
保険者の生成AI活用実態調査|回答者の74.2%が業務利用、8割超がAI分析に期待
2026年7月、厚生労働省は「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」を公表し、「AI予防医療モデル」の構築を打ち出しました。保険者が積み重ねてきた保健事業の知見を体系化し、AIによる健康課題の分析や保健事業の選択肢の提示を可能にする仕組みを目指すものです。
同年9月に示された令和9年度予算概算要求では、その構築に50億円が要求されています。保健事業においても、AI活用が政策のテーマになりつつあります。
JMDC STORIES編集部では、保険者の実態や課題を調査する「保険者リサーチ」をスタートしました。
第1回は、健康保険組合・共済組合などの保険者の担当者を対象に、生成AIの利用状況や活用意向に関するアンケート調査を実施しました。
その結果、回答者の7割超(74.2%)がすでに業務で生成AIを利用していることがわかりました。また、「AIが健診やレセプト情報を分析し、結果を提示すること」には回答者の8割超(84.1%)が期待すると回答しました。
本記事では、アンケート結果をもとに、保険者における生成AI活用の現状と、医療費・健診データ分析への期待、安心して活用するための条件について紹介します。
※本調査は、保険者向けメルマガを通じて回答者を募集したインターネット調査です。生成 AIに関心のある層が中心である可能性があり、保険者全体を代表する結果ではありません。
※本記事では、ChatGPT、Microsoft Copilot、Geminiなど、文章の作成や要約などを行うAIサービスを「生成AI」、データ分析などに用いられるものも含めたAI全般を「AI」と表記しています。調査では、設問ごとに「生成AI(ChatGPT等)」「AI」「AI(生成AI等)」と表記して尋ねています。
※冒頭の政策に関する記載は、厚生労働省「令和9年度予算概算要求(保険局関係)参考資料」p.21(第214回社会保障審議会医療保険部会、2026年9月3日) によります。
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保険者における生成AIの利用状況|回答者の74.2%が業務で利用
生成AI(ChatGPT等)の認知・利用状況を尋ねたところ、7割超(74.2%)がすでに業務で生成AIを利用していることがわかりました。回答者全体では、「日常的に業務で利用している」が41.1%、「たまに(試行的に)利用している」が33.1%でした。

【図1|保険者における生成AIの認知・利用状況(n=151)】
生成AIを業務で利用している回答者からは、「試行段階であり、意図した出力を効率的に得るための指示のコツが全然つかめていない。自己流でAIと対話を重ねるのは結構ストレスがかかる。」といった声も寄せられ、保険者業務における生成AIの利用が見られる一方で、業務への定着や活用方法については、まだ試行錯誤が続いている様子もうかがえます。
保険者が利用している生成AIサービス
次に、利用している生成AIサービスを尋ねたところ、Microsoft Copilot(58.0%)が最も多く、ChatGPT(38.4%)、Gemini(35.7%)が続きました。
上位3サービスに次いで、「自組織独自の生成AI」を利用している人も14.3%いました。

【図2|利用している生成AIサービス(複数回答・業務で生成AIを利用している人・n=112)】
組織としての生成AI利用方針
生成AIを業務で利用している回答者(n=112)に、所属組織における生成AIの利用方針を尋ねたところ、8割超(81.3%)が、「積極的に推進・推奨」または「容認」されていると回答しました。

【図3|組織としての生成AI利用方針(業務で生成AIを利用している人・n=112)】
組織の方針による利用状況の違いや、今後生成AIを使いたい業務など、
記事では紹介していないデータをまとめています 。
では、実際に保険者業務のどのような場面で、生成AIが活用されているのかを見ていきます。
保険者業務における生成AIの活用用途
生成AIを業務で利用している回答者(n=112)に、実際にどのような業務で生成AIを活用しているかを尋ねたところ、9割近くが「文書作成・校正・要約・情報収集」(86.6%)に活用しており、最も多い結果となりました。次いで「加入者・事業所向け問い合わせ対応」(50.0%)、「会議の議事録作成・文字起こし」(43.8%)が続きました。

【図4|生成AIの活用用途(複数回答・業務で生成AIを利用している人・n=112)】
生成AIを業務で利用している回答者から寄せられた主な活用例
- 官公庁からの通知やメールの要約
- 組合会議事録のドラフト作成
- 適用事業所向け通知文書の作成・推敲
- 保健事業の企画書や説明資料の作成
- 健康事業推進委員会向けスライド資料の作成
- 問い合わせ対応用のチャットボット
- Pep Upのお知らせやバナーの作成
一方、医療費・健診データ分析(10.7%)や申請書・レセプト点検(3.6%)に活用している人は少数でした。生成AIは文書作成や情報整理などの日常業務を中心に活用されていることがわかりました。
生成AIを利用していない理由|2人に1人が「使い方が分からない」
また、生成AIを知っているが、現在業務で利用していない人(n=38) に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「何に使えるのか、使い方が分からない」で2人に1人(50.0%)が挙げていました。次いで「情報漏洩やセキュリティが不安」(47.4%)、「試したいが、時間や環境の余裕がない」(42.1%)が続きました。

【図5|生成AIを業務で利用していない理由(複数回答・生成AIを知っているが、現在業務で利用していない人・n=38) 】
医療費・健診データ分析|回答者の8割超がAIによる分析に期待
これまで見てきたように、生成AIは文書作成や要約などの業務では多く活用されている一方、医療費・健診データ分析については、次のような結果が見られました。

【図6|AIによる医療費・健診データ分析への期待度(n=151)】
「AIが健診やレセプト情報を分析し、結果を提示すること」については、回答者の8割超(84.1%)が期待すると回答し、高い関心が寄せられていることがわかります。(「非常に期待する」32.5%、「ある程度期待する」51.7%の合計)
※この設問は、生成AIに限らずAI全般について尋ねています。
医療費・健診データ分析について、回答者からは次のような声が寄せられました。
「分析ツールから抽出したエクセルデータが大量であってもAIを使うと容易に分析できる。属性分析・数値の集計などは便利」(生成AIを日常的に利用し、医療費・健診データ分析にもすでに活用している回答者)
また、回答者からは活用に慎重な声もありました。
「法人契約の生成AIとはいえ、高度な個人情報を読み込ませることには不安があるのでレセプト分析等はまだ判断できない」(生成AIは試行段階で、医療費・健診データ分析は今後活用したいと答えた回答者)
「医療費分析やハイリスク等で分析で使用したいが、個人情報が含まれるためどの程度使用をしていいかわからない」(同じく試行段階で、医療費・健診データ分析はまだ様子見の回答者)
安心して活用するための条件|最多は「セキュリティ対策」(82.1%)
では、保険者の担当者は、どのような条件が整えば安心してAI(生成AI等)を活用できると考えているのでしょうか。

【図7|AI(生成AI等)を安心して活用・導入するために重要だと思う条件(複数回答・最大3つまで・n=151)】
AI(生成AI等)を安心して活用・導入するために重要だと思う条件を尋ねたところ、最も多かったのは「セキュリティ対策が万全であること(情報漏洩防止など)」(82.1%)でした。
前章で紹介した自由記述でも、医療費・健診データ分析への期待がある一方で、個人情報の取り扱いや利用範囲への不安から、活用に慎重な姿勢が見られました。
保険者における生成AI活用の現在地
今回の調査では、回答者の74.2%が生成AIを業務で利用しており、文書作成・校正・要約・情報収集や、問い合わせ対応、議事録作成など、さまざまな業務で活用されていることがわかりました。医療費・健診データ分析では、AIによる分析に8割超(84.1%)が期待を寄せる一方で、個人情報の取り扱いへの不安から慎重な声も寄せられました。
データヘルスコンサルタントの視点
本調査の結果を、保険者支援の現場からどう見るか。JMDCのデータヘルスコンサルタントに聞きました。

株式会社JMDC 保険者支援事業本部
データヘルスコンサルティング部
部長 工藤 大
今回の調査では、日常業務での生成AI活用が進む一方、医療費や健診データの分析といった本格的な活用は、まだこれからという実態が見えてきました。国が「AI予防医療モデル」の構築を進めるなど、データヘルスにおけるAI活用への期待が高まるなかで、現場には理想と現実のギャップがあることも事実です。
「加入者の健康のために、もっと意義のある保健事業を行いたい」。その想いがありながら、「医療職やデータを扱える職員がいない」「業務に追われ、データを読み解く余裕がない」という壁に直面されている保険者の皆様は、決して少なくないと思います。
しかし、その「やりたくてもできなかった」を、AIが変えようとしています。データを確かな根拠として、効果的な保健事業の選択肢をAIがアシストしてくれる時代は、もう目の前に来ています。
JMDCは、データヘルスの専門家として、健康経営やコラボヘルス、医療に真摯に向き合う保険者の皆様に、どこまでも寄り添ってまいります。誰もが安心・信頼してAIを活用できるよう、時にはリードし、時には伴走しながら、支援をさらに強化してまいります。
詳細データレポートのご案内
本記事では調査結果の一部を紹介しました。詳細データレポートでは、記事では紹介していない次のようなデータを掲載しています。
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医療費・健診データ分析など、業務ごとに見た今後の活用意向
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生成AIの利用による効果と課題、利用頻度による違い
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加入者規模別に見た、生成AIの利用状況(参考値)
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生成AIを業務で利用している人・していない人で比べた、安心して活用するための条件
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調査結果から整理した、活用を検討するときの3つの確認ポイント
自組織の状況と照らし合わせる際や、組織内での検討資料としてご活用ください。
調査概要
| 調査名 | 保険者の生成AI活用実態調査 (JMDC STORIES 保険者リサーチ Vol.1) |
| 調査主体 | 株式会社JMDC(JMDC STORIES編集部) |
| 調査対象 | 健康保険組合、共済組合などの保険者の担当者(有効回答数 n=151)
【保険者種別内訳】 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 調査期間 | 2026年9月2日~9月8日 |
| 回答者の業種 |
製造業(43.0%)、卸売・小売業(13.9%)、金融・保険業(8.6%)、運輸・郵便業(7.3%)、建設業(5.3%)、上記以外(21.9%) ※「上記以外」は、医療・福祉、情報通信業、サービス業など10以上の業種の合計です。製造業には、自由記述で回答された「電気機器メーカー」1件を含みます。 |
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普段関与する |
データヘルス計画・保健事業の企画立案(78.1%)/加入者向け通知文・案内文の作成(71.5%)/加入者・事業所からの問い合わせ対応(67.5%)/分析レポート・報告資料の作成(65.6%)/医療費・健診データの集計・分析(62.3%)/会議の議事録・文書作成(58.9%)/特定保健指導・保健指導の実務(45.0%)/申請書・レセプト等の点検(31.8%) |
※回答者の募集方法については、冒頭の注記をご参照ください。
※割合は小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の合計が100%や合計値と一致しない場合があります。
※本記事および詳細データレポートのデータを引用する場合は、出典として「株式会社JMDC『保険者の生成AI活用実態調査』(2026年9月実施)」と明記してください。



