より適切な医療を受けられるようになります。

共有される主な情報は、レセプト、特定健診情報、予防接種、電子処方箋、電子カルテ情報などです。


2. 電子カルテ情報の標準化等

電子カルテシステムのデータ仕様や項目を標準化し、医療機関間の情報共有を円滑にします。患者が複数の医療機関を受診する際に重複した検査や治療が行われるリスクが低減し、また災害時や救急時にも適切な医療を受けられるようになります。

さらに、この標準規格に準拠したクラウドベースの標準型電子カルテの整備も進められています。目標として、2026年度中の完成、遅くとも2030年までにおおむねすべての医療機関での導入が掲げられています。


3. 診療報酬改定DX

デジタル技術を活用し、診療報酬改定時の作業の一本化・分散・平準化を図ります。2年に1度の診療報酬改定に伴う、医療機関やシステムベンダの膨大な作業負担の軽減を目指すものです。

具体的には、報酬計算の機能を共通化する共通算定モジュールの開発・運用や、診療報酬改定施行時期の後ろ倒し(4月から6月へ)などが挙げられます。

 

【最新動向】プラットフォーム構築の担い手・保険者が押さえるべきポイント

厚生労働省医政局「医療DXの推進に関する工程表について(報告)」(第100回社会保障審議会医療部会資料)より抜粋

 

医療DXの三本柱のうち、保険者と特に関連が深いのは、全国医療情報プラットフォームです。保険者は同プラットフォーム構築の重要な担い手として位置づけられていると同時に、将来的には、医療費削減や事務負担軽減など、同プラットフォームからメリットを得られる立場でもあると説明されています。これまで対応が求められてきたオンライン資格確認やマイナ保険証への移行も、同プラットフォームの整備に向けた取り組みの一環です。

引き続きプラットフォームの整備が進められる中、直近で保険者業務に影響のある施策として、特に押さえておきたい最新動向には以下があります。


健康保険証の暫定措置終了

厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」(第212回社会保障審議会医療保険部会資料)より引用

 

マイナ保険証への移行に向け、健康保険証は2024年12月2日以降に新規発行が停止されています。ただし、暫定措置として、加入者が有効期限を過ぎた保険証を誤って医療機関等に提示した場合でも、通常の保険診療が受けられるようになっていました。この暫定措置が2026年7月末に終了したため、保険者にも周知対応が求められています。

なお、厚生労働省の資料によると、マイナ保険証の利用率は2026年4月時点で68.15%に。また、全保険制度において、加入者数に占めるマイナ保険証の利用登録数の割合は70%となっています*2。

 

*2 厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」(第212回社会保障審議会医療保険部会資料)


電子カルテ情報共有サービスの運用開始

社会保険診療報酬支払基金「電子カルテ情報共有サービスに係る健診結果報告書リクエスト・ダウンロード機能 保険者運用ガイド 1.2版(令和8年1月7日)」より引用

 

全国医療情報プラットフォームの一部として整備されている「電子カルテ情報共有サービス」では、健診結果報告書も共有対象となっています。今後、同サービスに連携された健診結果報告書は、特定健診等データ収集システム・特定健診等データ管理システムを通じて、保険者が取得できるようになる予定です。例えば、事業者が行う事業者健診や学校職員健診の特定健診に関する項目を取得できるようになります。

なお、同サービスの仕組みがある程度確立した段階で、サービスの維持費用の一部を保険者が負担する方針が示されています(第189回社会保障審議会医療保険部会)。負担額は医療保険者等の加入者1人当たり、月額約1.25円程度の試算です。


PHRの体制整備

厚生労働省保険局保険課「第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度について(2027~2029年度)」より引用

 

PHRの体制整備に向けて保険者に期待される役割は大きく、近年では「後期高齢者支援金の加算・減算制度」でも、総合評価指標のひとつとして扱いが強化されています。2027〜2029年度では「《大項目4》デジタル活用、 予防健康づくりの体制整備」の中に「小項目2 PHRの体制整備①」「小項目3 PHRの体制整備②」が盛り込まれています。

 

関連記事)

2027年度からの後期高齢者支援金「加算・減算制度」の注意点を解説|評価対象になる・ならないケース

【最新動向】2027年度「後期高齢者支援金の加算・減算制度改正」保険者が押さえておきたいポイント


まとめ

医療DXは国民、すなわち加入者のための政策であると同時に、社会保険制度の持続可能性を維持する取り組みでもあります。保険者にとっては業務への影響も少なくありませんが、受動的に対応するだけでなく、ぜひ能動的に求められる役割を果たしていきたいところです。最新動向を注視しつつ、制度改正などに着実に対応できるようにしておきましょう。

 

なお、2026年8月27日に開催された社会保障審議会医療部会でも「医療DXの進捗状況等」が報告されており、医療DXに関する取り組みは引き続き進められています。

厚生労働省「第130回社会保障審議会医療部会 資料1 医療DXの進捗状況等について(報告)」 令和8年8月27日


【参考情報】

医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム第1回資料【資料1】医療DXについて

厚生労働省医政局「医療DXの推進に関する工程表について(報告)」第100回社会保障審議会医療部会資料

厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表(全体像)(令和5年6月2日医療DX推進本部決定)」

厚生労働省「全国医療情報プラットフォームの概要」

経済財政運営と改革の基本方針 2025~「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ~

電子カルテ情報共有サービスで連携された健診結果報告書をリクエスト・ダウンロードされる保険者の方|社会保険診療報酬支払基金

社会保険診療報酬支払基金「電子カルテ情報共有サービスに係る健診結果報告書リクエスト・ダウンロード機能 保険者運用ガイド 1.2版(令和8年1月7日)」

厚生労働省 医政局 特定医薬品開発支援・医療情報参事官室「医療DXの推進等について」(第189回社会保障審議会医療保険部会資料)

第189回医療保険部会議事録|厚生労働省

厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」(第212回社会保障審議会医療保険部会資料)

厚生労働省保険局保険課「第4期後期高齢者支援金の加算・減算制度について(2027~2029年度)」

令和8年10月より支払基金はDX審査支払機構になります|社会保険診療報酬支払基金

厚生労働省「第130回社会保障審議会医療部会 資料1 医療DXの進捗状況等について(報告)」 令和8年8月27日

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