
OTC類似薬の保険給付見直しとは?2027年3月施行に向けて保険者が押さえたいポイント
2026年6月、「健康保険法等の一部を改正する法律」が公布され、OTC医薬品との代替性が高い医療用医薬品について、薬剤費の一部を保険給付の対象外とする「一部保険外療養」が創設されることとなりました。2027年3月の施行が予定されています。
今回の見直しは、対象となる医薬品を一律に保険給付の対象外とするものではありません。患者の属性や治療上の必要性などに応じて、別途負担を求めないケースがもうけられています。
本記事では、2026年9月16日までに公表された厚生労働省資料をもとに、OTC類似薬の保険給付見直しの仕組みや対象となる医薬品、患者負担への配慮措置を整理するとともに、施行に向けて保険者が確認しておきたいポイントを解説します。
2027年3月から施行予定|OTC類似薬の保険給付見直しとは
OTC類似薬とは、一般に、OTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)と有効成分などが共通する医療用医薬品を指します。
今回の見直しは、医療用医薬品の給付を受ける患者とOTC医薬品で対応している患者との公平性の確保や、現役世代を中心とする保険料負担上昇の抑制の観点から行われるものです。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第213回社会保障審議会医療保険部会、2026年8月27日)
具体的には、対象となる医薬品を保険給付から一律に除外するのではなく、薬剤費の一部を患者が「特別の料金」として負担する仕組みです。
また、対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考えられる方などについては、配慮措置が検討されています。対象や配慮措置については後述します。
対象となるOTC類似薬は77成分・1,042品目
一部保険外療養の対象となるのは、OTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)と有効成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品です。
対象となる医薬品として、77成分・1,042品目(2026年8月1日時点) が示されています。主な対応症状には、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状、腰痛・肩こり、皮膚のかゆみ・乾燥肌などがあります。
ただし、77成分に該当する医薬品であっても、すべての処方で「特別の料金」が生じるわけではありません。OTC医薬品では対応できない効能・効果を目的として処方される場合などは、別途負担の対象外となります。

患者負担はどう変わる?「特別の料金」の仕組み
対象となる医薬品が処方された場合、患者は通常の窓口負担に加えて、対象薬剤の薬剤費の4分の1を「特別の料金」として負担します。
残りの4分の3の薬剤費には医療保険が適用され、その部分について通常の自己負担割合(1~3割)に応じた負担が生じます。なお、「特別の料金」に対する消費税の取扱いについては、2026年9月時点で政府内において検討中です。
一方、診察や検査、調剤などの技術料については、これまでどおり医療保険が適用されます。
別途負担を求めないケースと配慮措置
今回の見直しでは、必要な受診機会を確保する観点から、患者の属性や治療上の必要性などに応じて、対象医薬品が処方された場合でも「特別の料金」を求めないケースが設けられる方向です。
がんの治療に関連する使用や入院患者などについては8月6日の中間とりまとめですでに基準が整理されている一方、こどもや生活保護受給者の範囲については、2026年9月16日の医療保険部会のとりまとめで、それぞれ別途負担の対象外とすることが整理されています。
対象となる患者・療養の具体的な範囲は、以下のとおりです。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第213回社会保障審議会医療保険部会、2026年8月27日)
具体的には、がんの治療に関連して生じた状態に対し、対象医薬品を使用した場合や、指定難病患者が指定難病及びそれに付随する傷病治療のために対象医薬品を使用した場合には、別途負担を求めない範囲として整理されています。
国の公費負担医療の対象者、入院患者などについても、同様に整理されています。また、こども(18歳に達する日以後最初の3月末まで)や生活保護受給者についても、別途負担の対象外とすることが整理されています。対象となる患者・療養の全体像は、以下のとおりです。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」 (第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1、2026年9月16日)
このほか、対象となる疾病との関連性や、長期使用の必要性なども考慮されます。
なお、9月3日の医療保険部会資料では、対象医薬品が別途負担の対象か否かを判断するのは、処方を行う医療機関・医師であり、保険薬局ではないとされています。実務フローは以下のとおりです。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第213回社会保障審議会医療保険部会、2026年8月27日)
●長期使用の場合
長期使用については、内服薬・外用薬それぞれについて取り扱いが整理されています。
8月27日の医療保険部会資料では、内服薬について、年間処方日数がおおむね50週であることを長期使用の目安とする考え方が示されています。
外用薬については、長期使用にエビデンスがある場合を除き、別途負担の対象として整理されています。また、鎮痛消炎剤や皮膚保湿剤等の一部の外用薬については、一定の要件を満たす場合に限り、令和10年度末(2029年3月末)まで経過措置を設け、その間に診療ガイドライン等のエビデンスを踏まえて必要な見直しを行う方向が示されています。
なお、9月16日の医療保険部会のとりまとめでは、アトピー性皮膚炎に対してプロアクティブ療法として計画的・継続的にステロイド外用薬を使用している場合も、新たに別途負担の対象外とすることが整理されました。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」 (第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1、2026年9月16日)
●参考|パブリックコメント・患者団体等から寄せられた意見
制度の具体化にあたっては、2026年8月6日から20日にかけて中間とりまとめに対する意見募集(パブリックコメント)が実施され、897件の意見が寄せられました。また、患者団体等へのヒアリングも実施され、その結果が社会保障審議会医療保険部会に報告されています。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第214回社会保障審議会医療保険部会 資料2、2026年9月3日)
こうした意見を踏まえ、2026年9月16日の医療保険部会のとりまとめにおいて、長期使用の運用明確化、ステロイド外用薬の取扱い(前述)、指定難病患者の確認方法などが結論として示されました。
保険者が施行に向けて確認しておきたい3つのポイント
1.加入者に制度を正しく伝える
重要なのは、今回の見直しが「OTC類似薬を一律に保険給付の対象外とする制度ではない」ことを正しく伝えることです。
対象となる医薬品が処方された場合には、原則として薬剤費の4分の1を「特別の料金」として患者が負担しますが、患者の属性や治療上の必要性に応じて、別途負担を求めないケースも設けられる方向です。加入者へ案内する際には、「OTC類似薬が保険から外れる」といった単純な説明ではなく、制度の仕組みや配慮措置を含めて正確に情報提供することが大切です。

出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」 (第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1、2026年9月16日)
なお、2026年9月16日の医療保険部会のとりまとめでは、厚生労働省が電子カルテ・レセコン改修に資する情報や、全国共通のQ&A、患者説明資料等を作成・公表する方針が示されています。
2.セルフメディケーションの情報提供を改めて考える
今回の見直しをきっかけに、OTC医薬品やセルフメディケーションへの関心が高まることも考えられます。
OTC医薬品の利用が適さない場合もあるため、単にOTC医薬品への切り替えを促すのではなく、必要に応じて医師や薬剤師などの専門家に相談することも含めた情報提供が重要です。
【関連記事: 保険者向け|スイッチOTC医薬品のメリットと活用促進策】
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3.施行に向けた制度の動向や施行後の検証状況を確認する
制度の具体的な運用については、2026年9月16日の医療保険部会において「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(医療保険部会とりまとめ)」として結論が示されました。
保険者においても、施行前の制度の具体化と、施行後の検証・見直しを含め、国の動向を確認していくことが考えられます。
参考資料)
厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の概要」
厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」(2026年8月6日)
厚生労働省「第214回社会保障審議会医療保険部会」(2026年9月3日)
厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第214回社会保障審議会医療保険部会 資料2、2026年9月3日)
厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しについて(その2)」(中央社会保険医療協議会 総会(第656回)、2026年9月9日)
厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」 (第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1、2026年9月16日)



