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「攻めの予防医療」とは?U.E.N.O.Planの概要と保険者に求められる役割

2026年7月、厚生労働省による「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」(以下、U.E.N.O.Plan)が公表されました。

同省が取り組む重点施策の詳細が説明される中で、保険者業務に影響する制度改正の検討内容も明らかにされています。

 

本記事では、同プランの全体像を押さえながら、保険者への影響が大きい内容を中心にピックアップして解説します。

【この記事でわかること】

  1. U.E.N.O.Planでは「攻めの予防医療」で厚生労働省が取り組む6つの重点領域と、取り組みの共通基盤を整備するための施策が具体的に掲げられている
  2. 6つの重点領域のひとつ「歯科保健」では、簡易歯科健診の制度化を進めると明記。令和9年以降には、後期高齢者支援金の加算・減算制度の項目に簡易歯科健診を追加することも検討されている。
  3. 共通した基盤となる取り組みでは、データヘルスを基盤とした「AI予防医療モデル」の構築が掲げられた。同モデルの活用と成果創出を促すような保険者インセンティブの在り方が検討される。


U.E.N.O.Planとは?「攻めの予防医療」の全体像

2026年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)では、近年、政府が推進してきた「攻めの予防医療」が改めて掲げられました。これを受けて厚生労働省から公表されたのがU.E.N.O.Planです。

「U.E.N.O」は、健康づくりに必要な4つの要素──Understand(理解する)・Exercise(体を動かす)・Nourish(栄養をとる)・Optimize(最適化する)の頭文字を組み合わせた名称。「よりよい健康のために、理解し、運動し、栄養を取り入れ、最適化する」といった意味になっています。

同プランでは「攻めの予防医療」で厚生労働省が取り組む6つの重点領域を掲げるとともに、取り組みの共通基盤を整備するための施策についても具体的に言及しています。

 


U.E.N.O.Planにおける「攻め」「予防医療」とは

同プランの基本理念では「攻めとは」「予防医療とは」といった用語の定義にかかわる考え方が改めて整理されました。

「攻め」という表現では、従来のような、国民の自主的な行動変容をサポートする受動的なスタンスだけでは不十分な場合に、行政や保険者などが能動的に介入していく姿勢が意図されています。また「予防医療」については、病気を未然に防ぐ「一次予防」(個人の日常の心がけなど)から、早期発見・早期治療につなげる「二次予防」(企業や自治体による健診・検診など)、発症後のフェーズでの「三次予防」(重症化予防のための受診勧奨、社会復帰に向けたリハビリ)まで、幅広く含まれると説明されています。

 

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U.E.N.O.Plan「攻めの予防医療」の6つの重点領域

U . E . N . O. P l a n~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ 概要 : U n d e r s t a n d , E x e r c i s e , N o u r i s h a n d O p t i m i z e f o r B e t t e r H e a l t h別添1.概要より引用

 

6つの重点領域については、それぞれ以下のとおり、取り組みの方向性と具体的な施策が掲げられています。


1.栄養・食生活|疾病リスク低減のための「食事ガイド」作成

令和8年度中に、生活習慣病(悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患、糖尿病など)のリスクを低減するための「食事ガイド」を作成し、国民に周知するとしています。従来のような専門職向けのものではなく、国民に広く活用されるような公表物が想定されています。

 


2.がん・循環器病等|THP指針改正など受診勧奨強化

「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」別添2.参考資料

 

目標として、がんは令和10年度までに検診受診率60%・精密検査受診率90%の達成、循環器病は令和11年度までに特定健診受診率70%の達成が掲げられました。この目標達成に向け、「普及・啓発」「検診・健診の受診促進」「結果に応じた適切な受診」といったプロセスごとに、具体的な取り組みが整理されています。一例として、職場におけるがん検診や精密検査の受診勧奨を強化するため、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針)の改正が検討されています。

 

2026年8月21日に公表された検討会報告書では、疾病の早期発見・早期治療に向け、医療保険者等との連携を強化する方向性が示されました。具体的には、事業者と保険者が連携した健診機会の活用や、検診結果に応じた精密検査の受診勧奨などが挙げられています。

厚生労働省「事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」報告書(2026年8月21日公表)

 

また、保険者に関わる内容として、コラボヘルスを通じたがん検診の受診勧奨や、特定健診受診率の向上に関する先進事例の横展開なども掲げられています。


3.歯科保健|令和9年度~簡易歯科健診の制度化を推進

「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」別添2.参考資料

 

国民皆歯科健診の実現を目指し、令和9年度から自治体・保険者の双方で「簡易歯科健診」の制度化に向けた取り組みを進めると明記されました。令和8年度からパイロット事業が開始され、令和9年度以降には、保険者による後期高齢者支援金の加算・減算制度の項目に簡易歯科健診を追加することも検討。さらに、令和10年度以降の実績を踏まえた追加の普及策も検討されます。


4.認知症|早期診断・治療・支援のモデル構築

認知症の早期診断、早期治療・支援に向けたモデルの構築を推進するとしています。

具体的な取り組みとして、負担の大きい従来検査(髄液・PET検査)に代わる新たな検査技術(血液バイオマーカーなど)のモデル的な活用や、福祉的支援・社会参加へ早期につなぐ仕組みの整備などが挙げられています。


5.リハビリテーション|切れ目ないリハビリテーションの提供

予防・医療・介護を通じて切れ目なくリハビリテーションを提供するための取り組みを推進するとしています。一例として、科学的な分析を活用してリハビリテーションへの主体的な参加を支援するポータルサイトの作成などが挙げられています。


6.性差に由来するヘルスケア|更年期の健康課題

「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」別添2.参考資料

 

「攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議」のとりまとめを踏まえ、更年期世代の女性に対応する医療の強化、中高年期の男性における健康課題への対応、「女性の健康総合センター」の機能強化などが掲げられました。

例として、一般診療医向けガイダンスの作成や、女性が不調時に症状を記録して受診に活用できるツールの開発などが挙げられています。


6つの重点領域に共通する3つの取り組み

以上6つの重点領域に共通した基盤となる取り組みとして、保険者・地域中小企業などによる予防・健康づくりを推進するための施策が掲げられています。


「AI予防医療モデル」の構築

「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」別添2.参考資料

 

「攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議の概要」で触れられていた「予防医療モデル」の構築が、AI活用の要素をより強調する形で改めて掲げられました。

同モデル構築の狙いは、保険者や事業主がレセプト・健診結果などのデータを踏まえ、それぞれの健康課題に応じた保健事業を効果的かつ効率的に実施できるようにすることです。将来的には、AIによる健康課題の分析や、効果的な保健事業の選択肢の提示なども可能となるようなあり方が目指されています。

モデルの精度向上のためには、保険者によるデータの集積・活用がカギになります。このため、保険者によるモデルの活用や、それによる成果創出を促すような保険者インセンティブの在り方が検討されます。

 

厚生労働省の令和9年度予算概算要求資料によると、令和9年度に基盤整備を行った後、令和10〜11年度に試行運用を経て、令和12年度には本格運用が予定されており、第5期後期高齢者支援金の加算・減算制度等への反映もこの段階で見込まれています。


個人インセンティブに係る取組の推進

2026年3月に改正された「個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン」の周知などを通じて、好事例の横展開を進めるとしています。同ガイドラインでは、ヘルスリテラシー向上のためのアプローチ方法や、健康づくりへの関心を引き出す報奨の設定などが取り上げられており、保険者によるインセンティブ設定についても詳細に説明されています。


コラボヘルスの推進

地域の中小企業による予防・健康づくり(周知、適切な医療へつなぐための情報提供など)を支援するため、コラボヘルスを推進するとしています。

 

なお、令和8年9月に公表された令和9年度予算概算要求(保険局関係)では、これら6領域の取り組み全体に向けて約493億円が要求されており、U.E.N.O.Planの構想が具体的な予算措置として動き出していることがうかがえます。


保険者に期待される役割

U.E.N.O.Planでは、「攻めの予防医療」において保険者に期待される役割が間接的に示されたといえます。また、より実質的な業務への影響として、国民皆歯科健診の具体化やAI予防医療モデルの構築に向け、保険者インセンティブのあり方が検討されている点は押さえておきたいところです。引き続き、今後の動向を注視しておきましょう。


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