「法定給付」「付加給付」とは? 保険給付の理解と再考は健保運営改善のカギ

「法定給付」「付加給付」とは? 保険給付の理解と再考は健保運営改善のカギ

 

健康保険では、被保険者が業務以外の場面でケガや病気をしたり、亡くなったり、出産したりしたときに「保険給付」を行います。この保険給付には、法律で定められた給付である「法定給付」だけでなく、保険者が独自のルールに沿って行う「付加給付」もあるため、保険者によってその内容はさまざまです。

今回は、そんな保険給付の基礎知識と、今後の健保の運営を検討するうえでも知っておきたい「近年の付加給付の動向」についてご紹介します。

 

法定給付とは

 

法定給付とは、健康保険法ですべての保険者に義務づけられている給付のことです。具体的には、以下のようなものがあります。

 

<病気やケガへの給付>

  • 療養の給付:医療費の自己負担分以外は保険者が負担します。

※健康診断や予防注射・内服、美容整形などは対象外です。
 

  • 入院時食事療養費:入院時の食事について、1食あたり490円(住民税非課税世帯など特例あり)を超えた金額は保険者が負担します。
     
  • 訪問看護療養費:訪問看護サービスを利用した場合、自己負担分以外は保険者が負担します。
     
  • 移送費:歩行が難しい状態で入院・転院が必要な場合は、交通費は全額を給付します(給付条件あり)。
     
  • 傷病手当金:病気やケガで休業した場合、1日あたり「支給開始月以前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30×2/3」の金額が、最大1年6ヶ月間給付されます。
     

<出産時の給付>

  • 出産手当金:出産日(予定より出産が遅れた場合は出産予定日)の42日前(双児以上は98日前)から出産日の翌日以降56日まで、休業期間に給付します。給付金額は「支給開始日以前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3」です。
     
  • 出産育児一時金:子どもひとりにつき50万円を給付します。

 

<死亡時の給付>

 埋葬費:50,000円を給付します。


「現物」給付と「現金」給付

上記のような保険者からの給付は、現物給付と現金給付とに分けられます。

現物給付:診療や投薬といった「医療サービス」を支給すること

現金給付:治療のかかった費用や出産育児一時金など現金で支給すること


勤務中・通勤途中のケガは「労災保険」で補償される

 上記のような健康保険の給付は、「業務以外の場面」で生じた病気やケガを対象とします。勤務中や通勤途中のケガに対する補償は「労災保険」によって行われ、加入者はこれと併せて健康保険から給付を受けることはできません。

 

付加給付とは

 

付加給付とは、保険者が任意で設定している給付のことです。内容は健保によって異なりますが、例えば以下のようなものが挙げられます。

 
  • 高額療養費制度で定められた自己負担金のうちの一部を補助する。
  • 出産育児一時金に上乗せする。
  • 傷病手当金や出産手当金の給付基準を(給付金額が上がるように)変更する。
  • 傷病手当金の支払い期間を延長する。

 

付加給付は見直し&廃止の傾向に

 

上記の付加給付は、保険者の財政状況や運営方針を背景にルールが設定されています。そのため、多くの健保で収入減・支出増となっている近年では、付加給付の見直しや廃止が進められる傾向にあります。

 

例えば、傷病手当付加金(法定給付の金額に上乗せする制度)は多くの保険者が廃止しており、現在も実施している健保は全体の3割程度しかありません。そのほかにも、延長傷病手当金(1年6ヶ月の法定給付が終了した後も給付を継続する制度)や、出産手当金・出産育児一時金の上乗せの廃止も目立ちます。
なお、日本経済新聞2021年4月16日付けで報じた全国の健保組合の調査によると、2019年時点で付加給を一切行っていない健保は全体の17%に上ることがわかりました。

こうした付加給付の見直しや廃止が、健保の収支状況の改善に寄与しているケースは多数見られます。「過剰な備え」を削り、「真に必要な備え」をしっかりと継続していける体制づくりは、これからの保険者にとって重要な課題といえるでしょう。  

一方で、中には新たに出産手当金付加金をスタートする健保も。単に周りと足並みを揃えるのではなく、「自組合にとって必要な給付」を見極めることも求められています。

 

被保険者に必要な保険給付の再考を

 

法定給付と付加給付の知識をつけること、および新設の可能性を含めて付加給付の見直しを進めることは、よりよい健保運営を実現する重要な1歩となるはずです。ぜひこの機会に、保険給付の内容と被保険者のニーズを整理することから始めてみてはいかがでしょうか?


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